1997年 初夏
根室に仕事があった帰り、正吉は落石に螢を訪ねた。正吉は、五郎が炭焼きを始めたこと、純が仕事を続けていること、シュウともうまくいっていることなどを話した。螢から、結婚のことを聞かれ正吉は相手がいない空き家だと答えた。そして、正吉も螢に富良野へは戻ってこないのかと聞くが、螢は何も答えなかった。
純が、チンタの兄完次の新居に結婚祝いを車で届けると、ベッドにチンタが寝ていた。チンタは、兄に恋人を奪われたことにめいっていた。完次は、五郎の助けで有機農法を始めていた。五郎は、純に人に喜んでもらえることは金では買えないと言った。純もそのことが少しわかるようになってきていた。
純は、正吉に今度の日曜日にシュウの実家の上砂川に挨拶に行くと話した。次の日曜日に、上砂川に車を走らせ、シュウの実家を訪れた純は、緊張して殆ど何を話したのか覚えていなかった。帰るときになってみんなやさしく見送ってくれた。純は、シュウと父を乗せてカラオケへ行ったが、シュウの父だけが歌い続けて、一人で帰っていってしまった。それから二人は、シュウが昔住んでいたという上砂川の炭坑跡へ行き、シュウから父のことを聞かされた。純は、シュウの家族にどう思われたのかが心配だったが、シュウは以外と愛想が良かったと答えが、兄から話があるからすぐには富良野へは帰れないとも言った。純は、アパートへ戻ると正吉に今日のことを報告したが不吉な予感がしたのだった。
シュウからの連絡は、あの後何もなかった。純は、自分の職業のことを気にしていた。
五郎のもとに、突然雪子が一人であらわれた。雪子は、五郎に私も一人になったと話した。五郎が訳を聞くと離婚して息子の大介も父親の方を選んだと答えた。夜、草太がバイクで五郎の所へやってきた。草太が風呂場を覗くと女性の悲鳴が聞こえ、驚いた草太は中畑和夫の家へ報告に行った。中畑と草太の二人が再び五郎の家へ行くとベランダに雪子の姿を見つけ、草太は走り寄った。その夜、純のもとにシュウから明日会いたいと電話が入った。
純はシュウから、上砂川の兄の店で働くことになったから富良野から離れなくてはならなくなったと聞かされた。純は、かつてのれいちゃんのときのように、これから富良野と上砂川に離れてしまうことで互いの気持ちが変わってしまうのではないかと不安になった。ある日、純が仕事をしていると五郎と雪子に声をかけられた。純は、雪子をみてとても懐かしく思った。その夜は、三人で赤ちょうちんへ行った。そこで、五郎から雪子が富良野に住むことを聞いたのだった。純は、次の日曜日雪子の引っ越しの手伝いをした。雪子は、東京の大介のもとへ純に電話してもらうが不在だった。
草太は雪子を連れて自分の農地を全部見せて回った。草太は、借金をしてどんどん近代的で大規模な農業に取り組んでいた。草太は、五郎のやっている有機農法に否定的な考えを持っていた。
仕事を終えてアパートへ戻った純は、ドアにはさけられたメモを見つけた。それは、シュウからのものだった。そこには、「急に帰ることになりました。改めて電話します。シュウ」と書いてあった。
へそ祭りの始まるその日の昼、仕事中に中畑から声をかけられた。中畑は、螢が金を貸してほしいと言ってきたことを純に伝えた。螢が、雪子の働くニングルテラスへ現れた。螢は、自分がここに来たことを五郎や純には黙っていてほしいと頼んだ。純は仕事を終えて事務所に帰ると正吉から電話が入り、喫茶店に呼び出された。店内にはいると、螢と正吉が向かい合って座っていた。純がお金を工面しに店を出ると正吉が追った。その隙に、螢も店を飛びだし、二人は、螢を追ったが見失ってしまった。
草太の牧場では、母牛から子牛を取り出していた。螢は、遠くからそれを見ていた。草太は、螢を見つけ走り寄った。螢は、草太にお金を貸してほしいと頼んだ。草太は、快く貸すと言ってくれた。螢は、自分のお腹の中に子どもがいて一人で産んで育てる決心をしていることを話した。草太は、このことは誰にも話さないと約束し、螢を札幌まで送った。
ここ何年も続いている異常気象の低温多湿で完次のジャガイモ畑にも疫病が発生した。完次と五郎は、それが広がらないよう走り回った。純のもとにシュウから手紙が届いた。そこには、シュウが兄のコンビニの手伝いを始めたこと純が気にかけていた自分の職業についてシュウの家族がどう思っているのかなどが書かれていた。突然正吉は草太から喫茶店に呼び出された。草太は、正吉に螢のことを話し、螢と結婚するように言った。アパートへ戻った正吉は、明日札幌へ行って来ると純に話した。翌日正吉は札幌へ出かけ、螢に結婚を申し込んだ。螢は、気持ちだけ十分もらったからと答えただけだった。正吉は、螢と別れてから、母みどりの店を訪ね身を固めたいと思っていることを話した。店で流れていた「百万本のバラ」という曲の話を聞いた正吉は、そこら中のオオハンゴンソウを刈り始め、それを札幌の螢のもとへ送り続けた。
盆があけたある日、正吉が純に話がある言ってきた。正吉は、螢と結婚したいと話した。純は怒ったが、車で待っていた螢と会って話を聞き、純は螢に圧倒されてしまった。その後、純は二人をホテルに送った。翌日、みどりが札幌から慌ててアパートへとんできた。みどりは、正吉がしたことを純に謝った。純が、正吉と螢を連れて、五郎の家へ現れた。五郎は、三年ぶりに螢を見て大いに喜んだ。正吉は、螢と結婚したいと切り出すと、五郎は涙を流して喜んだ。それからいきなりの酒盛りとなった。8時頃、完次の妻ツヤ子が、完次の畑で出た疫病のことを知った草太が農薬をまいていると言って走ってきた。完次が5年かけて生き返らせた土がまた死んだ土に戻ってしまった。
そうして、いきなり富良野に秋が来た。気温が突然グンと下がった。 |
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