スカイ・クロラ WORKS
by をかべまさゆき


映画情報紙C2・8月號
『スカイ・クロラ』

[OSHII]

押井守の新作は空中戦で幕を開ける!
戦闘機乗りは大人にならない子供たち

前作『イノセンス』で「肉体が無いのに電脳世界で生き続ける存在」を扱った押井守が今回描くのは、思春期の姿のままで歳を取らず、殺されない限り死なない永遠の子供「キルドレ」たち。戦闘機乗りとして戦争に駆り出される彼らの死生観と愛の形はゴールの決定が自らに委ねられてて、独特に純粋だ。(W)

主人公のカンナミが乗る戦闘機「散香」は機体の後方にプロペラがある、プッシャと呼ばれるタイプ。散香フィギュアが付いた原作本も売ってる、チェキ!

CBCラヂヨ「気分爽快!」サイト内【招福!きねま猫】8月1日

 7月12日の「東京国際ブックフェワ」で原作者の森博嗣さんのトークショウがあった。予期したとおり押井守監督も登場し、お2人から『スカイ・クロラ』の話を聴けたよ!◆当然、集まった観衆は映画を未だ観ておるまい(僕は既に2回観てたけど)。そこで押井監督が言ったことを書きます。何も知らずに観たいと望む人は読まない方がいい。観る前の人々に向けて敢えて監督が明かした裏話だから知ってもいいやとゆう人だけどうぞ(言い回しは変えてあります)◆「キャラクタは単独では描けないので、スイトの分身を探した。結果、フーコをスイトとペアで描いた。“男を共有してる”とゆう共通項があるからだ。だからフーコがサングラスをかけるとスイトがサングラスを取る」◆「足しか出てこないティーチャは、実は他のカットには沢山出てくる。“登場してるんだけど語られないキャラ”だ」「逆に、犬は見えない登場人物を報せる仕掛けで、吠えているのは誰かの魂が帰ってきてる時」◆「氣に入った思いつきがこっそり絵にしてあるが、観客は仕掛けた100があるうち5つか6つしか氣づかない」

中日新聞08年8月8日付夕刊【映画颱風】



 何も考えなきゃこれは「戦闘機乗りの話」だ。押井守だから異質なとこもあるねってくらいで▼普通の創作ってお客に答えをずばりと教える親切設計になってる。しかし本作は、難解なことすら隠されてるぞ▼不親切とは違う。ニーチェの著作を不親切とは言わないでしょ? 観た者が疑問点を発見し考えねばなんないのだ▼例えば。主人公のカンナミが基地に赴任してきた日付は?と留意して観ると、二カ所で違う日付が示される。片方が正しい。ではもう一方の“意味”は?▼普通は着目すらしまい日付に、だが氣づくと謎が残るんだ。そんなのが仰山施されてる!▼ただ娯楽で観る映画ぢゃない。考える氣まんまんで鑑賞するべき。


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