東京は、そろそろ12月が近づき、気の早い年末のムード造りが街のあちこちに見られ始めていた。11月末のそんなある日、突然タマコが姿を見せた。タマコは、純に封筒を差し出した。それは、五郎が送った100万円だった。純は、返そうとするがタマコは受け取れないから五郎に返してくれるようにと言った。そして、タマコはブランコに腰掛け、「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」と言って、ブランコを揺すった。それから、二人で少し歩いてショーウインドウの前で立ち止まった。タマコは、ガラスに向かって「さ・・よ・・う・・な・・ら」と口を動かして、走り去った。さっき、タマコの言った「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」の言葉が純の頭に焼き付いていた。アパートへ帰り、タマコから受け取ったお金を畳の上に一枚ずつ並べ始めた。
こごみが井戸を掘っている五郎のところに現れた。こごみは、今度クリスマスに店を始めるから来てほしいと言いに来た。五郎は、子どもたちが帰ってくる大晦日までに間に合わせたいと話した。
クリスマスの日、中畑と金次はこごみの店で、酒を飲みながら五郎を待っていた。その頃五郎は、まだ穴の中で、掘っていた。すると、土から水がしみ出し、五郎は手から軍手を外し、それを指につけなめた。中畑たちが歌っているところへ五郎が水が出たことを告げにきた。
五郎は、純や蛍のために風呂を沸かし、車で旭川の空港へ純を迎えに走った。五郎は、手を振って出迎え、純は頭を下げた。五郎は、蛍の就職先の財津医院へ挨拶にいこうとするが、後で蛍に持っていかせようと考え直し、純と二人で喫茶店に入った。純は、タマコから返された封筒を五郎に差し出した。だが、五郎は純にやったものだから、やった以上見栄というものがあるから受け取れないと言ってきかなかった。そして、「金をなくしたことが大きかったんだ。金をなくしたおいら、でっかいものを見つけた。すっかり忘れていた大きなものを・・・思い出した・。金があったらそうはいかなかった。」と五郎は言った。純は、「どういう意味ですか。」とたずねた。五郎は、「金があったら金で解決する。金がなかったら知恵だけが頼りだ。知恵とてめえの出せるパワーと・・・・・」とこたえると蛍の電車の時間が迫ってきていることに慌て始めた。
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