純は、各地を転々として今は知床半島の付け根の町、羅臼で廃棄物処理の仕事をしていた。今年30歳になった純は、暖かい家庭を持ちたいと痛切に感じていた。
 ある日、港で魚を積んだリフトと軽トラックがぶつかりそうになって、箱がくずれて魚がこぼれた。純は、落ちた魚を拾って持っていると若に女性が近づいてきてその魚を海に捨てて行ってしまった。その日、純は中標津から生徒をつれて羅臼へ来ていた凉子先生と20年ぶりに出会い、次の日曜日に中標津の凉子先生の家を訪ねた。そこには、港で出会った女性が居た。その女性は、凉子先生が昔教えた子で、高村結という名だった。凉子先生の家では、昔の話で盛り上がった。純は、結を羅臼まで送った。番屋へ帰ると五郎から手紙が届いていた。開くとシュウからの手紙が中に入っていた。純は、それを読み終えるとストーブの火の中へ入れた。

 純は仲間とカラオケバーにいたが、明日が早いからといって店を出た。ふと橋の向こうにコンビニの明かりがあり、レジの前には結が座っていた。純が店に入って弁当を手にとってレジに行くと結はその弁当を賞味期限切れのものと取り替えて戻ってきて純に渡した。純は、事情が分からず返そうとしていると、店長が声をかけてきた。結は、仕方なく代金を純から受け取り、レシートとお釣りを渡した。レシートには「ごめん、また来て」と書いてあった。純はやっと事情が飲み込めたのだった。純の心の中でしだいに結の存在が大きくなってきていた。ある夜、純は仕事を終えて出てくる結を待ち、結の家まで話しながら歩いた。純は、次の日曜日に結をドライブに誘った。その後、結と会う日が少しずつ増えていった。ある日、拓と寅が番屋に現れ、結が人妻であること、結の義父がとても荒い性格であることを純に話した。純は動揺していた。富良野の螢から手紙が届いた。そこには五郎の体の調子が余り良くないらしいと書いたあった。

 中畑木材の土場で定期検診を受けるように螢から進められていたが、成田新吉に言われ梅干しを種ごと飲んでいるから大丈夫だと言って五郎は拒んでいた。螢は、五郎に検査を受けなければ快には今後会わせないと言って帰っていった。五郎は、中畑から今造っている家をすみえたちの新居にしてもらえないかと頼む。螢の快に会わせないという言葉でついに五郎は、定期検診を受ける決心をした。しかし、検査期間が長引くにつれ、心配になってきた。そこで、清水正彦に知り合いのことでと言って相談した。正彦は、ガンでなければいいがと言い、医者もはっきりしたことは言わないと聞かされた。検査終了後、診察室で大したことはないと言われた。五郎は、螢から許されたので久しぶりに快を保育園に迎えに行きかくれんぼをして遊んだ。

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