1995年 正月
大晦日と正月の二日間はゴミの仕事も休みになり、純は草太や広介たちとスノーモービルを楽しんだ。螢は、家には帰ってこず、年賀状をよこしただけだった。
純は、草太から「過去は気にするな。早く唾付けろ!」と言われたことが気になっていた。「過去」って誰の?その夜、純は正吉にシュウのことで何か知っているのかとたずねたが、正吉は忘れたと答えただけだった。
純がゴミ収集をしているとパチンコをやりに来た広介に声をかけられた。純は、広介に聞きたいことがあるから今晩行っていいか聞いた。広介は、6時過ぎにはいると言った。
その夜、純は広介の家に行き、シュウのことで何か知っているのではないかと聞いた。広介は、部屋の奥から一冊のAV雑誌を出してきて、純に見せた。そして、シュウが出ているビデオを借りてきて正吉と一緒に見たことも話した。純は、ショックと怒りを感じていた。帰り道、純は町のレンタルビデオ屋に寄って、シュウの出ているビデオを借り、アパートの部屋でそれを見始めたが、正吉がビデオを止めた。純は正吉を殴り、正吉は自分のしたことを純にあやまった。正吉は、アパートを出た。草太の家で広介を外に呼びだし、正吉はいきなり広介を殴り、広介が純にシュウのことを話してしまったことを怒った。
その晩遅く、草太がアパートにやってきた。草太は、シュウの過去のことは、シュウに絶対話すな!と言った。純は、草太の言っていることはわかっていだが、黙っていることに自信がもてなかった。純は、れいに電話した。純は、結婚を決心したことを告げた。 純は、その後もシュウとは何度も会っていた。純は、東京でのシュウのことを知りたがった。
純の乗った清掃車のゴミから出火する事故が起こった。純は、警察署で事情を聴取された。それが終わって外へ出るとシュウが純の上着を持ってしゃがんで待っていた。2人は、ラーメン屋に入った。そこでシュウから昔知っている事務所が火事になってフィルムなんかが爆発するみたいに燃えて大変だったことがあった聞かされた。純は、その中にアダルトビデオもあったのかとたずねたが、シュウは知らないと答えた。その後、純はシュウのアパートへ寄った。いつもと様子の違う純に、シュウは何か隠し事があるのかきくが、逆にシュウの方にあるのではないかと言い返した。純は、いろいろあって疲れているからといってシュウのアパートを後にした。
一人の女性が、五郎を訪ねてきた。その女性は、以前螢が勤めていた病院の黒木婦長だった。五郎は、螢が婦長の夫光彦と駆け落ちしたことを知らされた。五郎は、黒木をバス停まで送るが、螢の駆け落ちの話が信じられなかった。五郎は、家へ戻る途中で雪の吹き溜まりに車を突っ込んだシュウに会った。
五郎は、螢のことをシュウに話し、涙した。シュウも昔のこと消せる消しゴムがあるといいと言った。遠くで凍裂の音がした。五郎は、翌朝早く純を訪ね、落石へ一緒に行ってくれと頼んだ。
アパートから出てきた螢が純を見つけ、2人は、落石のバス停で話した。螢は、五郎が来ているのではないかと純に聞いた。純は、螢を連れて五郎のいる食堂へ行った。五郎は、自分の気持ちを螢に話した。五郎と純は螢をアパートの近くまで送った。別れ際に、五郎は「いつでも富良野に帰ってくんだぞぉ」と叫んだ。螢は、引き返し毎日自分を責めているんだという気持ちを五郎に言った。五郎は、富良野までの8時間の長い道のりを一言もしゃべらずに過ごしたのだった。
翌日から一級の寒波がやってきた。シュウが五郎を訪ねてきた。シュウは五郎を吹上温泉の天然の露天風呂に誘った。シュウは、湯船につかりながらもう五郎に会えなくなると話した。訳を聞くと、自分の過去に純が気付いてしまったらしいと打ち明けた。突然声が聞こえ、中畑和夫と成田新吉が現れ、五郎は狼狽した。麓郷へ戻った五郎は、今日のことは純には黙っていてほしいと中畑と新吉に頼んだ。
朝早く、電話が鳴った。札幌のれいからだった。今日の午後結婚して、東京へ行くと聞かされた。朝出勤しようと車へ行くと、シュウから今夜6時から北時計でずっと待っていると書いたメモがワイパーに挟んであった。純は、仕事を途中で仮病で休んで、れいの結婚式のある札幌へ向かった。純は、教会から出て車に乗り込むれいを遠くから見守った。
純がアパートへ戻ると五郎が待っていた。五郎は、シュウの待つ北時計へ行くように純に言った。純は、もう遅いと言ったが五郎に諭され北時計に向かった。シュウが窓際に一人座って待っていた。純は、車を降り、五郎に一礼して中に入っていた。シュウは純にあてた手紙を書いていた。その手紙をシュウは読み始めた。その手紙には、シュウの過去のことが書かれていた。純は、その手紙を奪い取って破き、そして今度の日曜日に山部山麓デパートへ行かないかとシュウを誘った。
五郎のもとに、落石の螢から手紙が届いた。 |
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