◆超《を》級HG漫画缶累々◆ 〈95/2/18〜4/28〉

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(1995.2.18)

 このコラムでは“漫画をかく”を主に “画く”と表記してゆく。英語でいうところのドロゥ、即ちモノクロでかかれたものに対してこの漢字をあてていく。一方、カラーの漫画を“かく”際には、“描く”を遣うことにするが、これは英語のペイントにあたるとゆー訳やね。

 同人誌時代の先輩が提唱した書き分け方なんだけれども、たいそう理にかなっておるのでそれに倣うことにしているの。

 雑誌掲載時にカラーだった漫画もコミックスになるとモノクロ印刷されちゃったりする。中には単行本のアタマから16ページ分だけわざわざ二色刷りにすることもある。なにわ小吉『王様はロバ』1巻のんは雑誌の時から色付きだったみたいだけどね。

 そゆことが気になんないよーな作品なら別にいーけど、大しゅきな漫画だったら元の色が知りたいし、手にも入れときたいっちゅうのが人情。

 だから『かわうそ3きょうだい』森下裕美著が載る時にはまんがくらぶ(竹書房)を買うのでござります。


1995.2.25)

 サイバラの新刊を買ってきて、早速カワをむいた。「新しい本を手に入れたらまずカワをむく」というのは鉄則である。

 本ちゅうもんには、本本体(ほんほんたいつーのもスゴイ字づらだねこりゃ)の外っかわにカバーだの帯だのといったカワがぎょうさんついてござる。これを剥いでみて、いったん本本体の表紙を鑑賞するっ!とゆーのが本本体マニアの正しい道なの。

 双葉社刊『はれた日は学校をやすんで』では、いつもの西原ワールドが展開する。帯には“抒情派”なんてムチュカしー漢字が遣われたりしてるけど大丈夫(笑)。十二分に毒を持っておりまする。そしてカバーを剥ぐっ! ほおら。久々にちょっぴり得をした気分でしょ? 島本和彦著『仮面ボクサー』(徳間書店)以来の満足感とでも言おうか。

 思ってもみなかったところに隠しアイテムを発見する喜びとはまさにこのこと。嗚呼すべての漫画のカバー裏に漫画よあれぞかし!


(1995.3.4)

 三月の声を聞くやいなやで悪いんだけど、今年のベストワン単行本を発表させてもらっちゃう。パンペコペーン。それは榎本俊二著『反逆ののろし』(双葉社)でーす。

 探し方は、まず本屋さんへ行くんだ。そいでもって黄いない表紙だからすぐに見つかるぞっ。背表紙にはタイトルが書いたるしね。なお、本屋さんはいくら売れるからつっても平積みにしちゃあダメよ。

 その秘密は表紙にあるのだ。たとえば吉田戦車の『戦え!軍人くん』(スコラ)なんかでも平積みを避けた方がいー。とゆーのもカバーに打ち出しが使われているからなのね。「平積みの本の重みに耐えかねでわが打ち出しよしばしとどめむ」何を言うとるのじゃ(笑)。

 でも『軍人くん』の方はまだ平らになってもいいのよ。書名が印刷されてるとこが型押しされてるから。『反逆』は、なーんもないとこに絵が打ち出されてるから、平らになっちゃいや。

 表題作のほか、『風前の灯ジョー』もお薦め。


(1995.3.11)

 ポリスターレコード名古屋事務所の諸橋さんがチラシをくれました。

 桃色のチラシに曰く“城之内早苗遂に漫画界に進出!! あのビッグコミック(小学館1月25日号)石ノ森章太郎先生の『HOTEL』8ページに垂れ幕として登場!! 是非御覧下さい!!”なんだなんだそりゃ(笑)。

 漫画の中に“『酔わせてよ今夜だけ』城之内早苗・100万枚記念サイン会開催中”とゆーのが出てたらしい。こーゆーふーに大メジャーな漫画で書かれちゃうってのはやっぱプロモーターの人とかは嬉しいんだろうなあ。

 仕事場にひいてある有線で演歌を流し続けてるちゅーほど小林よしのりは演歌が好きだそーなんだけど、その作品『ゴーマニズム宣言』(扶桑社)の中でも城之内のことがほめてあったよ。などとゆうこともとっくに諸橋さんご存じだったしね。

 「城之内早苗4月25日に新曲出ますし、また名古屋にもキャンペーンで来ますんで」

 うおー! 買うぞアーンド観に行くぞっ!!


(1995.3.18)

 漫画読みにとって趣味は多いほどいいし、造詣は深いほど楽しめる。

 今漫画界で一番熱いのはどこかというと、これはもう間違いなく麻雀漫画界なのである。80年代、片山まさゆきの出現とヤングマガジン誌上での『ぎゅわんぶらあ自己中心派』の連載開始により麻雀漫画の読者層が劇的に広がった。“ごくフツーの人”を対象に画かれるようになった麻雀漫画は、90年代をむかえると西原理恵子を代表とする“ごくフツーの画き手”を生み出し始める。

 たとえ麻雀というジャンルを選ばなかったとしても十分に面白い漫画が画けるであろう“ごくフツー”の漫画家がドカドカドスンドスン輩出してきているのだ。既存の作家もバリバリ流入しており、これはまさに麻雀漫画元禄時代?

 そして近代麻雀オリジナル・坂本タクマ著『ぶんぶんレジデンス』。ただこれを読むためだけにでも麻雀を覚えようという姿勢はとても正しく美しいのでスグサマ実行しなさい。 


(1995.3.25)

 漫画の原稿ってーのは、だいたい大きめに画かれている。雑誌なんかに載るサイズでは、その一・二倍が原寸であるのがフツーだ。印刷したときに縮小かけた方が線がシャープになってええぞつーのが理由であるらしい。

 単行本なんちゅうのんはそっからさらに縮小しとるし、なにをかいわんや文庫本に於いてをや!

 あんまりにも絵がちいちゃくなりすぎて漫画の文庫本って好きじゃないんだけど、会社勤めの人とかには手頃なんだろーね。昔から東海林さだおなんかのサラリーマン向けのギャグ漫画って文庫サイズで出てたもの。おうちでじっくり読む、とゆうのを目的としてない、“持ってあるいて好きなところでパラパラひらく”系のコミックスなのですね。

 最近はいろーんな往年の漫画が文庫で復活もしてるけど、この趣旨にかなってるっていったらやっぱ講談社刊『OL進化論』文庫版でしょ。秋月りすはどれ読んでも面白いからお薦めです。どーでもいいけど。 


(1995.4.1)

 夢について語ろう。

  1. 努力次第でかなうこと
  2. 絶対に実現不可能なこと
  3. 偶然の力を借りれば可能なこと

 「あなたの夢はなんですか」と問われた場合、1はすでに夢ではあるまい。努力すりゃいい。2みたいのを答えちゃうのはお子さまですわな。

 そこで3だ。をかべはこう答えるようにしている。「一億円拾うこと」。ね? これだと誰かが一億落としてくれてるってゆー偶然、それを自分が発見するってゆー偶然とかがうまーく作用すれば可能でしょ(笑)?

 さて。2を疑似体験として楽しむことができゆっつーのも漫画の醍醐味のひとつなのだね。お子さま趣味だろーと荒唐無稽だろーと、荒木飛呂彦著『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド能力や竹本泉著『さよりなパラレル』の異世界へ跳ぶ能力なんか実際にあったらどえらぁええぞ。

 で1にあたる夢に関してだったら今日深夜放送の名古屋テレビ『王者マンへの道』を観るとイーと思ーう。 


(1995.4.8)

疑問精舎の鐘の声! 今週は漫画界における未解決の謎の数々を『超《を》級HG疑問缶』と銘うってご披露致しましょう。

  1. 小池一夫の漫画は、なンでひらがな書きの“ん”がすべてカタカナで表記されてンのか。時として、ルビのちっこい“ん”までもがカタカナになってンのはどゆことなのか。かてて加えてタイトルにまでカタカナの“ン”を遣うその真意やいかばかりもンか。
  2. 週刊少年マガジン!?に掲載!?の『特攻の拓』!?や『魂の剣』!?などでは何故!?フキダシの外!?に“!?”がいっぱい出て!?きているのか!? 『レッツぬぷぬぷっ』!?でギャグ!?にされてもやめない!?つーのは!?いかなるポリシが!?あっての所業か!?
  3. 鳥山明『ドラゴンボール』のコマとコマの間の上下方向のスキ間は広すぎーせんか。“漫画は右から左へ、それから下へ読み進めてく”とゆー原則があるので左右よりも上下のスキ間を大きくするのはリーズナブルだけど、ほどがあるんちゃうか。

(1995.4.15)

 そんなわけで私が四月十七日から大垣女子短期大学で教鞭を(ゲッ)とることになったをかべです(『鴻上夕日堂』のマネ)。短大の話も今後おいおい書いていきますんで。

 シャチョー、一番台の安永航一郎さんたら怖いものしらず(週刊プレイボーイのマネ)。子供さん向けの小学六年生誌上ではアブナ系ギャグも多少は自重してるみたいだけれど、月刊少年キャプテン『頑丈人間スパルタカス』じゃやりたい放題♪なの。まんがの神様から日本の国技に至るまでいかなる権威もお下品にアレンジする才能たるやくわばら。「バチがあたりませんよーにっ」てつぶつぶいちごポッキーでおまじないしとかんとね!

 あとキャプテンつったら伊藤伸平著『楽勝!ハイパー♡ドール』だ・よ・ね。“漫画界のアイドル通”として名を馳せる両雄のうちのひとり(もひとりは『あしたのナオコちゃん』の中西裕でしゅ)だけあって、女の子キャラはmcシスターなどを資料に画かれちゃってて良きかな。


(1995.4.22)

 CBC原元美紀アナウンサー独占インタビュー!

   最近どんなもんスか。

 やっぱり『鉄人ガンマ』かなぁ。小ギャグが効いてて好きなの。あと終わっちゃったのでは『寄生獣』。これ人間だけにとどまらない“生命の輪廻”とか“共生・共存”っていったことがテーマになってて。日本人のもつ仏教観がなきゃ画けない漫画だって思う。

   フンフン?

 小学三年生の時に初めて自分でお金を出して買った漫画ってゆうのが『ガラスの仮面』一巻。今も連載続いてるけど、ヘンに妥協して早く終わったりなんかしないでトコトンまで描ききって欲しいよね。

   さすが國學院大学文学部日本文学専攻卒ですね。

 卒論はね、「マンガ文化論」。文学史と“おたく論”みたいのとからなってて、当時私の周りにいた2次元の世界を現実にまで引きずってくるコたちに対しての警鐘論じたりしたものなの。

   ひースゲー。


(1995.4.28)

 週刊少年サンデー連載中のゆうきまさみ著『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』は、競馬をモチーフにした漫画でございます。

 少しずつ、“お馴染みさん”キャラクターを増やしてゆくストーリーテリングは手馴れたもの。主に競走馬の牧場を舞台に人間関係重視のお話が進んでいきます。

 競馬の漫画といえどもレース以外のシーンで話に厚み持たせるつーのは当然といやー当然で、例えば少年ジャンプ『みどりのマキバオー』の売りは“努力”と“友情”を支えに“勝利”を手にする!ってゆう展開なんだよね。

 でもね、これらはやっぱり「競馬の出てくる漫画」に過ぎない。真の「競馬漫画」つーならばレースだの馬券だので魅せてくんなきゃ。

 競馬の持つギャンブル性を見据えたうえでドラマを構築し、馬券を取り巻く人間模様をこそテーマに選ぶ漫画家。それが堀田清成その人なのです。発売中のみこすり半劇場増刊・春の競馬スペシャルを見て見て。


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