第22話

 札幌で草太の試合が終わってからひと月が過ぎていた。あの日から、雪子の様子が何となく変わり、草太も家に寄りつかなくなった。

 10月に入って、待ちに待った日が来た。それは、今日が丸太小屋の組み立て工事の始まる日だったからだ。その日は土曜日で純も蛍も学校が終わると、急いで現場に走った。五郎たちは既に、何段かの丸太を組み終えていた。純や蛍も手伝った。昼食の休憩時間に入り、五郎たちには内緒で純と蛍の二人は森へ山ブドウを採りに行った。それは、明後日の五郎の誕生日のプレゼントのためだった。純と蛍はその誕生日にこごみを呼ぼうかどうか迷っていた。

 現場では、トイレに行っていた松下がクマの足跡を発見したと言って戻ってきた。どうも、親子のクマだと言うことだった。中川らは、家へ鉄砲を取りに戻っていった。そんなことが起こっているとは知らず、純と蛍は山の深くまで山ブドウを採りに入り込んでいた。近くで物音がするが、蛍はキツネだと言ってブドウを採り続けた。ところが、二度目に大きな音がしたので、二人は大声で歌を歌いながら森から無事に戻ってきた。夕食の時、本当にクマが出たことを知った二人は、ブドウ採りに山に入っていたことも言えず、箸を持つても震えていた。その夜、二人は神様にお祈りをした。

 次の日は、日曜日で中も現場で作業を手伝った。蛍は、昼食の材料を持って家を出たところでこごみと出くわす。現場へ行く途中、蛍はこごみに五郎の誕生日のパーティーに招待した。二人が現場に着くと、五郎や中畑たちの様子が変わり、途端に暗い雰囲気になってしまった。そこへ、みずえとすみえが現れ、中畑は慌てる。中畑は、すみえと純をつれて、落葉キノコを採りに森へは行っていった。純は、中畑からこごみが飲み屋に勤めていることを知ってしまう。現場では、こごみが中川から何事か耳打ちされ、そのまま帰ってしまう。蛍が中川に訳を聞くが、何も教えてくれなかった。

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