納屋の外へ出ると、雪の上にれいちゃんの足跡があった。足跡は、まっすぐ納屋の中に入り、表へ出たところでもう一度立ち止まり振り返ったらしかった。そこへ蛍が現れ、卒業式が終わったら東京へ発つようになっている伝えに来た。純はそんな蛍にもう遅いと言ってしまう。蛍は、今更そんなことを言わないでほしいと純をたしなめた。五郎は、純に「」辛くなったらいつでも戻ってこい。故郷へ戻ることは恥ずかしいことではない。」と話した。

 卒業式が終わると、純は五郎と蛍に見送られ、定期便のトラックに乗った。走り出すトラックと一緒に蛍は走った。そして、れいちゃんの居場所がわかったら連絡すると純に言った。純は、運転手に「よろしくお願いします」と言って、カセットのボタンを押してれいちゃんを思い出していた。突然、運転手にイヤホンを外され、封筒を受け取るように言った。それは、五郎が運転手に置いていったお金だった。純は断るが、泥の付いたピン札は受け取れないから記念にとっておいて自分の宝にするようにと運転手が言った。純は、その袋から泥の付いた二枚の壱万円札を取り出し、東京から北海道へ来てから今日までの五郎と蛍と過ごしてきた生活を思い起こし、涙した。

定期便のトラックは、空知川に掛かる橋を渡っていた。

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