' 純と蛍は五郎に連れられ、麓郷神社へ初詣に出かけた。お参りを終え、中畑家の人たちと新年の挨拶を交わしているとき、蛍が木の陰からこちらを見ている正吉の姿を見つけ、純に知らせた。純は、「正吉!」と叫びながら雪の上を逃げる正吉を追った。正吉は取り押さえられ、ひとまず丸太小屋へ連れて行かれる。純は、正吉と二人で風呂に入った。突然、風呂場の扉が開き、蛍が着替えを持って入ってきたので、正吉は慌てて湯船に飛び込んだ。そのとき、純は正吉の成長の証を何度も見せてもらったのだった。五郎が交番から戻ると、三人ともベットで眠っていた。五郎は、このとき正吉の寝顔に涙の筋があるのを見た。
元旦の朝、純と蛍は自分たちにきた年賀状を見てはしゃいでいた。その中に凉子先生からの年賀状を見つけ、正吉を呼ぶが、正吉は部屋の中にはいなかった。すると屋根の上で物音がしたので外へ出ると、正吉が屋根の上で雪はねをしていた。純はそれを見て、自分がはしゃいでいたことを反省した。そこへ、正吉の母のみどりがやって来た。みどりは、正吉を見るなり殴りかかった。みどりは、迷惑ついでに正吉をしばらく預かってもらいたいと五郎に頼んだ。五郎もみどりに同情し、子供たちも喜ぶからと言って引き受ける。みどりは、自分を訪ねて人が来なかったかと五郎にたずね、来ていないと知ると逃げるように丸太小屋を後にした。
みどりが去って、しばらくして知らない老人がやって来た。その人は、祖父の黒板兵吉のことを知っており、兵吉が死んだことを聞くと、三人にお年玉だと言って袋を差し出した。純は拒んだが、正吉が受け取った。そして、その人は帰っていった。正吉が袋の中を調べると50円玉が一つ入っているだけだった。
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