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デザイン美術科マンガコースで、「マンガ論」という必修講義の非常勤講師を、平成7年度から平成10年度まで勤めていた。毎年度初頭に学生に配られる「授業計画」にて『講義内容』を書いていたのぢゃが、学生は読みませんね(大笑)。ので、いっつも好き勝手書いているのであったよ。それにしても立派なことを(我ながら)書いているので、ここに明かしましょう。ほっほっほ。
日本に於いて漫画は、世界に類を見ない進化を遂げてきている。その多様性もさることながら、創作を志す者が表現手段のひとつとして漫画を選択しうるほどに社会的に認められ、普遍化している。本講義では、日本の、主に商業漫画について発達過程を追いながら広く深く考察してゆきたい。前期では表現者としての側から、後期では享受者としての視点で漫画を論じていく。特に後期には、試験に代わり特定の漫画作品若しくは作家に関する論文の提出を課す予定であり、そのつもりで受講されたい。また、折にふれて商業漫画界を取り巻く現状にも言及し、プロの漫画家を目指す指針になりうる講義をも行う。「漫画」は現在も発展を続けるメディアであり、評価の未だ定めえぬ生きたテクストであるが故に、常に最新の状況を見据えた上での読解が重要となる。「今」の社会情勢に錨をおろし、過去の作品に遊び、未来の漫画に対する洞察力を培ってほしい。
相撲の歴史に精通することが力士として大成する条件にはならないのと同様に、本講義を履修したからといって漫画家たりえる訳ではないことを予め断わっておく。漫画が上手くなるには、漫画を画く稽古を積まねばならない。さて、本講義では前期に於いて「表現するものの視点に立った漫画論」を、後期では「享受する側より視た漫画論」を展開していくのだが、ともに実技を伴うことのない『座学』という形をとっている。「聴いて面白いかもしれないが、漫画のテクニックの上達を目的とする講義ではない」ことを念頭に置いて受講されたい。それ故に、前期は完全なる“暗記科目”となっており、試験に際しては膨大な量の丸暗記が必要である。後期には、試験の代わりに特定の漫画作品若しくは作家に関する論文の提出を課す。必須科目に定められている学生は真剣に取り組んでもらいたい。「ただ漫画が好きで、単位は要らない」学生には、興味深い話も折々混ぜてゆくので、気軽な気持ちで講義を参観しに来てもらってもよろしいかと思う。
教育の主体は、「教え育む」と書くことから判るように“教える側”にある。大学は、故に教育の場ではない。大学で行なわれるべきは学問、即ち「学び問う」ことである。学生も、そして先生側も、学んで問い続ける場が大学である。構成員の総てが主体となるべきなのである。このような観点から、講義には主体性を持って臨まれたい。講義を受けるのは学生の権利であるから、出席しようがサボろうが、自由である。権利には「出席しない権利」も当然ある。ただし、単位を必要とする、大卒の資格を得たいというのであるなら義務を果たさねばならないのも、また当然である。当講義では、規定の出席日数と規定のテストに於ける得点にて単位の認定を行う。さて、講義内容についてであるが、「マンガ論」を標榜してはいるがこの講義を聴いたからと云って漫画家になれるというモノではない。相撲の理論を聴いても稽古をしなければ関取になれぬのと同じ理屈だ。ただ、漫画家になった曉に、プラスに働くかもしれない知識の提示は予定している。
ちなみに、年間の授業計画は以下の通りでした。…年度ごとに週の数が違ったりしていて、水増ししている回もあったりするのです(笑)。まぁ、講義時間が余って困ったことはありませんでしたから、つまり語り始めると幾らでも話すことはあるってゆー講義だったのぢゃ。
〔前期〕
〔後期〕