富良野で旭川行きの列車を待っていると、お祭りのお囃子の音が聞こえてきた。蛍は、自分たちが小さい頃五郎に連れて行ってもらったへそ祭りのこと思い出していた。あの頃の自分は父親の愛情が家族以外の人に注がれることに神経を尖らせていたのに今は平気で余所に愛を向けている自分のことを・・・・・・。
列車が、上富良野に停車した。4人の自衛隊員が乗り込んできた。最後に乗ってきた男が、蛍に声をかけてきた。それは、以前一緒に暮らしていた正吉だった。正吉は、今年の春に入隊したのだった。正吉は、純や五郎の近況を尋ねた。蛍は、正吉に今日ここで会ったことは五郎に言わないでほしいと頼んだ。正吉は、純も蛍も全然富良野に帰っていないことを知らされ、嘆く。そして、今日ここで会ったことは絶対に言わないと声を震わせた。
へそ祭りの日、五郎と雪子と大介の3人が蛍を駅で出迎えた。祭りには、草太の姿があった。蛍は、見物客の中に勇次を見つけた。勇次は、9時に会おうと手で合図した。突然、蛍は肩をたたかれた。正吉だった。五郎と雪子は、正吉の姿に驚いた。
五郎たちは、駅で雪子と大介を見送った。駅を出ると、蛍は今夜は泊まらずに旭川に帰ると言った。五郎は、明日朝早くではだめかと聞くが、蛍はだめだと断った。蛍は、正吉にこないだのことをしゃべらないように念を押した。正吉は、わかったとこたえ、五郎の車に乗り込んだ。蛍は、五郎の車が走り去ると、急いでタクシーに乗り込み、勇次の待つプリンスホテルに向かった。蛍は、たった今の五郎に対する自分の言動に涙した。ホテルに着くと、出迎えた勇次の胸に泣き崩れた。
五郎は正吉と家に戻った。正吉は部屋の隅に純や蛍の子どもの頃の写真を見つける。五郎は、正吉が持ってきたウイスキーで酔っぱらって歌を歌った。正吉は、五郎に封筒を差し出した。中身は、お金だった。そのお金は、昔正吉の母が借りた、お金の一部だと言った。五郎が、封筒を開けると中に2万円が入っていた。そして、五郎は自分は五郎の息子だと思っていると言ってくれた正吉をうれしく思い喜んだ。五郎は、もう一人の息子はどうしてるかなあとつぶやいた。
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