![]() ![]() 1992年5月23日(土)放送 |
出演 田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・緒方直人・横山めぐみ・裕木奈江・児島美ゆき・清水まゆみ・神保共子・今野照子・渡部篤郎・渡辺航・小林昭二・石丸謙二郎・大地康雄・菅原文太・三野輪有紀・寺田英孝・山田幸正・長山フミオ・嶋崎伸夫・桑田智子・内山森彦・沼崎悠・吉田晃太郎・畑山東一郎・柴山智加・西島秀俊・平井太佳子・マンデイ・由起艶子・伊原秀和・富良野塾・富良野市のみなさん・地井武男・いしだあゆみ |
純はビザハウスの店先でタマコが出てくるのを待っていた。タマコは、純を見つけるが、そのまま配達用のバイクに走った。純は、近づいて、タマコにちゃんと診てもらった方がいいんじゃないかと言うと、タマコは一緒に産婦人科に行ってくれるかと聞いてきた。純は、返事できなかった。 純は、相談する人もおらず、どうしていいのかわからなかった。どうしても気になって、タマコに電話をした。純は、何か面白いビデオがないかたずねると、「陽のあたる場所」という映画を勧めてくれた。純がそのビデオを借りようとすると、店の主人がニヤニヤしながら応対した。純は、ここ2・3日食欲もなくビールしか口に入っていかなかった。ところが、その映画は美しい婚約者ができた青年が、妊娠させてしまった昔のガールフレンドに結婚を迫られ、処置に困ってそのガールフレンドを殺してしまうという筋書きで、青年はその後死刑になってしまうというものだった。その晩、いやな夢を見た。それは、さっき見た映画とそっくりで、自分が誤ってタマコを殺してしまう夢だった。 翌日、ガソリンスタンドに、小学校の同級生の中井が偶然給油に現れた。中井に話かけられているとき、純はタマコを見つけ、まだこないのかとたずねてみるが、心配しないでと応えただけだった。夜、小学校時代の同級生たちと集まって話をしているとき、妊娠検査薬の話を耳にした。翌日、薬局でそれを買って、例のラブホテルでタマコとおち合った。検査薬は残念な色になった。アパートに帰ると、札幌のれいちゃんから手紙が届いていた。その手紙を読み終え、純は頭を抱えた。 純が、車のフロントガラスを拭いていると、突然電話だと言って呼ばれた。それは、タマコの叔父からのものだった。純は、すぐにメモした病院へ急いだ。病室の戸を開けるとタマコの叔父と叔母が立っていた。純は、自分の名前を言うと、叔父が近づいてきて病室の外へ出るように顔で促した。廊下へ出るといきなりその男は純を殴りつけた。 純は、タマコの叔父に父親の住所や電話番号を教えるように言われるが、父親には連絡しないように頼んだ。だが、人様の娘に手をつけて子どもを降ろさせて、それでただで済むと思っているのかと怒鳴られてしまう。父親の名前と北海道の住所を書いて、病院を後にした。それからは、益々食欲が減退していった。タマコと連絡がとりたかったが、病院には二度と顔を出すなと言われていたし、ピザハウスにも時々覗いてみたがタマコの姿はなかった。 突然、五郎が現れた。五郎はラーメン屋で食事をしながら純にその娘と結婚する気があるかとたずねた。純は何も応えず黙っていた。五郎は、とにかく謝ろうと言い、純にも自分と同じようにやれと言った。二人は、住所をたよりにタマコの叔父の豆腐屋をたずねた。五郎は、店にはいると挨拶代わりにとカボチャを6個鞄から取りだして台に置いた。二人は、部屋へあがり頭をずっと下げ続けていた。タマコの叔父は五郎に、娘の蛍がタマコト同じ状況になったときのことを本気で想像するように言った。そして、「誠意とはいったい何かね。」とたずねてきた。最後に、持ってきたカボチャは持って帰るように言いつけた。 五郎は、歩きながら純に一杯飲むかと言った。五郎は、酒を飲みながら、「さすがに疲れた。」と口にした。純は、「すみませんでした。」と謝った。五郎は、草太の結婚式の話や蛍が春には富良野へ帰ってくること、正吉が来たことを話してきた。純は、五郎が自分を叱らず、話をそらしていることに傷ついていた。五郎が、今店でかかっている曲をたずねてきた。純は長渕剛の西新宿のおやじのうたとこたえた。そして、純は大晦日に富良野に帰ることを五郎に約束した。 麓郷へ帰った五郎は、タマコの叔父の言った「誠意とはいったい何だね。」と言ったことを考えていた。五郎は、家を建てるために買った丸太を300万円で売りたいと棟梁の金次に話した。金次は、そんな大金を何に使うのかとたずねた。五郎は、誠意だとこたえた。丸太を売ったことを知った中畑が、五郎を訪ねてきた。五郎は中畑に石で家を建てることにしたと話した。そして、井戸も自分で掘るのだと言いだし、準備を始めだした。富良野は、もう雪がちらつきだしていた。 東京は、そろそろ12月が近づき、気の早い年末のムード造りが街のあちこちに見られ始めていた。11月末のそんなある日、突然タマコが姿を見せた。タマコは、純に封筒を差し出した。それは、五郎が送った100万円だった。純は、返そうとするがタマコは受け取れないから五郎に返してくれるようにと言った。そして、タマコはブランコに腰掛け、「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」と言って、ブランコを揺すった。それから、二人で少し歩いてショーウインドウの前で立ち止まった。タマコは、ガラスに向かって「さ・・よ・・う・・な・・ら」と口を動かして、走り去った。さっき、タマコの言った「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」の言葉が純の頭に焼き付いていた。アパートへ帰り、タマコから受け取ったお金を畳の上に一枚ずつ並べ始めた。 こごみが井戸を掘っている五郎のところに現れた。こごみは、今度クリスマスに店を始めるから来てほしいと言いに来た。五郎は、子どもたちが帰ってくる大晦日までに間に合わせたいと話した。 クリスマスの日、中畑と金次はこごみの店で、酒を飲みながら五郎を待っていた。その頃五郎は、まだ穴の中で、掘っていた。すると、土から水がしみ出し、五郎は手から軍手を外し、それを指につけなめた。中畑たちが歌っているところへ五郎が水が出たことを告げにきた。 五郎は、純や蛍のために風呂を沸かし、車で旭川の空港へ純を迎えに走った。五郎は、手を振って出迎え、純は頭を下げた。五郎は、蛍の就職先の財津医院へ挨拶にいこうとするが、後で蛍に持っていかせようと考え直し、純と二人で喫茶店に入った。純は、タマコから返された封筒を五郎に差し出した。だが、五郎は純にやったものだから、やった以上見栄というものがあるから受け取れないと言ってきかなかった。そして、「金をなくしたことが大きかったんだ。金をなくしたおいら、でっかいものを見つけた。すっかり忘れていた大きなものを・・・思い出した・。金があったらそうはいかなかった。」と五郎は言った。純は、「どういう意味ですか。」とたずねた。五郎は、「金があったら金で解決する。金がなかったら知恵だけが頼りだ。知恵とてめえの出せるパワーと・・・・・」とこたえると蛍の電車の時間が迫ってきていることに慌て始めた。 五郎と純は改札口で、蛍を出迎えた。五郎は、蛍の荷物を抱えると走って車の方へ走り出した。五郎は、車からお歳暮を取りだし、蛍に渡そうとすると、蛍の後ろに和久井勇次が立っていた。蛍が、大事な話があるからと言いだし、4人で喫茶店に入った。蛍は、春から札幌の病院へ出るから富良野には帰れないと話した。五郎と純は、蛍の帰るのを待った。純は、五郎に車を借り蛍を迎えに出た。五郎は、一人さっきの蛍の言葉を思い出していた。そして、風呂を沸かしに出かけていった。風呂の屋根に積もった雪を降ろしているとき、足を滑らせて落ち、丸太に足を挟まれ動けなくなってしまった。 純は蛍を連れて家に帰ってきたが、五郎はいなかった。純は、五郎が帰ってきたら謝るように蛍に言った。9時になっても五郎は帰ってこなかった。 五郎は、風と雪から身体を守るためのシートを針金で引き寄せようと必死になっていた。そして、引き寄せたシートをかぶり、その中でスコップの上に木の皮を削り、たばこのケースに火をつけて暖をとろうとしていた。午前2になっても帰らない五郎を心配した純は、車で中畑や金次のところへ聞きに回るが行方がわからず、家に戻った。五郎は、意識が遠のく中で、雪の中に立つ死んだ令子と話していた。五郎は、子どもたちはまだ巣立ったばかりだから、巣をしっかり守って言われた。そのとき、かすかにアキナの鳴き声を耳にした。 五郎の帰りを待っている純と蛍のもとへ金次が車で駆けつけて来た。金次は、二人に山を探したかと聞いてきた。山へ行ってみると、シートの中に灯りが見え、アキナが走ってきた。金次が、シートをめくるとそこに五郎の姿があった。蛍は、大声を上げ、立ちすくんだ。純は、死なないでくれと祈りながら雪道を街へ走った。 翌日、純と蛍は中畑の家へ挨拶に行った。中畑は、すぐに金次の所へ行くように言った。金次は、昨日の事故現場に来ていた。五郎が死ななかったのは、誰のせいでもなく、自分で生きたのだと言って、スコップの上の燃えかすや削った後を見せた。蛍は、札幌への就職を止めると言い出すが、そんなことをしても五郎は喜ばないと言って反対した。そして、東京は卒業したから五郎のことは自分に任せろと蛍に言った。純は、蛍を富良野駅で見送ると、五郎の入院している病院に寄った。純が、ベットの横に座ると五郎が「どうしてここにいる、いるはずのないやつが次から次に来やがって、夢の中まで人をおちょくるな。」とうわごとのようにつぶやいた。純は、それを聞いて、床にひざまづき泣いた。 |