1994年秋
五郎は、石の家で一人暮らしていた。中畑和夫と成田新吉が石臼をもって五郎を訪ねてきた。和夫は、町に下りてはどうだと言うが、はぐらかしているばかりで一考に聞く耳をもたなかった。純は、一年前から市役所の臨時職員として環境管理課で働いてていた。また、正吉も去年自衛隊を退官して純と一緒にアパートで暮らしていた。ある日、山部のリサイクルKKに修理したアンプを持って現れると、以前に純がもらった柱時計を探しに一人の少女が少女が焼却炉の前にたたずんでいた。
純は、富良野に帰ってから札幌のれいちゃんとときどき会っていた。純と正吉は、アパートの部屋を使うとき、入り口に黄色いハンカチを表札に縛っておく約束にしており、純は黄色いハンカチを自分の表札に縛り、階段を下りていった。れいちゃんは、会うたびに洗練された女性になっていた。純は、れいちゃんから別の男性にプロポーズされたことを知らされ、当惑する。二人は、喫茶店を出て、昔通った八幡丘の道を歩いた。歩きながら、中学生の頃の昔を思い出していた。純は、れいちゃんに迫るが、れいちゃんに拒まれ、「もう結婚すれば・・・、その大人と」と言ってしまう。歩いている二人のもとにチンタがパトカーで現れる。チンタとれいちゃんは楽しそうに会話をしていた。その後、純はほとんど何も言わないれいちゃんをバス停まで送った。別れ際に、れいちゃんは純にコロンをつけるのを止めるように忠告する。純は、言葉にグサッと来た。それは、ゴミ収集の仕事についてから、自分の匂いを気にするようになっていたからだった。
一般ゴミの収集日、純は偶然金物屋の前であの娘を見た。純は、久しぶりに五郎の石の家に顔を出し、五郎にもってきた柱時計の持ち主が現れたので返してほしいと言う。五郎はすぐに返すように言い、純に生ゴミの収集日を聞いた。
純は、柱時計を持ち主の娘に返しに、金物屋でその娘を待ち、柱時計をもってアパートまで送った。純は、その娘の名前が「小沼シュウ」と知る。アパートに戻ると黄色いハンカチがかかっていた。純は、シュウを喫茶店に誘った。そこで、シュウが東京に住んだことがあることを知った。シュウから東京は愉しかったか聞かれるが、「卒業したんだ・・・・東京は、もう」と答えた。「I Love You」が店内に流れ始めた。
シュウを送ってアパートへ戻るともう正吉たちはいなかった。部屋で寝転がっていると、電話が鳴った。出ると男が妹の螢はいないかと聞いてきた。純が札幌にいると答えると電話は切れた。
純が、事務所にいると、最近生ゴミ泥棒がいるという話を聞き、シュウを連れて五郎を訪ねた。五郎は、シュウを気に入り三人で盛り上がっていた。純は、シュウをアパートまで送った。シュウは純を部屋へ上げ、これからいろいろな物を買って部屋に置きたいことを話す。純は、山部山麓デパートのことを話した。
アパートへ戻るとテーブルの上に正吉からのメモが置いてあった。螢のことで勇次から電話があり、至急連絡が欲しいとのことだった。あの電話は、勇次だったことを知る。翌朝、勇次と連絡をとると螢が行方不明だと知り驚く。純は、正吉と一緒に札幌の勇次に会いに車で出かけた。勇次は、螢が大学病院の医者と不倫をしていて、それが発覚して病院を辞め、アパートも引き払って、行方知れずになっていると聞かされ、ショックを受ける。草太やチンタに相談しようかとも考えたが、結局螢からの連絡を待つことにした。
シュウから留守電が入っていた。純は、シュウを連れて山部山麓デパートへ行き、いくつかの品物をシューの部屋へ持ってきた。二人で夕食の買い物に出かけ、店から出たところで広介に出くわし、紹介するように頼まれるが断った。食事の時、シュウは柱時計を五郎へ返したこと、ニンジン拾いを一緒にしたこと、純や螢の話を聞いたことをなど愉しそうに話した。純は、螢のことを五郎が知ったら・・・・・・と思った。アパートへ帰ると、車から二人の男が降りてきて、螢がいないか聞いてきた。その男は札幌の医者の息子の黒木と言った。連れの男から部屋を見せてくれるように言われ、部屋に入れると正吉がテレビを見ていた。連れの男と正吉が言い合いになったが、男は正吉に取り押さえられ、外に連れ出される。黒木の息子は、螢から連絡が入ったら知らせて欲しいと言って名刺を置いて帰っていった。
トラクターに乗った広介が、ユンボの正吉にシュウのことで面白い物を見せると言ってきた。正吉は、広介の家でエロ本の中に森田あかねというAV女優のヌード写真を見せられ、驚く。
純は、シュウと毎日のように会っていた。何日か経った日の夕方、清掃車に乗っていた純は広介に呼び止められ、正吉が何か言っていたかと聞かれた。広介は、その後話を濁した。アパートに帰った純は、正吉に広介のことを聞くが、正吉はなんでもないと答えた。そのとき、ドアをノックする音がし、正吉が外へ出ると螢が立っていた。螢は、部屋にはいると純にお金を貸して欲しいと頼み、今から新得から汽車で根室の落石へ行くと言った。純は、落石の住所をメモし黒木に連絡しようとするが、螢は泣きながら止めるように頼んだ。純は、正吉に持っているお金と車を借り、螢を新得駅まで送った。純は、車から螢の後ろ姿を見送った。狩勝峠を越え、富良野にはいると向こうの空がようやく白んできていた。 |
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