次の日、黒板家の墓へ令子たちと行くことになっていたが、蛍は仮病を使って、一緒に行こうとはしなかった。五郎は、令子にいつでも子供らには会わせると約束して、富良野の駅へ令子を送った。純は、電車のドアが閉まるまで手を握っていた。最後に令子は蛍のことを頼むとだけ純に言った。令子は、座席に戻ると外の景色をぼんやり見ていた。令子は、川岸を一死に走る蛍を見つけ、大声で「蛍」と叫び手を振った。蛍の目は涙で一杯になっていた。蛍は、草太に頼んで一人令子を川岸から送ったのだった。
五郎と純が丸太小屋の作業をしているところへ蛍が帰ってきた。家で寝ていなかったことを五郎は叱った。蛍は、二階に駆け上がり、ひとり泣いた。その夜、草太が蛍を元気づけようと「いかだ下り大会」のことを伝えに来た。突然雪子に声をかけられ草太は驚く。慌てて家を飛び出したところで五郎に出くわす。五郎は、草太から昼間蛍が家に来て頼まれ、坂の下の電車の見える場所へ連れていったことを聞かされる。それは、蛍が草太に内緒にしておいてほしいと頼んだことだった。そして、帰るときに「父さんが世界中で一番かわいそうなんだ」と言っていたことも伝えた。
五郎は、風呂を沸かしている純の横に座り、「蛍はお前や父さんよりももっと辛くて、送りに行かなかったかもしれない」と話した。純は、二階に上がって寝ている蛍の顔に残った涙の筋を見て、さっき五郎の言った言葉が本当だったことを知る。次の日曜日、廃校式が五郎や中畑や辰巳らの分校の卒業生を招き行われた。
富良野では、7月26日のいかだ下り大会に向け、二三日前からそれぞれいかだをつくりはじめていた。純と蛍は、中畑木材の大きないかだに乗せてもらうことになっていた。
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