五郎と純は改札口で、蛍を出迎えた。五郎は、蛍の荷物を抱えると走って車の方へ走り出した。五郎は、車からお歳暮を取りだし、蛍に渡そうとすると、蛍の後ろに和久井勇次が立っていた。蛍が、大事な話があるからと言いだし、4人で喫茶店に入った。蛍は、春から札幌の病院へ出るから富良野には帰れないと話した。五郎と純は、蛍の帰るのを待った。純は、五郎に車を借り蛍を迎えに出た。五郎は、一人さっきの蛍の言葉を思い出していた。そして、風呂を沸かしに出かけていった。風呂の屋根に積もった雪を降ろしているとき、足を滑らせて落ち、丸太に足を挟まれ動けなくなってしまった。

 純は蛍を連れて家に帰ってきたが、五郎はいなかった。純は、五郎が帰ってきたら謝るように蛍に言った。9時になっても五郎は帰ってこなかった。

 五郎は、風と雪から身体を守るためのシートを針金で引き寄せようと必死になっていた。そして、引き寄せたシートをかぶり、その中でスコップの上に木の皮を削り、たばこのケースに火をつけて暖をとろうとしていた。午前2になっても帰らない五郎を心配した純は、車で中畑や金次のところへ聞きに回るが行方がわからず、家に戻った。五郎は、意識が遠のく中で、雪の中に立つ死んだ令子と話していた。五郎は、子どもたちはまだ巣立ったばかりだから、巣をしっかり守って言われた。そのとき、かすかにアキナの鳴き声を耳にした。

 五郎の帰りを待っている純と蛍のもとへ金次が車で駆けつけて来た。金次は、二人に山を探したかと聞いてきた。山へ行ってみると、シートの中に灯りが見え、アキナが走ってきた。金次が、シートをめくるとそこに五郎の姿があった。蛍は、大声を上げ、立ちすくんだ。純は、死なないでくれと祈りながら雪道を街へ走った。

 翌日、純と蛍は中畑の家へ挨拶に行った。中畑は、すぐに金次の所へ行くように言った。金次は、昨日の事故現場に来ていた。五郎が死ななかったのは、誰のせいでもなく、自分で生きたのだと言って、スコップの上の燃えかすや削った後を見せた。蛍は、札幌への就職を止めると言い出すが、そんなことをしても五郎は喜ばないと言って反対した。そして、東京は卒業したから五郎のことは自分に任せろと蛍に言った。純は、蛍を富良野駅で見送ると、五郎の入院している病院に寄った。純が、ベットの横に座ると五郎が「どうしてここにいる、いるはずのないやつが次から次に来やがって、夢の中まで人をおちょくるな。」とうわごとのようにつぶやいた。純は、それを聞いて、床にひざまづき泣いた。

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