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2012年3月号*

『SHAME -シェイム-』/【ADDICTION】/スティーヴ・マックイーンが監督した セックス依存症の男を描くR18+作品

スティーヴ・マックイーンの監督作品。もちろん、往年の名優と同姓同名の69年生まれの監督ですが! 主人公はセックス依存症の男。あらゆる病気や依存症が多くそうであるように、おそらく「本人しか判らない苦しみ」があるんだ。日本に於ける少子化問題とは対照的な、肉食系男子の悩みをご覧じろ!
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主役のブランドン役は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』にてマグニートーを演じたマイケル・ファスベンダー。さすが、いいボディをしてる♪

2012年2月号*

『ハンター』/【TASMANIAN TIGER】/凄腕ハンターの狙いは絶滅したはずの タスマニアタイガーを捕獲すること!

70年以上も前に絶滅したと考えられているタスマニアタイガー。もしいたら凄い価値を生む。ってんで目撃情報に基づき、捕獲のために送り込まれた凄腕ハンターの傭兵の前に立ち塞がるはタスマニア島の大自然と人間の利権争いだ。友情出演しているタスマニアデビルが愛らしいルックスに恐い声、必見!!
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本作の影の主役はオールロケが敢行されたタスマニア島の原生地域。ユネスコの世界遺産に登録されているのも納得の豊かな自然は恐くなるほど広大だよ!!

2012年1月号*

『琉神マブヤー THE MOVIE 七つのマブイ』/【OKINAWA】/沖縄ローカルの番組で大人気を博した 地域密着型ヒーローが全国区に登場!

沖縄の子供はみぃんなマブヤーの歌が歌えるという。沖縄の心「マブイ」を護る変身ヒーロー「琉神マブヤー」がついに映画になった! 龍神ガナシーとタッグを組み、悪の組織マジムン軍団と戦う! 映画では秋田県のご当地ヒーロー超神ネイガーも参戦するぞ、我らが愛知県にもこんなヒーローほしい!!
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★台詞にもネーミングにも沖縄方言が満載! 「たっぴらかす」は「叩き潰す」。ゴリが扮する悪役ハブデービルの「デービル」は「〜でございます」だぞ!

2011年12月号*

『カリーナの林檎〜チェルノブイリの森〜』/【CHERNOBYL】/ベラルーシに住む幼い少女カリーナが 家族を崩壊させた悪魔に立ち向かう!

カリーナはお婆ちゃんちに行くのが大好き。でもお婆ちゃんが持たせてくれるお土産のリンゴもキノコも、叔母さんは棄ててしまう。チェルノブイリにほど近い土地に住む大人たちの言い分とスタンスは、各自筋が通っているけれども、小さい女の子にとっては「理不尽」だ。カリーナの採る行動が哀しい。
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ドキュメンタリィではなく劇映画、物語です。2003年に制作され、冒頭の長崎とラストのチェルノブイリのシーンは公開が決まり昨年つけ加えられたもの。

2011年11月号*

『新少林寺/SHAOLIN』/【KUNG-FU】/困っている民衆には食べ物を分け与え 理不尽な軍隊とは戦う、それが少林寺

少林寺って拳法のイメージだけど、本来はお寺さんなんだから貧苦にあえぐ近隣住民を救うのが「お務め」だ。困った人々を護るために戦ってくれるのが少林寺流。1912年が舞台なので、少林寺の敵となるのは悪い将軍だったりロシア製の大砲、マシンガンだったり。護って、できるだけ殺生せずに、戦え!
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本家少林寺の協力を得て作られた初の「少林寺」映画。アンディ・ラウは将軍の座を追われ少林寺に身を寄せる。ジャッキー・チェンは給仕係なのに強い♪

2011年10月号*

『とある飛空士への追憶』/【PILOT】/マッドハウスの新作は飛行機乗りの話 皇子の許嫁を乗せて敵陣を突破する!

『時をかける少女』『サマーウォーズ』を制作したマッドハウスの新作の舞台は大空! 敵機が襲い来る空域を飛んで、皇子の許嫁を護送する。主人公の飛空士は平民の身分だから、つまり『ローマの休日』風、または『ラピュタ』風だ。男女どっちに感情移入しても燃えに萌えるシチュエイションでしょ!?
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主人公の飛空士シャルルの声は俳優の神木隆之介、ヒロインのファナ役は愛知県出身のモデル、竹富聖花。原作は口コミで拡がり話題となった長編小説だ。

2011年9月号*

『プリースト』/【VAMPIRE】/駆逐したはずのヴァンパイアの襲来に 戦う聖職者プリーストが立ち上がる!

RPGなんかでお馴染みの方もおられよう、プリーストっていうのは聖職者、神父のこと。おでこに十字架のタトゥを入れてかっこいいバイクを駆って、裸ん坊のヴァンパイアと戦うぞ! 荒野に立つ城壁未来都市の修道会はもうヴァンパイアなんて襲ってこないとか言う恩知らずだけどそれでも戦わねば!
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『プリースト』の原作は韓国人アニメーターが発表した漫画。既存のヴァンパイアのイメージに囚われず西部劇やメカやアクションが導入され融合してる。

2011年8月号*

『ちいさな哲学者たち』/【CHILDREN】/4歳児が哲学を学ぶドキュメンタリー 哲学って考えを言葉にするシステムだ

1990年のフランス映画『春のソナタ』は、「フランス語では日常会話に遣われる言葉がそのまま哲学用語になっている」と教えてくれた。だから4歳児でも哲学の議論が可能だ。幼稚園で2年間に亘って実際に行われた哲学の授業風景をご覧あれ!! “考え”を言葉にできる喜びを教えられるよ。
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見どころは「先生の指導」、そして齢4、5歳で既に個性や「習得度の差」が表れるシーン。あの男の子は15年後もああだろうな、と予想したくなる。

2011年7月号*

『ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ』/【NANNY】/横着い子供たちをしつけ、導くために あのナニー・マクフィーが帰ってきた

ナニーってのは乳母のこと。5年前にも杖をどーん!ってやる魔法で子供たちをしつけたナニー・マクフィーが戻ってきたよ♪ 今回は父親が戦争に行ってる農家の子供と疎開してきたいとこを教育しちゃう。子供たちがひとつ良い子になるごとにナニーが美人になってゆく、良い子バロメーターも健在だ!
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原作『マチルダばあや』のエピソードは前作で使い尽くしちゃったけど大丈夫。主演のエマ・トンプソンがナニーの“精神”を継承して著した脚本は見事!

2011年6月号*

『奇跡』/【KIDS】/九州新幹線の上りと下りがすれ違う時 起こる奇跡を目指し子供たちが旅立つ

是枝監督の子供の描き方はさすがに見事だ。周囲の大人は自分らの生活を生きている。子供に合わせたりしない。そんなフツーの日常の中で、子供には“奇跡”で叶えてもらいたい夢がある。九州新幹線がすれ違う時に奇跡が起こると聞き、鹿児島と福岡からやってきた7人の子供たちが遭遇した体験とは!?
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両親の離婚で鹿児島と福岡に離れて暮らす兄弟はまえだまえだ。弟まえだのクラスメートには樹木希林の孫の内田伽羅が、祖母との共演を果たしているよ!

2011年5月号*

『戦火のナージャ』/【WAR】/第二次大戦中のソ連を舞台に描かれる 生き別れた父娘のそれぞれの戦争体験

舞台は第二次大戦中のソ連。生き別れた父と娘が、戦争と向かい合う様子が交互に描かれる。父は軍人だから、当然戦場のただ中にいる。でも、娘のナージャも巻き込まれているよ。赤十字の船の上で。身を隠す村で。戦闘後の瓦礫の街で。2人の視点を通すことで戦争のいろんな面が浮き彫りに綴られる。
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94年にカンヌの審査員グランプリとアカデミー外国語映画賞を受賞した『太陽に灼かれて』の続編。ナージャ役は引き続きミハルコフ監督の娘が演じてる。

2011年4月号*

『さくら、さくら』/【CHEMIST】/明治時代の化学の天才はパワフルだ! 研究の原型はここにある、学者必見!!

明治時代の化学者、高峰譲吉の研究対象は多岐に亘ってる。アドレナリンを抽出し、消化酵素タカヂアスターゼを発明し、新しい酒の醸造法を研究し、人造肥料を合成する。これ全部商売に直結する研究だ、その結果我々の生活も豊かになってる訳で、黎明期の化学の潔くて正しい発展を観ることができる。
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タイトルの“さくら”はワシントンとNYに桜を贈る橋渡しをしたのが高峰譲吉だから。「新三共胃腸薬」でお馴染みの三共株式会社の初代社長もしてた!

2011年3月号*

『アレクサンドリア』/【CHRISTIANITY】/4世紀のエジプトでユダヤ教を駆逐し 勢力を拡げる新興宗教はキリスト教!

今でこそ信者を沢山擁し安定多数を誇るキリスト教にも新興宗教だった時代があった。ローマ帝国末期のエジプト・アレクサンドリアで、ユダヤ教も、それまでに研究され培われた学問も否定して、暴力に頼ってがんがん排斥するぞ。地動説を唱える美人科学者なんかもってのほか。パワフルだけど野蛮だ!
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実在の天文学者ヒュパティアを演じるはレイチェル・ワイズ。『ハムナプトラ』のヒロイン役といい「古代」+「研究者」の時の鬼に金棒な配役じゃない?

2011年2月号*

『サラエボ,希望の街角』/【Bosnia and Hercegovina】/ボスニア紛争後15年が経過してるから ヒロインの悩みは既に世界標準レベル

ボスニア紛争も95年に終息して現代のサラエボは我々の環境とそんな大差ない。ヒロインが直面する問題もカレシのアルコール依存症、不妊、旧態依然に男尊女卑を説く宗教っていう共感できるラインナップだ。タイトルが謳う「希望」は、ヒロインが若く美しく、なにより聡明であることを言っているよ。
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『サラエボの花』に続くヤスミラ・ジュバニッチ監督の長編第2作。原題を直訳した英題は“ON THE PATH”で「道の途上」「出産間近」くらいの意味。

2011年1月号*

『白いリボン』/【MYSTERY】/医者落馬事件に端を発する不穏な一年 村に潜む事件の真相を君は解けるか?

白いリボンとは「躾」の名目で子供の腕に結ばれるアイテム。強権的な君臨の象徴で、舞台はそんな支配関係が活きている、第一次世界大戦前夜のドイツの村です。村人が怪我をする事件が幾つか発生する、だけど犯人が暴かれることもなく、日々は陰々滅々と進んでいく。事件が解明される日はくるのか!?
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2009年カンヌでパルムドールを受賞した、ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア合作映画。カラーで撮影されたフィルムがモノクロに変換されてる。

2010年12月号*

『GAMER』/【SIMULATION】/生きた人間を動かすオンラインゲーム 操作したい?それとも操作されたい?

“生身の人間を操作するオンラインシミュレイションゲーム”って魅力的過ぎ! 動かす側のプレイヤーは当然楽しい、動かされる“キャスト”だって仕事としてお金が支払われる上に「自分では選ばない服や行動」を「人任せにできる」んだ、楽ちんで面白そう! 陰謀さえ無きゃ薔薇色の近未来なのに〜。
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バトルゲームでの最強の戦士を演じるのはジェラルド・バトラー。操るプレイヤーはローガン・ラーマン、『パーシー・ジャクソン』役を演じてた18歳だ!

2010年11月号*

『リミット』/【UNDERGROUND】/生き埋めになった男はどう脱出する? 窮極のワンシチュエイションスリラー

目覚めたら土中に埋められた棺の中。だから映画の冒頭から真っ暗な画面が延々続く。映画館で不安に駆られてざわついてほしい。ユマ・サーマン@『キル・ビル Vol.2』なら力任せにぶち破って脱出するとこだけど、主人公は棺にあるアイテムを活用してどうにかするしかない。息苦しいけど祈ってあげて!
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『パラノーマル・アクティビティ』より登場人物が少ない本作で主役を演じているのはライアン・レイノルズ。スカーレット・ヨハンソンの旦那さんだよ。

2010年10月号*

『マザーウォーター』/【LIFE】/澄んだ水のように余分を省いた暮らし 自分らしく穏やかに送る人生の愉悦♪

もたいまさこに最も顕著だけど、メインキャストが誰も走らない。すべての生活を歩く速さで慌てず急がずゆったり営む。水のようにシンプルに、不要なものを削いで生きてるんだ。だからといってつまんない人生じゃないよ。買ったお豆腐を店先で食べちゃう(!)とかね♪ 世界は楽しみで充ちている。
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与論島を舞台にした『めがね』と、チェンマイでの生活が描かれた『プール』のメイキング映像を担当した松本佳奈の初監督作品。今回の舞台は京都です♪

2010年9月号*

『恋するナポリタン〜世界で一番おいしい愛され方〜』/【FRIEND】/幼馴染みの瑠璃がプロポーズされた! シェフである友達男子の武はどーする

写真の(c)で知れよう、企画段階でのタイトルは『恋も仕事も腹八分目』でした。「友達男子」との恋心が描かれてるから、カレシじゃない分2割減なのね。瑠璃が求婚された夜、イタリアンのシェフである友達男子、武の身にすごい事件が起こる。友達カンケーの男女の理想的に美しい間柄が提案されるよ。
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シェフの武役は塚本高史。武の運命を左右するピアニスト、佑樹役は眞木大輔。この2人、年は違うが誕生日が10月27日で一緒。これってナイス配役じゃ?

2010年8月号*

『華麗なるアリバイ』/【CHRISTIE】/原作はクリスティ『ホロー荘の殺人』 舞台を現代フランスに移し愛憎渦巻く

1946年出版のアガサ・クリスティの小説を映画化するに当たって、舞台を現代のフランスに移し、原作には登場してた探偵役のポワロを省いた。館に集う全キャラクタが容疑者だ、原作ファンにも新鮮! 未読の人も取っつき易く観られる。プールサイドで男を殺した犯人は誰!? そして真相を暴くのは!?
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大邸宅のパーティに集まった被害者・容疑者らは皆その中の誰かと愛または性的に繋がってる関係。その状況ってフランス映画のお家芸、得意分野じゃん!

『セラフィーヌの庭』/【PAINT】/人に見せるでもなく、独自の絵の具で 絵を描く異才のおばちゃん画家の実話

家政婦のおばちゃんの描き貯めた絵が、世話する家に越してきた画商に認められる物語です。この絵が凄い! キャンバスを四角く使う独特な構図は必見! そして、才能を見出されるまでは広く発表する気はなかった様子だ。つまり『非現実の王国で』のヘンリー・ダーガーの、生前に発見された版じゃ?
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セラフィーヌ役は『アメリ』で「マドレーヌのように泣く」1階の住人を演じたヨランド・モロー。今秋公開の『ミックマック』にも出演してる、チェキ!

2010年7月号*

『私の優しくない先輩』/【HANNYA】/はんにゃ金田が川島海荷のウザイ先輩 CMの15秒が102分間に亘り味わえる

カルピスウォーターのCMに「共同企画」って書いてあった映画がこれ!! はんにゃ金田演じるクサイ!ウザイ!キモイ!先輩が川島海荷の片想いの恋をバックアップする。なんてお節介、且つ鬱陶しい&暑苦しい! でも芯は通ってる、だけに厄介だ(笑)。そんな金田と堂々と渡り合う川島海荷も見事♪
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エンドテーマは主人公の西表耶麻子がアーティスト名“Umika as Yamako”で歌う『MajiでKoiする5秒前』! 広末涼子のデビュー曲のカバーだ、必聴!!

2010年6月号*

『リアル鬼ごっこ2』/【SATOH】/今度の鬼は現実世界まで追ってくるぞ 佐藤さんたちの受難はまだまだ続く!

佐藤姓を追いかけて殺す“鬼”が3体、パラレルワールドからこっちの世界にやってきちゃった! パラレルワールドでは銃撃戦が、こっちの世界では鬼と戦う武器はそんなにはないから「鬼ごっこ」が、それぞれ展開して2つの味が楽しめスリリングフルだ!! 驚愕のラストもパワーアップしてて衝撃的♪
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主人公の妹にしてヒロイン役を前作の谷村美月から引き継いだのは吉永淳。C.C.LemonのCMでも弾けてる、今年最大注目株の17歳だ♪ 是非先物買おう!

2010年5月号*

『春との旅』/【RELATIVE】/きょうだいと疎遠になっていた老人が 身を寄せる先を求めて親戚巡りを敢行

親戚と隔絶して暮らしてきた老人が、急遽自分を世話してくれるよう求めきょうだいの元を回り始める。でも親戚側にしてみたらそんな薮から棒は受け容れられまい、それぞれ「納得のいく理由」を提示して拒まれます。理由の向こうに各家庭の人生が見えるよ。そして老人の落ち着く先は果たしていずこ!?
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北の海辺のあばら屋に住む老人を演じるのは仲代達矢。その孫娘が「春」、演じる徳永えりは徹底的に色気も華やかさも封印したもっさい服装を晒してる。

2010年4月号*

『アンダンテ〜稲の旋律〜』/【ANDANTE】/対人恐怖の女性が農業で癒されてゆく 全編に流れるはアンダンテのメロディ

引き篭もりの30歳の女性が農業の男性と知り合い、農作業を通して徐々に癒されていく。そのスピードがアンダンテ=歩く速さで、なんだ。『牛の鈴音』を観た人なら解ろう、農業って非効率的ながら一歩一歩堅実に進めるべき作業が主体だからね。主役の千華を演じる新妻聖子は地元、祖父江町出身だよ!
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製作に(株)ブルボンが名を連ねてる。だから要チェックなのは奈緒に請われ千華がピアノで『エリーゼのために』を弾くシーン。晋平の科白を聴き逃すな!!

『海の沈黙』/【MELVILLE】/ジャン・ピエール=メルヴィル監督の 1947年の伝説的処女作が日本初公開

ベースとなる舞台は一室。メインの登場人物は3人。1人はぺらぺら問わず語りに喋り続けあと2人は沈黙し続ける! こんな映画観たことある? 制作後63年を経てなお斬新でしょ? フィルム・ノワールで知られるメルヴィル監督の、これが日本初公開となる処女作だ、双葉より芳しってこのことだ。
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ナチ占領下のフランスにて地下出版で刊行された抵抗文学が原作。フランスの老人の家に好仏家のドイツ軍将校が滞在する話だと背景を知って観るといい。

2010年3月号*

『アイガー北壁』/【CLIMBER】/★スイスを代表する山アイガーを登った
ナチス政権下の実話を大迫力で映画化

北壁はアイガー登攀で最後まで残った難ルート。そこに1936年に2パーティの4人が挑んだ実話だ。昨年映画賞で話題になった「劔岳」は2999m、一方アイガーは3975m。即ちアイガーの方が感動も3割増しだぜ? wikipediaの{アイガー}の項にも書かれている、歴史に刻まれた登攀をご覧あれ!
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晴れていれば新聞記者や見物客が宿泊するホテルからアイガー北壁登攀の様子は見物できる! 皆から見える環境下でのアタックは、誇らしいか、孤独か!?

2010年2月号*

『新しい人生のはじめかた』/【RESTART】/仕事も家庭もどん底状態の初老の男に リスタートの最後のチャンスが訪れる

ダスティン・ホフマンと並ぶとエマ・トンプソンは図体がでかい! あんなに美人な女優さんだけど、ダスティンが人生をリスタートするパートナーに選んでホント大丈夫?と観客に思わせるに十分な対比が表現されてる。というか逆にダスティンが「小さい」と捉えられるのを受け容れてるのは見どころ!
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舞台はロンドン。ロンドン生まれの監督、ジョエル・ホプキンスはデビュー作『Jump Tomorrow』で英国アカデミー賞などの賞を受賞し、本作が2作目。

2010年1月号*

『誰がため』/【RESISTANCE】/ナチス占領下のデンマークに実在した 2人のリアルな“バスターズ”の物語

原題の直訳は『フラメンとシトロン』。ナチスドイツ占領下のデンマークでレジスタンスとして売国奴の暗殺を実行していた2人のコードネームです。2人とも実在の人物で、つまりこれはデンマークが舞台のリアル版『イングロリアス・バスターズ』の物語。リアルに展開するとこんなにシビアだなんて!
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フラメンとシトロンはデンマークの英雄だから、2008年度のデンマーク・アカデミー賞を5部門受賞し、国民の8人に1人が観た大ヒットとなったそう。

2009年12月号*

『戦場でワルツを』/【ISRAEL】/萌え絵ではないアニメで描かれるのは 監督が体験した戦争ドキュメンタリィ

ビデオで取材された実写映像を元に描かれたドキュメンタリィアニメです。日本のアニメのお家芸である萌え絵は出てこないけど、この絵で映画が作られるって、文化的な意識と成熟度が高い!と思います。イスラエル軍によるレバノン侵攻を表現するのにこのタッチの異質さと重厚さは効果的に働いてる。
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数多くの受賞歴のある中で、2009年アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされつつ受賞を逃したのは惜しかった。即ち『おくりびと』と争った映画!

『ヴィクトリア女王 世紀の愛』/【QUEEN】/プリンセスはこうしてクイーンになる 実話はお伽噺よりも堅実でスリリング

女王職って強くなければやってけない。けど、ヴィクトリアは強くならざるを得ない少女時代を過ごしてきた、まさに女王になるべく育ってた。あと要るのはブレーンと理解者。リアル女王のできるまでが解るこの映画を観ておけば統治法の基礎が身につくぞ、貴女も明日から女王に即位しても大丈夫かも♪
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原題を直訳すると「若きヴィクトリア」。演じるはエミリー・ブラント。製作は『シャッター アイランド』の公開も待ち遠しいマーティン・スコセッシだ。

2009年11月号*

『evidence』/【NUAS】/名古屋学芸大の映画製作プロジェクト 第二弾の作品は上質なハードボイルド

前売りは500円、当日券で1000円。伏見ミリオン座で一週間限定のレイトショウ。名古屋学芸大学が製作した79分の尺の映画。と聞いて予想していたより、遙かにこの映画、イーネッ! 甘くみたら足を掬われるぞ。「死に至る不治の病の妻を抱えた男」が採った選択の深遠さと説得力と展開に驚嘆せよ!
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俳優陣は舞台を中心に活躍する役者さんがキャスティングされている。中でも一推しはプロジェクトナビのベテラン、小林正和さん! かっちょイーネッ!!

『パンドラの匣』/【DAZAI】/川上未映子と仲里依紗がナース姿て! キュン死しても自殺はありえない環境

知的で物静かなクールビューティ・川上未映子か、可愛くて明るい元気印・仲里依紗か。この二択は悩むよ!? 同じ太宰原作でも『ヴィヨンの妻』では松たか子vs広末涼子だからそこまで差異はないけど、『パンドラ』のツートップはジャンルが違うもの。この2人から選べるんだったら自殺なんてしない!
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今年はご存じ太宰生誕100年。原作の『パンドラの匣』は1946年に書かれた小説。観るときっと「やっとるか!」「やっとるぞ!」の挨拶がしたくなる。

『ジェイン・オースティン 秘められた恋』/【AUSTIN】/英語圏ではあまりにも有名すぎる作家 ジェイン・オースティンの素顔に迫る

ジェイン・オースティンって洋画を観てるとやたら出てくる。『プライドと偏見』の原作者だし昨年は『ジェイン・オースティンの読書会』って映画もあったし。英語圏ではかくも基礎にして常識たる作家なんだ。日本で言う漱石や太宰の位置? その伝記がベースの映画とあっては、知っとくべきでしょ!
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ジェイン・オースティン役のアン・ハサウェイはオースティン文学のファン。1790年代当時のイギリスには珍しい恋愛にポリシーを持った女性を演じる。

『副王家の一族』/【POWER】/王制の末期になお貴族が力を保つため 封建的な当主は絶大な権力で支配する

『ファッションが教えてくれること』と同じだ。ファッション誌も名家も、揺るぎないトップに盲信的に従った方がまとまるし成功もする。但し名家の場合は構成員の人権が蔑ろにされるとゆう弊害を伴う。結婚に於いても打算以外の感情は切り捨てられるし。それでも副王家の当主は信じる道を突き進む!
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副王とは海外の植民地や領土において国王の代理を務める行政官のこと。本作で描かれてるウゼダ家はシチリアを統治していたブルボン家の末裔って設定。

2009年10月号*

『パリ・オペラ座のすべて』/【BALLET】/パリのオペラ座の主役は怪人ではない バレエ団のダンサーたちを密着撮影!

オペラ座に世界最古のバレエ団がある。その稽古の風景からゲネプロまでがたっぷり描かれます。クラシックなバレエばかりじゃない、『ベルナルダの家』の振付は必見! 合間にはパリの風景やオペラ座の内部も挿入され、そして皆が期待しよう、地下に溜まる水とそこに棲むお魚の実物も見られちゃう!
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監督は67年のデビュー作以来“巨大組織を対象としたドキュメンタリー映画”を年に1本のペースで撮影、製作し続けているフレデリック・ワイズマンだ。

『さまよう刃』/【REVENGE】/考えさせられるのは罪と罰のバランス 娘を殺された寺尾聰が犯人を追い迫る

法で定められた罰が犯した罪より遙かに軽い!と思う被害者側がアクションを起こす物語って創作の永遠のテーマだ。『96時間』とか『グラン・トリノ』とか『セブンデイズ』とかね。日本でも「必殺シリーズ」はそれ系だ。では兇悪事件の加害者が未成年だった時は? 寺尾聰の選択をあなたは支持する?
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原作は東野圭吾が2004年に著した、100万部を超えるベストセラー小説。国民の誰もが裁判員になる可能性のある現代にこのテーマはまさにマッチしてる。

『エスター』/【THRILLER】/孤児院から来たエスターが災厄を呼ぶ 理由のすべてが判明した後もなお怖い

途中までは甘くみてた。脅かすようなSEやカメラワークで怖そうに味つけしてるだけでは?と油断してた。しかし安心してられたのも今は昔。やがてどんどん怖さが深まり、からくりが明らかになってなお怖いぞ、それってスリラーの醍醐味だ。なんでもないことにおどおどしていたあの頃に戻りたいよ!
***
ディカプリオもプロデューサーの一人として名を連ねている本作で、9歳の孤児エスターを演じたイザベル・ファーマンは1997年生まれ、現在12歳だ。

2009年9月号*

『ドゥームズデイ』/【BATTLE】/27年間、隔絶されたスコットランドは 無法と中世風コスの巣窟になっていた

R15+指定なのは想像があまりに自由だったから! 極限状況下での争いを衝撃的に描けば、そりゃ子供に観せられないこともあるわさ(笑)。しかし、だから大人には楽しめる訳。考えられるあらゆる面白い戦闘が、雑多に、これでもかとふんだんに詰め込まれている、これはまさにバトルの宝石箱や〜♪
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伝染病が蔓延したイギリスが世界から隔離される話で、俳優陣もイギリス人がメーン。当然、イギリス映画?と思ったら、なんとアメリカ映画ですよこれ!

『のんちゃんのり弁』/【DELICIOUS】/アラサー主婦が亭主を棄てて家を出た 娘のために作ったお弁当が活路を拓く

旨そうな料理が出てくる映画ってそれだけでポイント高い。タイトルに謳ってるバラエティに富んだのり弁も美味しそうだが、成人男性にお薦めなのは小料理屋“ととや”の小料理。いっぺん食べてみたい! 観終わって出てきた時に名演小劇場の前で鯖の味噌煮弁当を売ってたら、買っちゃう喰っちゃう!
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モーニングに連載されてた漫画が原作。フードスタイリストの飯島奈美は『かもめ食堂』『めがね』、今年公開の『南極料理人』『プール』も手掛けてる!

2009年8月号*

『96時間』/【SERCH】/パリへ旅行に行った娘が誘拐された! 特殊任務に就いていた父が本氣で捜す

人身売買組織に告ぐ、この親父の娘だけは攫ってはいけない! 007ばりの行動力と情報収集力、そして躊躇しない攻撃力でぐいぐいと娘の監禁場所に近づいてくるぞ。たとえ旧知の間柄の刑事でも諦めろなんてアドバイスしようもんなら容赦しない! 捜索不能のタイムリミットは96時間だ、行け!親父!!
***
製作・脚本はリュック・ベッソン。なにが痛快かをよく解ってる。パワフルな親父役は『シンドラーのリスト』でシンドラーを演じたニーアム・ニーソン。

『ぼくとママの黄色い自転車』/【bicycle】/母を訪ねて横浜から小豆島まで500km 愛犬と一緒に自転車で向かう小3少年

『幼獣マメシバ』は35歳のニート男性が豆柴を連れて母親を捜す旅に出る映画だったが、こっちは子供が主人公だ。大人ほど勝手気ままが効かない代わりに純真且つストレートな心だから、行く先々で出逢った人々がサポートしてくれる! ママを信じる想いは、触れ合う者の悩みも疑心も浄化してゆくぞ♪
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新堂冬樹のベストセラー『僕の行く道』の映画化。実は原作では連れて行くのはケージに入った猫だった! さらに大阪まで新幹線を使う設定だったとは!

『エル・カンタンテ』/【SALSA】/夏だ!サルサだ!!エクトル・ラボーだ エクトルが築いた黄金時代に浸ろう♪

サルサはニューヨークに暮らすプエルトリカンの間で生まれた音楽で、主人公のエクトル・ラボーはその第一人者! エクトルのニックネームでもあった「エル・カンタンテ」とは「歌手の中の歌手」って意味。このタイトルの歌も歌うよ。天才ミュージシャンの人生はいつも波乱に満ちている。ご覧あれ!
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エクトルの妻を演じるジェニファー・ロペスはプロデューサーでもある。ジェニロペが03年に設立した制作会社ニューヨリカンの第一回作品が本作だよ。

『クララ・シューマン 愛の協奏曲』/【SCHUMANN】/シューマンの奥さんも音楽家だった! そしてブラームスにも好かれていた!

クララさんってのはみんなも知ってる作曲家、シューマンの奥さん。やはり作曲もするしプロのピアニストでもあった。そこに若き天才作曲家のブラームスが現れ、クララに魅入られて想いを寄せてくる! 互いに音楽的素養を認め合った者同士3人の間で愛のバランスが、名曲の調べに乗って紡がれるよ♪
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監督・脚本は1940年生まれの女性監督、ヘルマ・サンダース=ブラームス。苗字でお気づきのことだろう、ブラームスの血縁者でブラームス家の末裔だ。

2009年7月号*

『パッテンライ!!』/【TAIWAN】/台湾にダムを建設した日本人の実話を 虫プロダクションがアニメで描く物語

サブタイトルは「南の島の水ものがたり」。南の島って台湾のことだ、水不足だった台湾の広大な農地に水を供給するためにダムを建設した日本人・八田與一の話だよ。覚え方は簡単、タイトルの「パッ」が「八」、「テン」が「田」です。今でも5月8日の命日には台湾の人はお墓参りをしてくれてるそう!
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主題歌を歌うのはお父さんが台湾人、お母さんが石川県出身とゆう歌手・一青窈、その姉の女優・一青妙が八田の妻の声を当ててる。この姉妹共演も必見!

『真夏の夜の夢』/【OKINAWA】/シェイクスピアが沖縄に生まれてたら 『真夏の夜の夢』はこうなってたはず

沖縄映画では他の追随を許さない中江裕司監督が、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を映画化した! もちろん舞台は沖縄の離島に移し、時代も現代です。妖精パックはお馴染み、沖縄の精霊キジムンに置き換えてる。『真夏の夜の夢』のこのアレンジには、カルチャーショック受けちゃうこと請け合い♪
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かの名作『ホテル・ハイビスカス』の主演女優、蔵下穂波が中江作品に帰ってきた♪ 精霊マジルー役を演じつつテイストは子役時代のそのまんまのノリ♪

『ウィッチマウンテン/地図から消された山』/【SF】/タクシードライバーと宇宙の研究家が 謎多きの兄妹の逃走に巻き込まれる!

アメリカ政府の特殊機関に追われる兄妹を助け、サポートするのはザ・ロックことドウェイン・ジョンソン演じる凄腕タクシードライバーと、SFイベントの参加者たち。だからカーアクションあり、SFあり。はらはらの潜入シーンもある。期待を裏切らない楽しいわくわくがノンストップで展開するぞ!
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謎多き兄妹の妹役はブロンド美人。見覚えがあると思ったら『チャーリーとチョコレート工場』で生意気娘バイオレットを演じてたアナソフィア・ロブだ!

2009年6月号*

『The Harimaya Bridge はりまや橋』/【DISCRIMINATION】/ご当地映画っぽい題名に惑わされるな 頑固親父が心を開く感動は世界標準!

舞台が高知で『よさこい節』も出てくるから『はりまや橋』ってタイトルだけど、「異文化に接したアメリカの黒人の親父が頑なな心を解かしていく」展開。つまりこれって和製の『グラン・トリノ』じゃん! アメリカの黒人が抱く日本人差別と日本側にも根付く差別を超えた交流は、観てて気分がいい♪
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ヒロインは高岡早紀。共演の清水美沙や白石美帆やmisonoと比較して顔立ちが一番オリエンタルで、いかにもアメリカ人に好かれそう! 説得力あり!

『サガン―悲しみよ こんにちは―』/【SAGAN】/貴女がサガンに抱くイメージって何? それが覆っちゃうかも!の伝記的映画

フランソワーズ・サガンがこんなに自堕落だったなんて! てゆーか破天荒とゆーか快楽主義とゆーか刹那的とゆーか。このアウトローな奔放さって、カート・コバーンをオマージュした映画『ラストデイズ』を彷彿させた。サガンとカートが同一フォルダに入るとは! 今後サガンを読む貴女に影響必至。
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瀬戸内寂聴はサガンを演じてる女優シルヴィ・テステューをそっくりと評してる。僕の個人的感想ではたま?にいしだ壱成似に見えた時もあった。チェキ!

2009年5月号*

『シリアの花嫁』/【BRIDE】/一度嫁ぐともう二度と家族に会えない お祝いなのに悲しい嫁入りの日を描く

イデオロギィ対立の末に土地が分断され、一旦国境を越えてお嫁に行くと二度と帰ってこれないなんて国がある。そんな異常を揶揄した映画だから「しょーがねーな」と笑い飛ばしていい。ここまで異文化だと当人には悲劇でも端から見ている我々には喜劇にすら映るもの。楽しんで観てそして心に刻もう。
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物語の舞台のゴラン高原とは、第三次中東戦争でイスラエルに占領されたシリア領。イスラエルの統治下にありながら住民はシリア人、とゆう複雑な地域。

2009年4月号*

『レイン・フォール/雨の牙』/【JAPANESQUE】/キャストも舞台も日本!のサスペンス でもメインの制作スタッフは皆外国人

主役のジョン・レイン役は椎名桔平。ヒロインは長谷川京子。舞台はもちろん日本!とゆー日本映画だけど、実は原作も脚本も監督も撮影も外国人によるハードボイルドなサスペンス。だからテイストが凄く外国映画風。我々がよく見知った東京の風景が、あたかも“アジアのある国”っぽく画面に映える!
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監督・脚本のマックス・マニックスは黒沢清監督の『トウキョウソナタ』の脚本家だ。オーストラリア出身ながら11年を日本で過ごし、日本が解っている。

『ひぐらしのなく頃に 誓』/【HIGURASHI】/昨年大ヒットした『ひぐらし』の続編 前作の謎はこれで解釈可能になるぞ!

舞台は昭和58年だけど女子生徒のスカート丈なんて、今風ですごい可愛い!! ヴィジュアル的な効果が解って作られているんだ。昨年公開の前作で理解できなかったすべての観客は(僕もその一人でした)これを観たら謎(=物語の作り)が氷解する。そしてさらなる続編に期待しちゃうこと間違いなし。
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前作のベースは原作の「鬼隠し編」、そして本作『誓』は解答編に当たる「罪滅ぼし編」の映画化です。原作ゲームのファンだけに観せとくのは勿体ない!

2009年3月号*

『ホルテンさんのはじめての冒険』/【RETIRE】/定年後の人生にも楽しいことは一杯だ 世の中は発見と出逢いに充ちている♪

鉄道の運転士だったホルテンさんが定年を迎え、町なかに放たれる。もともとそーゆー観察眼を持っていたのか、それとも定年後の余裕で見えるようになったのか、周囲の人々や物事の興味深いことといったら! こんなに面白い日々を送るんならホルテンさんはブログをやるといい。僕マイミクになるよ!
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舞台はノルウェイ。監督は『キッチン・ストーリー』のベント・ハーメル。2008年度のアカデミー賞外国語映画賞のノルウェイ代表作品に選出されてる。

2009年2月号*

『キャラメル』/【WOMEN】/戦争に一切触れない初のレバノン映画 平時の女性たちは我々と一緒だったよ

『レバノンを舞台にした映画で戦争に言及しないなんて初めて! 描かれているのはいろんな世代の女性たち。不倫の恋、同性に寄せる想い、そして老いた母をケアする生活。レバノン発だけど言われなきゃ判らないほど、どの国、どの時代にも共感を呼ぶ悩みと人生が展開する。我が事?って思っちゃうよ!
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タイトルのキャラメルとはレバノン女性にはお馴染みの脱毛アイテム。砂糖をキャラメリゼして作ったまさにキャラメルで、作りつつつまみ食いもできる!

『いのちの戦場 -アルジェリア1959-』/【WAR】/人間性を失わないまま戦争に行く者は 悲惨な思いを覚悟しなきゃならない!

肩に銃弾を受けると打撃を感じたようにその力で倒される、って表現は本当っぽい! 人の心理描写も本当みたいに描かれた戦争映画です。アルジェリアに攻め込んだフランス軍の中尉である主人公は「非戦闘員は撃たない」という“理想”を抱いてる。でも! 彼は観客とともに戦争の現実を思い知るぞ。
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舞台となったアルジェリア戦争はフランスが経験した史上最大の植民地独立戦争。この戦争の存在をフランス政府は99年まで公式に認めていなかったそう。

2009年1月号*

『ディザスター・ムービー! おバカは地球を救う』/【PARODY】/アメリカで大ヒットした映画大集合! 版権が心配なほどパロディにしまくり

パロディは元ネタをみんなが知っていてなんぼ。つまりこの映画の元ネタになってる映画こそが実際にアメリカで受けた映画だってーこと。中でも意外なほどの比重を占めているのが『JUNO/ジュノ』だ。こんなにフューチャされるなんて!と、未見の人は本作を観た後ででもDVDでチェキるべきだよ♪
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原題の直訳は「災害映画」。物語のベースになっているのはパニック映画です。意図せず、『僕の彼女はサイボーグ』のパロディ?と思うシーンまである!

『プライド』/【RIVAL】/金持ちの令嬢と貧しい母子家庭の娘が オペラ界のトップを目指し競い合う!

貧乏な境遇から這い上がるために根性がひん曲がっている、けども才能もある萌役を演じるのは元Folder5の満島ひかり。朝の連続テレビ小説『瞳』にも出演していたけど、眉の濃さが勝ち気さを、でも顔の丸さと黒髪が柔らかさを醸し出していて、意地悪な役回りはルックスに似合わぬ意外性で魅力満点。
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一条ゆかり原作の漫画が映画化されるのは、意外に思えるけどこれが初。監督は女優の魅力を最大限に引き出すのと画の切り取り方に定評がある金子修介。

『反恋愛主義』/【LOVE COMEDY】/幸せになりたい想いはいずこも一緒だ ハンガリー発のアラサー・ラヴコメ♪

面白い映画に鼻が利く人は本作を見逃さないだろう、「ハンガリー映画」で「2005年作品」なんだもの。そんなレアな映画が日本で劇場公開されるって、よっぽど面白い所以だと判るでしょ? 俳優陣に馴染みがなくてもノープロブレム。観ているうちにみんなのキャラクタに好感が持てるラヴコメだよ♪
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女性監督のクリスティナ・ゴダは、本作が長編劇映画のデビュー作。日本でも07年に公開になった『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』でお馴染み。

『アンダーカヴァー』/【BROTHER】/北島三郎の『兄弟仁義』はもう古い! 裏社会の住民だって血縁はやっぱ大事

「親の血を引く兄弟よりも♪」とサブちゃんは歌ってたが、あんなの強がりだと、この映画は主張してる。裏社会と繋がるクラブでマネージャをしていても、警察一家の家族とは疎遠になっていても、捜査に当たっている父や兄が被害に遭ったら心中穏やかじゃいられまい。血は水よりも濃い、男の映画だ。
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舞台は1988年。原題の“We own the night”ってのは80年代のニューヨーク市警の標語だ。裏社会に棲む弟役を演じるのはホアキン・フェニックス。

『そして、私たちは愛に帰る』/【PARENT & CHILD】/ドイツとトルコに別れた3組の親子が 距離の故に互いの愛を想い合う物語♪

メインキャストは6人、3組の親子です。父&息子が1組と母&娘が2組。舞台はドイツとトルコ。親子がお互いを大切に思うのは当然だ、なのに出会って伝えることが困難!とゆーもどかしさが展開します。ラストの、エンドロールのバックの長尺のシーンにすべては収束するよ、この余韻をお楽しみに♪
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トルコ系移民の二世としてドイツに生まれたファティ・アキン監督は、本作で2007年のカンヌ国際映画祭の最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を受賞した。

2008年12月号*

『ミラーズ』/【REFLECT】/一度祟られたら二度と鏡は見られない 反射物を避けつつ忌まわしい謎を解け

『24』のジャック・バウアー役でブレークしたキーファー・サザーランドが廃墟に遺された鏡に祟られちゃう。鏡の中の「悪意」は円谷プロの往年のヒーローもの『ミラーマン』のルールと一緒だ、「左右反転した像が映る」すべてに現れるぞ、ガラスにも金属にも水面にすらも! 逃げ場&対処法求む!!
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本作がベースにしているのは2003年の韓国映画『Mirror 鏡の中』。鏡に囲まれた撮影では、舞台裏が映り込まないようにするのが一苦労だったそう!

『PARIS』/【PERSONS】/そこに暮らし生きる人々目線のパリは 観光向けに飾られたのとは違ったパリ

心臓移植手術のドナー待ちをしている青年の目を通して見たパリにはお馴染みのものと初めて観るものとが混在してる。パン屋のコンジョ悪のおばはんは地方差別があることを教えてくれる。卸売市場の内部なんてパリじゃなくても初見だ。観光案内では語られない、住民視点のパリでの生活がここにある。
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セドリック・クラピッシュ監督は『スパニッシュ・アパートメント』でもこの手法を採ってた。群衆劇っていうの?沢山の人の交錯で物語が紡がれていく。

『青い鳥』/【TEACHER】/生徒の自殺未遂事件があった中学校で 張りかけたカサブタを剥がす臨時教師

中学2年の3学期に赴任してきた吃音症の臨時教師は、学校中が忘れようとしている生徒の自殺未遂事件をほじくり返す。演じる阿部寛が役者として持つ威圧感は、まんま教師が抱いている信念の「自信」として表現され、まさに効果的です。どうしたらこの事件にけりがつけられるのか、導いてくれるよ。
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多くの名作邦画の助監督を務めた中西健二の劇映画監督デビュー作。原作は重松清、主題歌と音楽はシンガーソングライターのまきちゃんぐが担当してる。

2008年11月号*

『彼が二度愛したS』/【DATE CLUB】/エグゼクティヴ専用デートクラブって 潜入してみたい?と思う人は要注意!

「厳重な審査の後に、ニューヨークのエグゼクティヴたちだけが入会を許可される会員制のデートクラブ」って本当に存在するそう。ユアン・マクレガーは人のケータイでアクセスして女の子とアポを取り、そんで事件に巻き込まれるんだ、なんてゆうか自業自得?そして肝が太い?飛んで火に入る夏の虫?
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本作はヒュー・ジャックマンが創立した制作会社シード・プロダクションズの初の長編映画。ヒュー・ジャックマン本人も脚本に惚れ込み、出演もしてる。

『あぁ、結婚生活』/【OLDIES】/1949年のアメリカで起こる愛人騒動 冷めた夫婦間がかえってスリリング!

現代が舞台ならこんな深慮遠謀はきっとあり得まい、愛人ができた→愛人と結婚したい→でも離婚したら妻が可哀相→いっそ殺そう!だなんて! もちろん最新機器もなければ、殺害計画も簡単で直球だよ、すべてが1949年テイストで揃えられてるんだ。サスペンスフルなオールディーズをご堪能あれ♪
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女優陣は髪型で時代感を出してるけど男性陣は顔の造りからして49年風に見える人を起用してる。クリス・クーパーもピアーズ・ブロスナンも、っぽい!

『夢のまにまに』/【WAR】/映画美術界の巨匠の長編第一回監督作 現代の人間関係に戦時中の体験を思う

230本以上に及ぶ邦画の美術監督を務めた90歳になる木村威夫の初監督長編映画です。「映画学校の老いた学院長と戦争を考える一学生との交流」を描いた話で、こーゆー実体験に基づいたテーマこそ90歳たる最大の意義であり、貴重だ。これが自らの言葉として語れる監督は、もはやそうはいないもんね!
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木村威夫のキャリアはキャスト陣の豪華さにも反映しているよ。若手だけを挙げても宮沢りえ、永瀬正敏、上原多香子、浅野忠信とゆーラインナップだぜ!

『わが教え子、ヒトラー』/【HITLER】/5日後に迫った元旦のヒトラーの演説 ユダヤ人の教師が自信をつけさせる!

チャップリンの『独裁者』は、まだオブラートに包んでいたと知れる。だってナチスとかヒトラーとか名指ししてないでしょ? 本作は凄いよ。具体的に個人攻撃で「ヒトラーはびびって演説ができなくなった」って話だもん。ユダヤ人の演説の先生が収容所から呼ばれてくるんだ、ただじゃあ、済むまい!
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ヒトラーに演説を指導するのは『善き人のためのソナタ』で市民の監視をする大尉を演じたウルリッヒ・ミューエ。昨年7月に亡くなり、これが遺作です。

2008年10月号*

『しあわせのかおり』/【CHINESE】/激ウマ中華料理店の親父が倒れたので 中谷美紀が勤めを辞め弟子入りする!

「シズル感を出す」とか「美味しそうに喰ってみせる」など食べ物を旨そうに撮るいろんな手法がある中で、この映画がしてたのは「町の中華料理屋が毎日違うランチメニューを2種出す」だ。名前も旨そう、海産物のは「海定食」で山の幸メインだと「山定食」ってゆうの。毎日両方食べたくなるじゃん!!
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舞台は金沢市大野町。港町だから食材が新鮮で美味しそうなイメージで、且つ隠れた名店の評判も全国的には伝播しづらそうだ。ナイスロケーションでは?

『宮廷画家ゴヤは見た』/【PORTRAIT】/ゴヤに肖像画を描かれた2人の人生が 交錯し絡み合って、数奇な運命を紡ぐ

ゴヤはフランス革命の頃のスペインの人です。そんな社会情勢下でゴヤが描いてた版画は今見ると新聞の風刺一コマ漫画みたい。そしてこれは何百年も前から似顔絵描きに科せられた枷なのか、そっくりに似せ、周囲が賞賛する出来の肖像画に、描かれた本人が気を悪くする時がある! ゴヤが描いてもか!!
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ロレンソ神父役は今年大ブレイクしたハビエル・バルデム。異端審問で投獄されるナタリー・ポートマンの悲愴さは綺麗なだけにより強調され、衝撃的だ。

『地球でいちばん幸せな場所』/【VIETNAM】/ベトナム発、道端で花を売る女の子が 象の飼育係とCAとに知り合う物語♪

両親を亡くしホーチミン市に逃げてきた10歳の少女トゥイが道端で花売りをする時に着るのはセーラー服っぽい制服。学資の足しにするとゆー作り話で同情を引く作戦だけど、ベトナムでもセーラー服が通用するとは! トゥイの大事なお人形も西洋ナイズドされてて、知らないベトナムのディテール満載!
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全編がハンドカメラで撮影され、ベトナムの人々の生活が伝わってくる! トゥイが逃げ出してきたすだれ工場、孤児が集められる施設なんかも興味深い。

『リダクテッド 真実の価値』/【RAPE】/赴任地で少女をレイプするアメリカ兵 その全貌が事実に基づいて綴られる!

2006年にイラクであった「アメリカ兵による14歳の少女のレイプと家族4人惨殺事件」を題材にした擬似ドキュメンタリィ。アメリカでは賛否両論で大論争だそう。曰く「反米的だ」、曰く「これが戦争のあるがままの姿だ」。日本で観る者は、沖縄のアメリカ兵が起こす事件に思いを馳せてもいいかも。
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全編が、兵士が自ら撮ったホームビデオや監視カメラの映像を編集し繋いだという作りになってる。イラクでの若い兵士の日常がリアルに再現されてるよ。

2008年9月号*

『おろち』/【UMEZZ】/お耽美な洋館を支配する異質と不条理 楳図かずおのホラーを見事に映画化!

この物語自体を知らずとも楳図かずおのホラーに触れたことがある人なら、いかに“楳図的”かが解るだろう。展開や落ちがたとえ読めても期待も興味も褪せない。「定番」の強みだ。さらに他の映画なら文句も出よう「辻褄のジャンプ」までもがいかにも楳図ホラーっぽく、堪えられない魅力になってる!
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楳図ホラーの女性は「この世の者と思えない美貌」に「底知れぬ闇」を併せ持つけど、これに木村佳乃は適役!! 『おろち』は木村佳乃の代表作になった!

『次郎長三国志』/【JIROCHO】/21世紀に新たに甦った正統派の時代劇 方言にまで施されてる配慮をチェキ!

清水の次郎長の子分って東海道の街道沿いの各地から集まってきてるから、方言が交じっていると凄く本当っぽい。本作には終始、徹頭徹尾、名古屋弁のキャラが一人含まれてるよ。「桶屋の鬼吉」だ、演じるは愛知県出身の近藤芳正だ。だから注目して聞いてたけど、あの名古屋弁は本物!!確かだったぞ♪
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『寝ずの番』に続くマキノ雅彦監督の第2作。ご存じ、俳優の津川雅彦の別名だ。本作は叔父のマキノ雅弘監督が13本撮った人気シリーズを題材にしてる。

2008年8月号*

『スカイ・クロラ』/【OSHII】/押井守の新作は空中戦で幕を開ける! 戦闘機乗りは大人にならない子供たち

前作『イノセンス』で「肉体が無いのに電脳世界で生き続ける存在」を扱った押井守が今回描くのは、思春期の姿のままで歳を取らず、殺されない限り死なない永遠の子供「キルドレ」たち。戦闘機乗りとして戦争に駆り出される彼らの死生観と愛の形はゴールの決定が自らに委ねられてて、独特に純粋だ。
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主人公のカンナミが乗る戦闘機「散香」は機体の後方にプロペラがある、プッシャと呼ばれるタイプ。散香フィギュアが付いた原作本も売ってる、チェキ!

『ホウ・シャオシェンのレッドバルーン』/【hommage】/1956年にパルム・ドールを受賞した “赤い風船”が現代のパリに復活する

ラモリス監督の『赤い風船』へのオマージュとして作られた、現代が舞台の物語です。でも。パリの現代っ子って、例えばプレステとか持ってるから。そうそう赤い風船1個で長く遊び続けたりする話は現実的じゃなくなっちゃう。だから本作では赤い風船は「パリの人々を見守る」役回りを担っているよ。
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ホウ・シャオシェンは小津安二郎の『東京物語』へのオマージュとして『珈琲時光』で「東京」を描いた台湾の映画監督。原題の直訳は「風船の旅」です。

『雲南の花嫁』/【BRIDE】/結婚後も夫と同居できない風習なんて 元気でじゃじゃ馬な花嫁がぶっ壊す!

主役のフォンメイが可愛いぞ!! 麺を口からいっぱい垂らし横目でニラニラ睨むさまの愛らしさと言ったら! 結婚しても夫との同居は3年後、とゆう風習なんて関係なく押しかけちゃう。女性を小馬鹿にする男は相撲で負かしちゃう。奔放で真っ直ぐで可愛いんだ、きっとみんな好きになること請け合い♪
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本作で描かれる風習は雲南に住む少数民族イ族のもの。婚姻のルールや伝統芸能である龍舞、美麗な普段着、義父母に出す足洗い湯など、どれも興味深い。

2008年7月号*

『庭から昇ったロケット雲』/【ROCKET】/宇宙はNASAだけのものじゃない!! 農場の親父が自作ロケットで宇宙へ!

アメリカの農場って広い!! たとえロケット打ち上げに失敗しても近隣に迷惑が掛からないほど、周りに何もない。そこにビリー・ボブ・ソーントンだ。50年代の映画が似合うよーな風貌だから、時代設定が一瞬判りづらいぞ。でも大丈夫、速攻でケータイが出てくるからね。現代の話と判って観られるよ。
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個人がロケットを上げようとする話は三木聡監督の『ダメジン』でもネタとして使われてたけど、こっちは本気だ! 困難は、技術力じゃないとこにあるぞ!

『世界でいちばん美しい夜』/【BIRTH】/14年前に起こった色っぽ〜い大事件で 辺鄙な田舎村が出生率日本一になった

出生率が日本一になったきっかけの“事件”が綴られる物語だから、しかもR-18指定だから、もう色っぽいことこの上なし♪ その「誰も争わなかった一夜」こそが『世界で一番美しい夜』のタイトルの所以だ。宝塚の男役スターだった月船さららが体を張ってミステリアスでセクシィなヒロインを演じてる。
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天願大介監督が日本編の脚本を担当した02年の映画『セプテンバー11』を、是非とも事前に観ておくべき! 主役の田口トモロヲの原点がそこにあるから。

2008年6月号*

『愛おしき隣人』/【HUMAN】/コント?いや、ショートストーリー! 独特のセンスで次々綴られる人間模様

据え置かれたままのカメラアングルで切り取られた風景の中に、ちょっと変わった人々の営みが展開する。ショートコントを思わせるような完成度を持つ、数多くの短いストーリィが積み重ねられるうちに登場人物たちに親しみが湧いてくるよ♪ 「気がつくと部屋が動いてる」エピソードが一押しお勧め!
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『散歩する惑星』以来、本作が7年ぶりの新作となるロイ・アンダーソン監督の1969年の作品『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』も同時公開だ!!

2008年5月号*

『プルミエール 私たちの出産』/【BIRTH】/女は自分になぞらえ男は後学のために 参考に観よう!出産ドキュメンタリィ

世界各国の出産シーンを記録したフランス映画です。本当、バラエティに富んだいろんなパタンが観れる。ケアが尽くされた、母体と子供のことを考え抜いた出産も確かに魅力的だけど、ベトナムの産院での、流れ作業で大人数をさばく出産だって“命が生まれる”ことには変わりないんだな〜と感じたよ。
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日本からエントリィしてるのは岡崎市の「お産の家」。自身も31年前にそこで取り上げられたお母さんが、夫と長女に見守られながら我が子を出産する。

2008年4月号*

『地上5センチの恋心』/【FLOATING】/「恋愛小説を読んでハッピィな心」を 空中浮遊で表したハッピィな恋愛映画

オデットは感激屋、とゆーかハッピィに生きる方法を知ってる。大好きなラヴロマンス小説を読んでは体が浮き上がり、その作者と腕を組んで歩く時には浮き足立つ。そんなに好きになれる小説に、作家に、出会いたい! ってゆうか「好きな小説に出会う悦び」を映像で表現しちゃうこの映画もラヴいよ♪
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主役の主婦オデットを演じるのはフランスの実力派女優カトーヌ・フロ。5月10日公開の『譜めくりの女』では譜めくりをさせるピアニスト役をやってる。

2008年3月号*

『ポストマン』/【JP】/配達で町の人々と触れ合う郵便局員は 人との繋がりと家族とをこよなく愛す

長嶋一茂が演じるのは今どきケータイも持たず、配達には自転車を使う、徹底的に「昔ながら」の郵便局員。メール全盛の現代に逆行した「昔ながら」だから、家族の団欒と触れ合いを最も大切にする。同様の父親キャラは『結婚しようよ』で三宅裕司もやってた。家庭回帰を訴える需要が、今来てるんだ!
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全寮制の学校への進学をソッコーで親父に反対される娘役は北乃きい。昨夏、CCレモンのCMにて「ないけどオッケー!」って雨の海で叫んでた子だよ♪

2008年2月号*

『ウォーター・ホース』/【NESSIE】/ドラえもんの道具は出てこないけれど これはまさに実写版『のび太の恐竜』

舞台はスコットランドのネス湖。水辺で青白く光る卵を拾っちゃったら、期待するなという方が無理っしょ。ご期待通り、もちろん恐竜が孵るよ♪ 手足がヒレだから水棲の動物なんだけど、運のいいことに陸上でも呼吸できるし家の中を歩き回るんだ。恐竜の育て方と護り方を、これを観て学んだらいい!
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“water horse”は英和辞典に載ってないけど“sea horse”はタツノオトシゴのこと。だから本作のネッシーには、タツノオトシゴみたいな角があるぞ!

『サラエボの花』/【WAR】/戦争を肯定するような輩はこれを観ろ 現代戦でもこんな卑劣が現にあるんだ

92年から95年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で実際に行われた「攻撃」がモチーフになっている。それは12歳の娘サラの出生に関わることであり、シングルマザーの母親エスマは今でもその傷を引きずっているんだ。力で制圧しようとする者の前に、最も被害を被るのは弱者だと思い知ろう!
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サラ役のルナ・ミヨヴィッチは男の子たちと雪の中でサッカーをするシーンで足を骨折した。だからサッカーのシーンには途中2カ月のブランクがあるよ。

『北辰斜にさすところ』/【BANKARA】/旧き良き旧制高校時代の野球青年らが 何十年を経て後輩の試合観戦に集う!

鹿児島の七高と熊本の五高は大正時代には野球の好敵手同士だった。現在では鹿児島大学になっている七高の、寮での生活が描かれるけど、フンドシ姿だし!酒はマストで呑まされるし!でも勉学にも野球にも一所懸命に励んでいたそうだよ、男なら誰しもちょっと憧れるバンカラって、まさしくこれだぜ!
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『北辰斜に』は第七高等学校造士館の寮歌。北辰とは北極星のことで、鹿児島市内からは北天の仰角31.36°に臨むことができるとゆうことを意味してる。

2008年1月号*

『ちーちゃんは悠久の向こう』/【JUVENILE】/幼馴染みの高校生同士の初々しい恋を オカルト風味で描いた青春ムービー♪

屈託が無くオカルト大好きなちーちゃんを演じる仲里依紗の天真爛漫さがギザカワユス! 幼馴染みのモンちゃん役の林遣都は昨夏『バッテリー』の主人公でデビューしたばかりの初々しさが残る。同級生の林田さんはメガネ美少女だし。弓道部には美人の先輩がいるし。もうこれは典型的なジュブナイル♪
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原作はラノベの新鋭作家、日日日(あきら)。タイトルが出てくるのは86分ごろ。そこでキャッチコピィ「死んでも、終わらない恋」の意味が明らかになる!

『28週後...』/【VIRUS】/全力疾走ゾンビの恐怖を描いたホラー 『28日後...』の24週後を描いた後日談

知り合いがソッコーでゾンビ化して、しかも全力疾走で喰いつきにくる。感染すると20秒で発症し人を襲い始めるウィルスが原因なんだ、超スピーディ! 28週間封鎖された後、もう大丈夫かなと人が戻ってきたイギリスでまたもや感染が勃発して、大人が本氣で走りまくる阿鼻叫喚の鬼ごっこが始まる!
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なんといっても見応えがあるのがアメリカ軍の「コード・レッド(=緊急警報)」後の大攻撃。ロンドンの街路を火の海にして焼き尽くす爆撃は大迫力だ!

『ゼロ時間の謎』/【CHRISTIE】/避暑地のお屋敷で老未亡人が殺された クリスティーのミステリーの映画化!

アガサ・クリスティー本人が選ぶ生涯のベスト10の1冊に選ばれた『ゼロ時間へ』が原作。ケータイが出てくることで判るように舞台は現代に設定し直されている。海辺の別荘で起こった殺人事件を解決しに来るバタイユ警視は名探偵の名前を連ねた歌詞の鼻歌を歌っているよ、たぶん映画オリジナルだ!
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監督は04年に『アガサ・クリスティーの奥様は名探偵』を撮ったパスカル・トマ。本作もそうだけど舞台を原作のイギリスからフランスに移してるよ。

2007年12月号*

『僕がいない場所』/【LONELINESS】/孤児院を抜け出し実の母に会いに来て 「愛されてない」確認をするなんて!

舞台はポーランド。国立孤児院に預けられているクンデルは抜け出して実の母親に会いに来る。町には孤児院に入る前に世話をしてくれた近所の人もいる。…え、実の母親の居場所が判る環境にいて孤児院に入れられてるの? ポーランドの孤児院ってどんなルール? ってゆうかこの方が孤独が根深いよ!
***
音楽担当は『ピアノ・レッスン』で知られる作曲家、マイケル・ナイマン。99年には中江裕司監督の日本映画『ナビィの恋』のメインテーマも作曲してる。

『チャプター27』/【CHAPMAN】/ジョン・レノンを殺したチャップマン その直前3日間に彼は何をしていたか

ジョン・レノン殺害犯を演じるに当たり体重を30kg増やしたジャレッド・レトを見ると解る。手に、サインをもらおうとニューアルバム『ダブル・ファンタジー』を持って出待ち、入り待ちをして立ってるんだ。ああ、見るからに、今で言うオタクだよ、ストーカーだ。こんな奴にジョンは殺されたのかー。
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チャップマンが自分を投影して読んでた『ライ麦畑でつかまえて』は26章から成ってる。タイトルの『チャプター27』はそこを逸脱した行動の象徴です。

『アフター・ウエディング』/【FAMILY】/多額の寄付金の申し出には裏があった これぞ「遺される家族」を思う生き方

裕福な実業家のヨルゲンは、インドで孤児院を経営しているヤコブに援助を申し出る。ヤコブが言われるがままにヨルゲンの娘の結婚式に出席すると、ヨルゲンの要求がどんどんエスカレートしてくるの。金持ちはまったく我が儘だ!と思ってると理由があるんだなー。『象の背中』を観た人はこれも是非!
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ヤコブ役のマッツ・ミケルセンは『007/カジノ・ロワイヤル』での血の涙を流す悪役の印象が強く、悪そうに見えるけど今回は孤児の世話をするいい人!

『いのちの食べかた』/【FOOD】/食べ物の「素材」ができる風景を描く 徹底してるのは現場の「効率のよさ」

カメラは大規模な生産現場を捉える。牛であったりキャベツであったり、鶏であったりトマトであったり、鮭であったりアーモンドであったり。屠殺は衝撃的だけど、本当に一瞬だ、みるみる解体されて見慣れたお肉に姿を変えていく。我々が食べてる物ができる様子を見知っておいても、いいのではない?
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セリフも音楽もない。現場の音だけで綴られる。従事する人たちのランチ風景もほぼ無言だ、「日常の生産作業」に過ぎないことと思い知らせてくれるよ。

2007年11月号*

『モーテル』/【KILLER】/ぼろいモーテルのばばっちい4号室は 客の惨殺ビデオを撮影する舞台だった

宿泊客を殺す様子を隠しカメラで撮りビデオにしてるモーテルに、冷え切った夫婦が新たな獲物としてやってきた。今までに何本か作ってるから、ただ殺しちゃつまんない。怖がらせて恐がらせて脅えもがく姿が撮りたいんだ。上手の手から水が漏る殺人鬼を出し抜いて、果たして逃げおおすことはできる?
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原題の“vacancy”は「空き室」って意味。脚本家のマーク・L・スミスは、田舎のモーテルはなぜ潰れないか?と考えてアイディアの着想を得たそうだ。

『ヴィーナス』/【OLD AGE】/孫ほどの年齢の女の子に萌える老名優 老いてなお盛んVS小悪魔の対決なのだ

70代の俳優モーリスは、前立腺の手術を受けながらも知り合った女の子ジェシーに入れ込んじゃう。男って不能になっても尚、そうなのか!と感心すると同時に、そーゆー心を持ち続けているからおぢいちゃんでもセクシィでいられるのかと勉強になる。日本の中高年男性も見習って恰好よくなればいいよ。
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老名優モーリスを演じるピーター・オトゥールは『アラビアのロレンス』で主演した本当の名優だ。本作でもアカデミー主演男優賞にノミネートされてる。

『この道は母へと続く』/【ORPHAN】/裕福な里親より実のママに会いたい! ワーニャは孤児院を脱走しママを捜す

子供を養子縁組することで生計を立てている孤児院が舞台。だから、ワーニャみたいに脱走されては困るんだ、みんな本氣で追いかけてくる。そんな環境下でも孤児たちは、したたかにパワフルだ。自分たちでお金を稼ぎコミュニティを形成してるぞ。陰があっても暗くない、この元気さはいっそ清々しい!
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元ネタとなったのは2000年にロシヤの新聞に掲載された実話。実在の孤児院で撮影を行い、実際の孤児たちも多く出演させるとゆうリワリティぐわいだ。

『呉清源 極みの棋譜』/【GO】/昭和最強と謳われる棋聖の伝記映画は 個人を通して見たリアルな昭和史だ!

碁打ち、呉清源の自伝を映画化した本作に描かれてるのは囲碁のシーンばかりぢゃない。中国に生まれ囲碁で頭角を現し日本に渡った呉清源は、信仰に傾倒するのだ。これはまさに個人の実体験からしか得られない昭和だ。徴兵も、ヒロシマも、戦後も、一般論ではなく生きた人間のリアルさで語られるよ。
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モデルとなった呉清源本人は90歳を越えた今なお、小田原の自宅に住んでいる。川端康成や坂口安吾もその著作で呉清源のことを書いているぞ。要チェキ!

2007年10月号*

『北極のナヌー』/【ARCTIC】/凍ってても氷が解けても苛酷な北極で 白くまとセイウチの仔は元気に育つよ

原題は“ARCTIC TALE”で、直訳すると「北極物語」。でも83年の邦画『南極物語』とはテーストが違う! ナレイションは温暖化で氷がなくなり、極の動物たちは生きるのに難儀するって言うけど、氷がある真冬も大変そう! 白くまとセイウチの仔の話がメインだけどイッカクの恰好よさも必見だよ。
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日本語版のナレイションは稲垣吾郎、日本語版の主題歌は手嶌葵が歌っている。エンドロールでは撮影隊の裏側も見られて、また違った印象を楽しめます。

『サイボーグでも大丈夫』/【CRAZY】/精神科の開放病棟にて繰り広げられる 妄想の融合が見事にファンタジック♪

フツー妄想って、抱いた人に固有のものだけど、この映画ではそれを患者らが互いに共有し、絡み合ってくる。ヒロインは自分のことを指マシンガンを搭載したサイボーグだと思ってる。空を飛べる女性や卓球の必勝フォームを持つ男も出てくる。こんなのヴィジュアル化されちゃあ、楽しいに決まっとぅ!
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天頂に立つアホ毛が特徴の“何でも盗む男”を演じたチョン・ジフンは、Rain(ピ)の名で知られる韓国のトップスター歌手。「ピ」は韓国語で雨のこと。

2007年9月号*

『酔いどれ詩人になるまえに』/【DRUNK】/仕事をさぼっては煙草を吸い酒を呑む 未だ芽の出ない作家のぐうたら人生!

マット・ディロン演じる自称“作家”のチナスキーって、本当に仕事をさぼる。何の職に就いてもすぐ飽きて、抜け出して煙草吸ってお酒呑んでるぞ。馘になっても懲りない。それでいて「貧乏な男が好き」な女性にはもてるんだ。端から見てみぢめなのを我慢できるなら、こんな生き様もプッチ素敵かも。
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原作はカルト的人気を誇る作家チャールズ・ブコウスキーの自伝的小説。アウトサイダーな作風が売りで、本人も「パンクな爺さん」と呼ばれていたそう。

『さらば、ベルリン』/【40's】/40年代風名画と現代の名優のコラボ! 懐かしさは手堅くて、新鮮さは面白い

今の売れ売れの俳優をキャスティングして昔の名画風のを撮ってる。この魅力は新発見だ♪ 1945年のベルリンが舞台だから40年代の映画のスタイルを踏襲し、全編モノクロでかっくい〜! 「現代のことを和歌に詠むのに文語体を遣う」みたい? 「歴史的名車にニトロのエンヂンを積んだ」みたい?
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監督はスティーブン・ソダーバーグ×主演はジョージ・クルーニー。って『オーシャンズ13』のコンビぢゃん!! 配給がワーナー・ブラザースなのも一緒!

2007年8月号*

『星影のワルツ』/【GRANDPA】/初主演の喜味こいしが絵になってる! これぞ現代日本の理想のお爺ちゃんだ

監督が祖父との思い出を映画化するに当たって起用したのは喜味こいし。白いオヒゲも美しく、帽子をかむりヴァイオリンケースを提げたスーツ姿の恰好いいことと言ったら! “大好きだったお爺ちゃん”ってことがルックスを見ただけで解るよう作られてるんだ。俳優・喜味こいしがもっと観たくなる♪
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写真家である監督が20年間に亘って撮り貯めた写真集『Takuji』が本作のベースです。監督の個人的な思い出だから幼馴染みも本人役で出演してるよ。

『ヘレン・ケラーを知っていますか』/【HELEN KELLER】/盲聾なんて想像もしたくなかろうけど それで生きてる人もいるのだと知ろう

目が見えなかったら映画も観れない、C2も読めない。自分がそうなったらどうしよう?に答えた映画が『ブラインドサイト?小さな登山者たち?』だった。本作はさらにそこに“耳が聞こえない”が加わる。これを観て盲聾の人の「孤独」を知ろう。何かできること、の一歩目は「知ること」なのだから。
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主演の小林綾子は、盲聾の主人公の15歳から78歳までを演じている。もちよん聾の人への配慮がなされていて台詞にはすべて字幕スーパーがついてるよ!

2007年7月号*

『石の微笑』/【SUSPENSE】/我々の日常にもこれくらい不安はある 問題は、誰かが一線を越えちゃうこと

サスペンス、若しくはスリラーだと思って観るから登場人物のすべて(主人公までも!)が怪しいけれど、この程度の「癖」はみんな持ってるでしょ? 主人公の日常に「ほころび」をもたらす、イコール「何かやらかす」キャラはどいつなのか、明らかになるまでは全員を疑いつつ不安におののいちゃう!
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邦題の「石の微笑」には主人公の家の庭にある頭像がイメィヂされてる。原題の“The Bridesmaid”はキィパーソンの属性です。微妙に意味合いが違う。

2007年6月号*

『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』/【ARCHITECT】/一度見たら忘れられない造型の建築物 つまり彼って現代のガウディなのでは

「他と違ってる建物大好き!特徴が解り易いもん」「名駅前のスパイラルタワーズの完成が楽しみ!」そんな人はこの映画を観るべし!カナダ生まれの建築家、フランク・ゲーリーが建てた数々の作品や創造のノウハウがふんだんに出てくる。大金持ちになった暁には是非彼に自宅のデザインを依頼したい!
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監督のシドニー・ポラックはゲーリーが駆け出しの頃から親交がある。ゲーリーのアトリエのみならず移動の車中までもカメラが追えるのは親友ならでは。

『Watch with Me〜卒業写真〜』/【FIRST LOVE】/死を迎えて願うのは初恋の人との再会 それを妻も旧友もサポートしてくれる

中学時代の初恋の女の子は2階にある部屋へ窓から入ってくる。こんな行いに出られたら男の子はめろめろになっちゃうって!! しかも演じる高木古都がいかにも中学時代の綺麗な子」っぽい肉の付き具合だ、ちっともモデル体型ぢゃないのがまたリアリズム! 30年を経て忘れられない萌えがここにある。
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"Watch with Me"は「私とともに目を覚まして祈りなさい」という新約聖書の言葉。ホスピスの基本精神「死が近い人を見守る」って意味で遣われてる。

2007年5月号*

『ストリングス〜愛と絆の旅路〜』/【MARIONETTE】/デンマーク発、王位継承と陰謀の物語 但しキャラクタがすべて操り人形だ!!

人類がみな操り人形だったら何が起こると思う? 「建物に屋根とか2階とゆう概念があり得ない、だから寝室で寝てても雨の日はずぶ濡れ」「自殺する時は自分が吊られている糸を切る」など凄いルール満載! 驚嘆したのは「城門」と「牢屋」と「誕生」のシステム。誰も観たことない世界が展開する!
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台詞を日本語に吹き替えた監督は庵野秀明。声優陣も豪華だ、草彅■剛、中谷美紀、劇団ひとり、優香、小林克也、香取慎吾、戸田恵子、伊武雅刀などなど!

2007年4月号*

『13/ザメッテイ』/【RUSSIAN ROULETTE】/13人が輪になり前に立つ奴の頭を狙う これがフレンチなロシアンルーレット

できることなら、13人が合図とともに相手の頭を撃つロシアンルーレットの、どいつが生き残るか賭ける側にいたい。でもお金に困ったらロシアンルーレットする側に参加しちゃうかもしんない(ふるふる)と恐れる貴兄にこの映画は朗報だ、運が99%のこのゲームで、しかし1%あるコツを教えてくれる!
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全編がモノクロで語られる。だから時代設定がすぐには判らない。観てるとやがてケータイが出てくる、それで現代なんだと知れるよ。ケータイって偉大。

『ユアン少年と小さな英雄』/【DOG】/モッサモサのむく犬がギザカワユス! エディンバラの忠犬は主人の墓を護る

モデルとなったボビーは19世紀のスコットランドに実在し、教科書にも載ってる犬。この映画のドッグトレーナーの飼い犬一匹が演じてる。普通は複数の犬がキャスティングされるだろうに!そいなけお利口さんなんだ。ウエスト・ハイランド・テリアの毛を刈らずに19世紀風のモッサモサにしたそうだよ。
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有名なこの犬の物語は1961年にもディズニーで映画化されてるけど、今回はできるだけ史実に基づいて作られた。飼い主もちゃんと実際のとおりの警官だ。

2007年3月号*

『善き人のためのソナタ』/【SONATA】/反体制者では?と疑って盗聴してたら 悪人を善人に変える曲が流れてきた!

映画史上最強のアイテムが出現するよ! なんと、「本気で聴いた者は悪人になれない」曲、その名も『善き人のためのソナタ』だ!! 監視や密告が横行していた東ドイツで、当局に目をつけられて四六時中盗聴されてた劇作家がピヤノで弾いちゃうのです。さあ、盗聴者の心がどう変貌するか、お楽しみに!
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主人公である盗聴者、ヴィースラー大尉を演じるウルリッヒ・ミューエは、当時実際に監視もされてたし、十数年間も奥さんに密告され続けてたそうだよ。

『パパにさよならできるまで』/【FAREWELL】/一緒にアポロの月着陸をTVで観ると 約束したパパが事故で死んだ、けど…

子供だからって理解できない訳ぢゃない、パパが死んだことくらい解る。でも。解るからこそ、10歳のイリアスは認めたくないんだ。パパが死んでない振りを貫き通すよ。パパの名前でお婆ちゃんに手紙を出し、左腕につける喪章には別の理由を主張する。イリアスがパパの死を受け入れられるのは、いつ?
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同じくアポロ11号をモチーフにした『月のひつじ』の舞台はオーストラリアだった。本作はギリシャ。いかにアポロが全世界的な注目を集めてたか判ろう。

『ルワンダの涙』/【GENOCIDE】/たった13年前にルワンダで起きた事実 フツ族が大挙してツチ族を殺しに来る

体育の時やお巡りさんが吹く以外でホイッスルが鳴るのって、サンバダンスとか野球の応援とか楽しいシーンだよね。みんな鼓舞されて浮かれるんだ。それがこの映画では、ツチ族を殺そうと集まったフツ族が、陽気にピッピキピッピキ吹いてるよ。いかに嬉々として虐殺が行われたかがよく判る兇悪さだ!
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ルワンダ虐殺事件に興味を持ったら昨年公開の映画『ホテル・ルワンダ』や、イマキュレー著の書籍『生かされて。』も是非。衝撃的だけど知っとくべき。

2007年2月号*

『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』/【ACTRESS】/ニキフォルはポーランドの男性画家だ その最晩年を演じるのはなんと女優!

伝記映画のキャストに、本人に似てて且つ演技もできる俳優が見つかった時、制作サイドはさぞや嬉しかろう。『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマンとかね。本作ではお爺ちゃんのニキフォル役を1920年生まれの女優、クリスティーナ・フェルドマンが演じてるぞ。容姿が生き写しなんだって。
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ニキフォルの絵に興味を持った方へ。名演小劇場から西へ歩いて6分、愛知芸文センタB2Fにて原画展が2月17日から3月9日までやる。観覧無料だよ。

『イカとクジラ』/【SEPARATE】/再生しやり直すばかりが家族ぢゃない 我慢はもう沢山と思ったら解体だぜ!

この奥さんは夫の理不尽によく耐えてたもんだ。破局が現実問題となっても夫の思考はなにも改善しないしね。まあ、そーして生き、育まれた性格だもん、当然か。父派のお兄ちゃんも母派の弟も、学校で問題を起こす程度に双方に欠点がある訳だけど、それが我慢ならず埋め合えないなら解体もやむなし。
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タイトルになってる「イカとクジラ」とはアメリカ自然史博物館に展示されてる巨大なイカとクジラが格闘するジオラマ。NYを訪れた時には観にいこう

2007年1月号*

『ジャッカス:ナンバー2』/【CRAZY】/人の嫌がることを進んでやる第2弾! 下品&不謹慎&吐瀉物のコンボが痛快

子供、特に男の子ってばばっちいものが大好き。叱られることがやりたい。痛いは面白い。そんな心を持った大人たちが作った映画だ。これ観て眉を顰めるような無粋な友達なんかとは縁を切っちゃえ。但し、鑑賞中の嘔吐にはくれぐれもご用心。後ろの席の人がうっうっとか言い出したらソッコー逃げろ!
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衝撃のネタ「馬の父搾り」は、アメリカ映画協会が画面の一部削除を行った大問題作。R-18指定なのは、子供にはこんな面白いの観せられん!ってこと?

『モンスター・ハウス』/【MANEATER】/玩具も人も呑み込まれて返ってこない 人喰いハウスの謎に3人の子供が挑む

ホラー映画って、わざと怖い方へ足を踏み入れ首を突っ込む主人公で成り立つ。分別のある大人だったらフツー関わりにならないよね。本作でも、お向かいに不気味な家があって偏屈な爺さんが住んでたって大人たちは構わない。子供たちがちょっかい出したから、冒険と謎解明の物語が展開する訳ぢゃよ。
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日本語吹替版で観る人は子供の中の紅一点ジェニーと、家を護る老人ネバークラッカーの声に注耳や! それぞれ石原さとみと泉谷しげるが担当している。

『ダーウィンの悪夢』/【TANZANIA】/タンザニアが内包している社会問題に 日本人の"食"が関わってるってマジ?

タンザニアのヴィクトリア湖で獲れるナイルパーチは日本に輸入され白身魚としてスーパーでだって売られてる。タンザニアは稲作をしてて、地元では米を食べている。そんなに、日本とタンザニアが食でつながってるなんて!知らなかったし、そーゆー目で観るとタンザニアの抱える問題が一層興味深ス!
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売春・エイズ・ドラッグの蔓延、さらには兵器輸入の裏側までもを暴いたこの映画の日本公開に当たり、タンザニア大使は配給会社を訪れて抗議したそう。

2006年12月号*

『人生は、奇跡の詩』/【TRUE LOVE】/戦地にまで潜入してきて看病しまくる ベニーニのラヴからは逃れられない!

毎晩夢の中で結婚式を挙げてる「運命の女」が現実世界に出現し、ロベルト・ベニーニの猛アタックがスタート。イタリア男だけあってC調なんだから〜、その行為はストーカーと紙一重ぢゃない?など不信感を抱きつつも見守ってると、やがてこれがチョー真実の愛の表現だと判る。こりゃあよろめくよ♪
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ベニーニの夢の想い人には『ライフ・イズ・ビューティフル』ほか数々のベニーニ作品に出演してるニコレッタ・ブラスキ。ベニーニの本当の奥さんだよ。

2006年11月号*

『いちばんきれいな水』/【SLEEPING BEAUTY】/11年間眠り続け19歳のある日目覚める いわば加藤ローサ版の『ガラスの脳』

眠り続ける女の子が表現できるのは寝顔だけ、顔が命だ。整った造作しか訴える武器がないもん。目覚めた時が19歳でも心は8歳のまま、つまり行動規範が幼いのだ。それがただ滑稽に映るだけじゃなくキュートさも兼ね備えてくれなくっちゃね。だからキュートで綺麗な加藤ローサはこの役にウッテツケ!
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12歳の妹役は赤いフレームの眼鏡が可愛い菅野莉央。これまでに池脇千鶴の少女時代、柴咲コウの少女時代、小西真奈美の少女時代を演じてる天才子役だ。

『氷の微笑2』/【MURDER】/14年経ってもキャサリンはセクシィで 周りは事故死や殺人のオンパレード!

前作でも今作でも、こんなに自分の周囲で人が死んだら犯人だろうがなかろうが滅入ると思うのにキャサリンは相変わらず色気を振りまいてる。その理由が精神分析医に鑑定してもらって判明するのだ。曰く「危険中毒」なんだって。ああ、じゃあ仕方ない。周囲の危険にも艶っぽく微笑んでいてください。
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シャロン・ストーンは四十代後半だけど、体を露出してもちっとも年齢を思わせない。松坂慶子かイザベル・アジャーニかシャロン・ストーンかって感じ。

2006年10月号*

『セプテンバー・テープ』/【REALITY】/アフガニスタンでのロケは臨機応変に 相手の反応で変化する筋に対応せよ!

アメリカを出る時に決めてあったのはあらすじだけ。撮影対象は本物の武器のディーラーや報奨金ハンター、本物の銃だ。ドキュメンタリィのように作られたこの映画では、起こるすべてがぎりぎりのリアリティ。ホントに撃たれてない?マジで襲われてない?創作だと解ってても観てる間はドッキドキだ。
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アフガニスタンで撮られたテープは国家防衛にとって脅威になるとの理由でアメリカ国防総省に押収され、そして8時間分の映像は返ってきていないそう。

『アガサクリスティの奥様は名探偵』/【DETECTIVE】/奥様の好奇心は事件の芽を見逃さない ほんのちょっとの糸口から真相に迫る

奥様の慧眼は侮れない。叔母さんの面会に行った高級老人ホームにはいろんな、癖のあるお婆ちゃんたちがいっぱい。天井から吊った椅子に座るお婆ちゃん、ソファに沈み込んで座って隠れているかのようなお婆ちゃんたちだ。奥様はこの中から的確に、事件につながるたった一人に目をつけ探偵するぞ。
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原作は1968年に書かれた小説『親指のうずき』。「おしどり探偵トミー&タペンス」のシリーズの一作で、舞台をフランスに移して映画化されたのです。

『地獄の変異』/【CAVE】/洞穴探検は暗いよ〜狭いよ〜怖いよ〜 水陸空に展開する怪物もおそがいよ〜

全長145キロにも及ぶ洞穴だからところどころとても広く開けてる。天井も高い。ああ、閉塞感から解放された!助かったと思ったらとんでもない。洞穴に棲む化け物は場所に適応して進化した揚げ句、翼が生えてて空を飛ぶのだ。どっこも助かってないよ!1ミリも油断がならないよ!逃げ道はどっちだ?
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洞穴を封じていたのは13世紀の修道院跡。『ダ・ヴィンチ・コード』でも言及されてたテンプル騎士団が,怪物と戦った記録が遺されている。チェキ。

2006年9月号*

『夜のピクニック』/【WALKIN'】/全校生徒が24時間で80km歩く歩行祭 普段しない話や告白がぽろりこぼれる

だって名古屋インターから浜松西インターまでが85kmだよ、24時間で歩ける? しかもこいつら、ただ歩くだけじゃあない。休憩時間に紅天女を演じたり(これは貫地谷しほり)、エアギターをかき鳴らしたり(これは柄本佑)、告ったり(これはみんな)。さすがに高校生は元気で青春だぜ(感嘆)!
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原作は書店員の投票で決まる第2回本屋大賞の受賞作。歩行祭は原作者・恩田陸の母校、茨城県立水戸第一高校で実際に行われてる「歩く会」がモデルだ。

『狩人と犬、最後の旅』/【TRAPPER】/犬ぞりを駆り雪原を走って罠猟をする これが実在の老狩人の北極圏での生活

カナダのロッキー山脈で猟をして暮らすノーマン・ウィンターの犬ぞりは7頭だて。凍った湖を渡っている際に氷が割れ、ノーマンが凍てつく湖水にはまっちゃうシーンは見てるだけでも凍えるよ。犬が助けに来てくれて、本当に助かった。犬はお利口だなあ。鳥をあげると穴掘って埋めてとてもかわゆい♪
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ノーマンは言う、「狩人がいるから北極圏の動物相は保たれる」「狼は決して人を襲わない、物語の中だけだ」。本物の狩人の活きた言葉に触れられるよ。

2006年8月号*

『真昼ノ星空』/【KILLER】/沖縄で穏やかな休日を過ごす殺し屋は プールと料理と鈴木京香を愛すのだ♪

台湾の殺し屋がひと仕事を終え、ほとぼりを冷ますために沖縄に身を隠す。そこでは別の自分でいられる。ってんで弁当屋で働く鈴木京香にラヴい想いを抱くよ。ゴーヤの玉子とじ入り380円の弁当は別に旨そうでもないけど、鈴木京香の手からじかに渡されると恋の魔法でめっちゃ絶品に早変わり♪するぞ。
***
イケメン殺し屋に想いを寄せるのが香椎由宇。『ローレライ』『リンダ リンダ リンダ』『デスノート』でお馴染みだけど実は04年作品のこれが映画初出演!

2006年7月号*

『ブラッドレイン』/【VAMPIRE】/ヴァンパイアと人間の混血のレインが 吸血鬼のパワーアップアイテムを探す

レインは主人公の名前。吸血鬼と人間のハーフで、もちろん純潔の吸血鬼より強いってパタン。演じるクリスタナ・ローケンは『ターミネーター3』で女性版のターミ姉ちゃんを演じていた。強い訳だ! 最強のヴァンパイアである父に復讐するため、パワーアップアイテムを探すのだ。まだ強くなる気?
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原作は超人気のビデオゲーム。そして監督のウーヴェ・ボルはホラー&アクションゲームの映画化ならこの人ありと知られた“ゲーム世代のスピルバーグ”!

『奇跡の夏』/【CHILD】/脳腫瘍に冒されたお兄ちゃんのために ハニは子供が考える精一杯をしました

大好きなお兄ちゃんが脳の手術を受けるのだ。お兄ちゃんが良くなるために、9歳のハニは考えられる限りのことをする。コメディアンのオクトンジャさんにお見舞いに来てもらおう。ターザンおじさんの不思議な水をもらってこよう。子供の考えることだから半分ファンタジィだけど、でも期待しちゃう!
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原作は『悲しみから希望へ』のタイトルで書かれた実話。実際のこの一家はカナダに移住してるため、カナダの医療システムに関する考察もされています。

『プラハ!』/【HAPPY】/明るく歌い♪楽しく踊り♪ラヴを満喫 これが1968年のチェコの若者の青春!

いきなり冒頭のミュージカルシーンがとてつもなくカワユス! ファッションは60年代のものだけど原色使いがすごく美麗で、夢かお伽の世界みたい。歌も明るく開放的で、こんなにハッピィな舞台を用意されたら女の子も男の子も、のみならず男やもめのお父さんにだってラヴが燃え上がっちゃう訳だ。
***
68年、ソ連はチェコに軍事介入した。この映画はその直前、プラハが最高に美しかった一瞬を描いてる。ラストに迎える暗さの故に、一層まぶしく輝くよ。

『恋は足手まとい』/【COMEDY】/打算と情愛と珍妙な来訪者たちで綴る 破廉恥も魅力的なフレンチコメディ♪

美貌の歌姫のお屋敷に次々と客が訪れてくる。フランス映画が得意とする導入部だ。キャラたちも滅法濃ゆいぞ。サイテーの歌詞を書く作詞家、韻が踏めないイケメン、口臭に氣づかない新聞記者。歌姫のカレシは富豪の娘に乗り換えたがってるし。いるだけで面白いこの連中はいったい何を引き起こす?
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原作は19世紀の喜劇の戯曲。出てくる新聞はもちろん1894年当時のものだけど、実はケータイを取り出すシーンもある! 奔放に楽しんで作られてるのだ。

2006年6月号*

『玲玲の電影日記』/【CINEMA】/野外映画館には思い出のすべてがある 映画を軸に綴られる少女の運命の物語

野外映画館が人々の娯楽だった中国の田舎町。そこで育った少女・玲玲は映画が大好き。いたずらっ子の転校生に父違いの弟、楽しいことも辛いことも映画と一緒にあった。だからしたためた思い出日記の芯も当然「映画」だ。生き別れた人とも映画で引かれ再会するし、こんな映画人生って素敵ちゃう?
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劇中に出てくる映画は日本では馴染みがないけど、子供たちが熱狂する『鉄道遊撃隊』は観てみたい! 1956年の作品で、暴走する機関車が超カッコイイ。

『佐賀のがばいばあちゃん』/【ALWAYS】/昭和三十年代は佐賀だって貧乏だけど すごい婆ちゃんがパワフルに乗り切る

昭和三十年代の貧乏と活気は東京ばかりの専売特許じゃない。生活が苦しくて広島の実家から佐賀のお婆ちゃんちへ預けられた島田洋七の自伝小説が原作です。婆ちゃんの「うちは明るい貧乏やっけんよかと」がすべてを物語っている。貧乏だから判る、先生も豆腐屋さんも、皆が究極優しくって温かい♪
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「がばい」は「すごい」って意味。お婆ちゃんちに預けられる明広少年を演じる3人の子役は、成長とともに大人の明広役の三宅裕司にどんどん似てくる!

『アダン』/【ARTIST】/榎木孝明が演じる天才芸術家第2弾は 奄美大島に独り渡った狂気の日本画家

『HAZAN』で実在の陶芸家を演じた榎木孝明が、日本画家・田中一村の半生にチャレンジ。一村の凄いところは画家のくせに自分の絵を人に見せない、売らないを貫き通した点。日本の天才芸術家ってドラッグに頼ることなく狂気をパワーに創作するんだ、どっかの国のミュージシャンに見習わせたい!
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タイトルの「アダン」は奄美に自生するパイナップルに似た植物。同じ名前を持つ白ワンピの少女も駆け抜ける風のようにスマートに登場する。恰好いい!

2006年5月号*

『死者の書』/【ANIMATION】/原作は折口信夫で舞台は8世紀平城京 川本喜八郎の人形アニメは和風づくし

NHKの人形劇『三国志』(懐かしい!)を憶えてる人にはお馴染みの川本喜八郎の人形が動いて紡ぎ出す、民俗学者・折口信夫の小説の世界。『コープス・ブライド』や『ウォレスとグルミット』と同じく、コマ撮りのストップモーションアニメの手法が使われてるけど造型も物語もジャパネスクの極み!
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本編の前にお話の舞台を実写で紹介する13分の『ひさかたの天二上』が上映される。奈良時代から変わらぬかに見える山々に、雰囲気は一気ヒートアップ!

2006年4月号*

『リトル・イタリーの恋』/【MARRIAGE】/手紙のやりとりだけで結婚しにきたら 写真は別人でした! チックショー!

オーストラリアのイタリア人街、リトル・イタリーに住む男性から写真入りの結婚の申し込みが届いた。50年代の一般的なお見合いの方法だそう。ハンサムな容姿に恋に落ちたロゼッタがイタリアから海を渡ってくると、実は写真は男性の弟のものだった! 誰も不幸にせずこの恋を収めるには、どーする?
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会ったこともない相手と結婚を決意するに到る恋心は、ロゼッタが空想したラヴストーリィを綴った日記帳に結晶されている! とってもラヴくて可愛い♪

『ラストデイズ』/【KURT COBAIN】/伝説のロックバンド「ニルヴァーナ」の カート・コバーン最期の日々がここに

前作の『エレファント』同様、ガス・ヴァン・サント監督は事実に着想を得た映画を作った。人気絶頂の最中、94年にライフル自殺した天才ミュージシャン、カート・コバーンは最期の2日間をこう過ごし苦悩していたのでは?との解釈を映像化したのだ。演じるマイケル・ピットはカートに生き写しだよ!
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日本のアーティスト12組がカートに捧げる新曲を書き下ろしたオマージュアルバムや映画をイメージしたTシャツも発売される。カートファンは要チェキ!

2006年3月号*

『白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最期の日々』/【RESISTANCE】/21歳のゾフィーはヒトラーの統治下で 勇気を持って反ナチスの信念を貫いた

ユダヤ人ではない、虐げられる側ではなかったのに当時ナチスドイツに反抗して逮捕され、処刑された21歳の女性、ゾフィーの物語です。この角度からナチスを描く映画は珍しいよね。こういう抵抗勢力を裁く人民法廷の様子や、処刑の方法などなど、知っておくべき歴史的事実をたくさん観せてくれるぞ!
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ゾフィーが所属してた、ヒトラー打倒を掲げた組織が白バラです。この映画は90年代に東ドイツで発見されたゲシュタポの尋問記録に裏打ちされ作られた。

2006年2月号*

『イノセント・ボイス―12歳の戦場―』/【CIVIL WAR】/内戦って自国民同士で戦闘してるから そこに暮らす少年に逃げ場なんてない

自分の住んでいる町が内戦の戦場だ。敵国がいるのではない。政府軍とゲリラ軍が自国民同士で戦っている。夜のご飯時になるとゲリラの活動タイム。撃ち合う流れ弾が家の中にまで飛んでくる。でも主人公は子供なので双方の言い分も主張も知らない、聞かされない。戦闘と背中合わせの生活を送るのみ。
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中米の国エルサルバドルが舞台の、実話に基づいた物語です。映画に描かれているのは1980年だけどこの内戦は92年に和平合意を迎えるまで続いたそう。

『ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密〜銭形姉妹への挑戦状』/【IDOL】/黒川芽以と堀北真希と夏帆が姉妹だし 女学生で制服で刑事だ!!ギザ萌え〜♪

スケ番刑事はヨーヨーだったけど、ケータイ刑事が操るのは携帯ストラップ。銭形泪こと黒川芽以のストラップは網に、銭形舞こと堀北真希のはリボンに、銭形零こと夏帆のは鎖に変形して悪を捕まえるぞ。お揃いの古銭が付いているのがポイント。夏帆の「レレレ?」と堀北真希のダンスはファン必見♪
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2002年からBS-iで放映されてる人気シリーズの映画化。本当はこの上に宮崎あおい演じる長女の銭形愛がいるのだ。愛がどーなったかは劇場でチェキ!

2006年1月号*

『天空の草原のナンサ』/【MONGOLIA】/モンゴルで暮らす遊牧民の子供だって 犬が飼いたい!と駄々をこねるのです

『らくだの涙』を撮ったモンゴル出身の女性監督が今回主役に据えたのは遊牧民の6歳の女の子。独りで馬に乗って羊を放牧させたりもできる、ゲルを畳むお手伝いもする。両親に護られ育まれたナンサが、見つけたブチの犬を飼いたくて仕方がない。でもお父さんは駄目だって。どうする!?犬とナンサ!
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モンゴルのちいちゃい子は乾いた牛の糞を積み木代わりにして遊ぶ。電気は風力発電。モンゴルにも選挙の広報カーが来る。この映画のすべてが新鮮だよ!

『二人日和』/【KYOTO】/美しき古都に穏やかな老夫婦が暮らす この舞台が現代の日本なのが誇らしい

日本の風景って絵になる。映画に撮って映えるから、ジャポネスクを売りにした作品って好んで作られます。そんな中でこれは、京都に住まう主役の老夫婦の生き方までもが和風だ、見た目に留まらず精神的にも徹底しているよ。なにごとも穏やかに受け容れる、こんなふうに上品に老いたいって思うぞ。
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フランクフルトで開催された映画祭「第5回ニッポン・コネクション」でグランプリにあたる観客賞を受賞してます。ドイツの人にもよさが伝わったのね♪

2005年12月号*

『ガラスのうさぎ』/【NO MORE WAR】/あの反戦文学の名作がアニメになった 優しいタッチの絵柄が悲惨さを訴える

子供の視点ってイデオロギィなんてないから、大人と違って余分なことを考えすぎないから、その分直接的に純粋に、戦争の忌むべき点を主張できる。そんな、多くの人に読み継がれてきたこの名作を映画化するのに、実際の子役ってどうしても演技が拙いもの。アニメを選んだのはまさに正解だったよ。
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終戦60周年記念作品であるこの映画の原作は210万部を超え海外でも翻訳出版されているロングセラー。作者は主人公と同じ名前をもつ高木敏子さんです。

『綴り字のシーズン』/【FAMILY】/お偉い父親の期待に応えられる少女は 崩壊寸前の家族を救うことができるか

リチャード・ギア演じる大学教授である父親が言うことは立派だし、たしかに正論だ。でもお母さんもお兄ちゃんも、ついていけないよ。ただ独り、スペル暗唱大会で勝ち進む娘だけが誉められ続ける。大人たちにも解決できない、徐々に拡がる家族間のこの溝を、果たして娘は埋めることができるのか?
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舞台は今夏公開の映画『チャレンジ・キッズ-未来に架ける子どもたち』でお馴染みのスペリング・ビー。全米の子供らが英単語のスペル暗唱の腕を競う!

『ロッテ・ライニガーの世界』/【ANIMATION】/その美麗さに淀川長治氏も絶賛した! 世界初の長編アニメは影絵で綴られる

ドイツの女流影絵アニメ作家、ロッテ・ライニガーの『アクメッド王子の冒険』は1926年の作。ディズニーの『白雪姫』が11年後だから、まさに世界最初の長編アニメ! もちろんサイレントで全編をオーケストラによる音楽が盛り上げる。王子が世界を股にかけ、アリババをも巻き込み大活躍するよ♪
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同時上映の3作品『カルメン』『ガラテア』『パパゲーノ』は、いずれも1930年代に製作された10分ほどの短編。プログラムは週替わりだ、要チェック!

2005年11月号*

『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』/【ALIEN】/今年って宇宙人襲来映画の当たり年♪ 空飛ぶ触手エイリアンが田舎町を襲う

隕石と共に飛来し、ひゅんひゅん飛び回って人を襲う。本気でデザインされたエイリアンの造型は見もの。しかしこの物語のルールと結末のぶっ飛び具合は誰にも予想できまい。異常事態に相応しく異常な解決が示されます。我々には、不死身だったらいいのになと祈るほかない、と教えてくれるのです。
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原題は“アトミック・サーカス”。邦訳の際にジョニー・デップの奥さんである歌姫ヴァネッサ・パラディの名を冠したのだ。戦うより歌う方が多いけど♪

『乱歩地獄』/【RAMPO】/見事に映画化された江戸川乱歩の神髄 猟奇とグロテスクがこの上なく美しい

江戸川乱歩の原作を映画化した、と聞いて何を予想するだろう。「謎解き」かな。それは一面では正しい。しかし本作はタイトルに「地獄」を謳っている。即ちスポットを当てたのは乱歩作品が描く人間の暗部、闇の面だ。清潔や良識で覆い隠された人間の本性を暴き、美麗な映像で見せてくれるのです。
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4編のショートフィルムで構成された本作品のすべてに出演しているのは浅野忠信。やがて狂気に到る耽美を演じるのに、まさに打ってつけな配役でした♪

2005年10月号*

『メトロで恋して』/【FRENCH】/車内で2人が出逢い恋が始まる物語♪ フランス版『電車男』はその後に悩む

若い男女が地下鉄で出逢う。男は恋愛にぶきっちょで、初めての電話をかける時に幾度もシミュレーションを繰り返してる。これだけ聞くと『電車男』を彷彿とさせるけど、でも舞台はフランス♪パリだ。出逢いはスマートだし、つき合い方もお洒落です。危機は仲が進展してからやってくるぞ。頑張れ!
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俳優でもある男性監督アルノー・ヴィアールの長編第一作。原題の直訳も「クララと僕」で、つまりヒロインは男性の視点で描かれていてすごいキュート♪

『ヒナゴン』/【MONSTER】/財政大赤字の山間の町が生き残る道は合併か?謎の類人猿で活性化するか?

山間の田舎町・比奈町には、人間の大人ほどもある類人猿“ヒナゴン”の目撃情報が寄せられていた! これは70年代に広島県比婆郡西城町で実際に起きたヒバゴンの騒動をモデルにしており、ロケも旧西城町内で行われました。謎のUMA=未確認生物=ヒナゴンは、はたしてスクリィンに姿を見せるか!?
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原作はオール讀物に連載された重松清の小説『いとしのヒナゴン』。実はこれ、そもそも最初に「井川遥主演の映画の原作を」と依頼されて書かれたもの。

2005年9月号*

『17歳の風景 〜少年は何を見たのか〜』/【bicycle】/母親殺し事件に想を得て語られる物語 少年は独り自転車を漕いで北へ向かう

自転車に乗る人なら解るだろう、走行中ってものを考えるのにうってつけの環境です。ただただ自転車を漕ぎ続ける主人公の少年は、ほとんど言葉を発しないけど、頭の中はものすごく回転しているはず。映画内では明かされない少年の思考を、観客は一緒に走行している気分になってトレースするのだ。
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若松孝二監督はシネマスコーレを創設した偉い人。岡山で母親をバットで殴り殺した少年が自転車で逃走、16日後に秋田で逮捕された事件を基にしている。

2005年8月号*

『ライディング・ザ・ブレット』/【HITCHHIKE】/ヒッチハイクした車の運転手は死人!? スティーヴン・キングの新作ホラー!

お母さんが入院したからって190キロ先の病院まで夜道をヒッチハイクで向かおうだなんて、ホラー映画の主人公の鑑だ。そんなの怖い目に遭うのは当然ぢゃん! 親切にも乗せてくれたおじちゃんたちを片っ端に疑って怪しんで畏れてる。思い込みあり、本当に怖い人あり。果たして無事
に到着できる?
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原作はモダン・ホラーの帝王、スティーヴン・キングの短編小説。ブレットってのは主人公が少年時代にトラウマを負ったジェットコースターの名前だよ。

2005年7月号*

『愛の神、エロス』/【EROS】/香港、アメリカ、イタリアの3名匠が エロスをテーマに幻想世界を紡ぎ出す

ソダーバーグが描く物語は、エロティックなシーンこそ少ないけどすごく象徴的だ。淫夢に悩まされる広告クリエイターが精神分析医の診察を受ける。でも精神分析医は治療中も上の空で、双眼鏡を覗いたり窓から紙飛行機を飛ばしたりしてる。衝動の根底にエロスが流れているさまを暗喩している訳だ。
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このトリロジーの3監督をつなぐのはカンヌだ。アントニオーニとソダーバーグはパルムドールを、カーウァイは最優秀監督賞を、かつて受賞しているよ。

『female 【フィーメイル】』/【WOMEN】/Jam Filmsの最新作には縛りがあるぞ 女性が主役でテーマがエロスなのだ!

エロスを表現するっていうんだったら、「夜の舌先」の高岡早紀くらいまで体を張って演じなきゃ! 惟川恵の原作も面白いし松尾スズキの演出も凄まじい。でもやっぱり高岡早紀のなりきった演技が最高です。5本ある3本目に登場するのだ、雰囲気が掴め、期待も高まったところで爆発してくれるよ♪
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5人の人気女性作家の書き下ろし小説を原作にしたオムニバス映画です。「桃」の長谷川杏子なんて桃を食べてるってだけなのに充分にエロティックだよ。

『チャレンジ・キッズ 未来に架ける子どもたち』/【SPELLING】/全米の勉強自慢の子供たちの晴れ舞台 これはまさに英単語のスペル甲子園だ

アメリカで毎年開催されるスペル暗記大会。その決勝大会にまで駒を進めた8人の子供たちの、生活や家族までをも描いたドキュメンタリー映画だ。勉強ができ過ぎて学校では友達がいない男の子は、この大会に来れば周りは同じような子ばっかりで嬉しいと喜んでいる。文化系の努力が花咲く瞬間です♪
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映画で描かれるのは1999年に開催された第72回大会。決勝大会に勝ち上がってきたのは249人。104人にまで減った2日目の模様はTVで生中継もある!

2005年6月号*

『ブリジット』/【HAPPENING】/頂点からどん底までを3分間で落ち、その後ブリジットの人生は波乱づくめ

冒頭からショッキングな出来事のオンパレード。血まみれのブリジットが我が子とともに車に撥ねられ、治ると今度はハロウィンの仮装パーティでとんでもない目に遭う。普通の人は一生に1つ出会うこともないようなハプニングが畳み掛けて起こる。こんな波瀾万丈な人生を送る女性、そうそういまい!
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生年月日不詳の女優、アンナ・トムソンは決して「整った美貌」の持ち主ではない。でもこのブリジットの生き様を通すと、どんどん魅力的に見えてくる♪

『いらっしゃいませ、患者さま。』/【HOSPITAL】/口移しバリウムに同伴CTスキャン♪ オプション満載のこんな病院はどう?

病院建て直しのために一肌脱いだ風俗業界の名プロデューサーが導入したのは男性患者がウハウハになっちゃうサーヴィス! ナースは指名できるし病院食は「あ〜ん」ってやって食べさせてくれるし、もちろん別料金がかかるけど、病院は潤い患者は悦びみんなハッピーに♪ …でも、女性患者向けは?
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ヴァラエティ番組で大活躍中の梨花もお色気ナースの一人として出演。ナース経験のある水商売の子という設定で、手術シーンではりりしい表情も見せる。

2005年5月号*

『バタフライ・エフェクト』/【RETRY】/幼い頃ときどき記憶が途切れる少年が大学生になり、その原因と理由を知る

子供の頃の日記を読み返したアシュトン・カッチャーは、たまに発症してた記憶喪失の意味を知ることになる。実は裏でつごいことが起こっていたのだ、是非映画で確認してみてね。でもそれを受けて一番変化を余儀なくされるのはヒロイン役のエイミー・スマート。同一人物とは思えぬ変貌を遂げるよ。
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タイトルは「蝶が羽ばたくと地球の裏側で竜巻が起こる」って意味。『ラン・ローラ・ラン』でローラとずれて遭遇した人が別の人生を歩む、ってアレだ。

2005年4月号*

『DEMONLOVER』/【WEB PORNO】/ウェブで金を産むのはやっぱりポルノ 買収やスパイや裏サイトが跋扈する!

フランスの大企業に勤めるキャリアウーマン、ディアーヌが企業の買収のために訪れる先は日本。3Dポルノグラフィックの会社「東京アニメ」がターゲット。最先端、革新的、高レベルのアニメと言えば欧米では日本製ってイメージなのだ。スタイリッシュな映像の中にアニメの制作現場が出てくるよ。
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「東京アニメ」の社員役は大森南朋と山崎直子。彫りの深いフランス人キャストの中で、東洋人顔を武器に、決してダサくはない今の日本人を演じてます。

『ハウス・オブ・ザ・デッド』/【GAME】/あのシューティングゲームが映画に! 死の島に来た若者たちをゾンビが襲う

『トゥームレイダー』『バイオハザード』と、ゲームが実写映画化されたものは数あるけど、ついに『ハウス・オブ・ザ・デッド』がお目見え! 向かってくるゾンビを銃で撃ち殺しながら進むゲームだった。それが映画になると、いっぺんに襲ってくるゾンビの数が半端じゃない。頑張って倒さなきゃ!
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この映画のゾンビは画一的ではない。メイクアップの種類は115種類にも及ぶし、クライマックスでは80人以上にのぼる特殊メイクが同時に施されたのだ

『コックリさん』/【CURSE】/韓国の女子高生がするコックリさんは イジメっ子に呪いをかけるのが目的だ

韓国にもコックリさんがある。何人かでペンを一緒に持って、呪文は「ブンシンサバ、ブンシンサバ、オイデクダサイ」って、ほとんど日本語じゃん。チョー目のおっきな美人のイ・セウンがいじめっ子たちに呪いをかけるのだ。いじめられたり呪いが発動したりで、落ちんばかりに見開く目は迫力満点!
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『ボイス』のアン・ビョンギ監督の新作ホラーだけあって、あの睨みを効かせていた子役ウン・ソウも登場するよ! どこで眼力を見せるかはお楽しみに♪

2005年3月号*

『サイドウェイ』/【WINE】/ワイン好きの男と女好きの男の2人が 1週間のワインツアーに繰り出した!

かたや2年前の離婚を今も引きずってる男。もう一人は来週末に結婚を控えている男。この2人でワイナリーを巡り試飲して回る小旅行に出る。人生の本流からちょっとだけ外れたこの1週間に、それでも異性との出逢いがあり、2人とも忘れられない経験を積むぞ。人生が進展するための寄り道なのね。
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今やワイン界はカリフォルニアがリードしているんだって。作品に出てくる中で一番のワインは「シュヴァル・ブラン」の61年物。いっぺん呑んでみたい!!

『クライシス・オブ・アメリカ』/【MIND CONTROL】/湾岸戦争の英雄が副大統領選挙に出馬 でもその経歴は改竄されたものだった

アメリカ人にとって「アメリカの英雄」であることはかなり有利に働くみたい。だったら湾岸戦争の一部隊全員を洗脳し、英雄を造り上げちゃえ。そいつを副大統領選に出馬させるのだ。こんなに搦め手から攻める政治・選挙映画って今までにあった? 戦争と政治とSFが全部楽しめるなんて、贅沢な♪
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息子を副大統領にしたがる上院議員役がメリル・ストリープ。そのルックスと貫禄はタカ派の政治家にぴったし。こんな女性に議論で勝てる人はいまいよ

2005年2月号*

『ビハインド・ザ・サン』/【REVENGE】/土地の所有を巡り対立している2家族が 殺し殺され合う復讐劇を連綿と続ける

ブラジルの荒涼とした土地に住む2家族が、土地の所有権を巡って代々いがみ合っている。自分の家族を殺した奴は殺し返しても構わないというルールに則り、互いに復讐を繰り返しているのだ。そんなの人数の少ない方が不利に決まってるぢゃん! この人数のデフレスパイラルを止める方法はあるの!?
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兄の敵を討ち命を狙われる側になる主人公トーニョを演じるイケメン俳優ロドリゴ・サントロは『ラブ・アクチュアリー』では眼鏡のデザイナー役だった♪

『ビフォア・サンセット』/【MEET AGAIN】/『恋人たちの距離』から9年が経過し 再会した2人が過ごす85分間を追う♪

95年の『恋人たちの距離』で半年後の再会を誓い、別れた男女が9年ぶりに出逢う。キャストは前作同様イーサン・ホークとジュリー・デルピー。もちろん前作を観てなくても無問題。今回は再会を果たしてからの85分間をリアルタイムで撮ってるよ。本当に一緒に過ごす恋人同士を観察してるっぽい!
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会話を途切れさせぬためリンクレイター監督は『ウェイキング・ライフ』で展開した理知的な議論を投入。その結果、賢い者同士の恋愛に仕上がりました

2005年1月号*

『舞台よりすてきな生活』/【PLAYWRITER】/人付き合いと子供が大嫌いな劇作家が 隣家の子と遊んでスランプを脱却する

ケネス・ブラナー演じる劇作家の、この気持ちは解る! 創作にゆき詰まってる時のウエットな人間関係ほど鬱陶しいものはない。近所付き合いも小さい子供の相手も煩わしいばかりだ。わんわん吠える隣家の犬まで憎くなる。ただ、誠実な相手にはちゃんと誠意を持って接しなきゃ。この映画みたいに。
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原題を直訳すると「隣人の犬を殺す方法」です。タイトルどおり隣家の犬に可哀想なことが起こるのだ。でも大丈夫。エンドロールまでちゃんと観ればね。

『赤いアモーレ』/【ITALIA】/愛娘のバイク事故がきっかけとなって 15年前に失った女性との愛を思い出す

ローマ郊外の寂れた街で医師が出逢い、体の関係を持つ相手の女性がペネロペ・クルス。イタリアという名前を持つ「最下層の労働者階級の女」を演じていて、いつものペネロペとは違う、決してお洒落ではないルックスを晒しちゃってます。具体的には、目の周りに常にシャドウが入り過ぎているのだ。
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原作はイタリア文学界の最高峰、ストレーガ賞を受賞した大ベストセラー。この映画もイタリア・アカデミー賞11部門にノミネートされた大ヒット作だよ。

『アンナとロッテ』/【TWINS】/双子の姉妹が別々の家に引き取られ、ナチスの台頭とともに溝が深まりゆく

『トゥー・ブラザーズ』は虎の赤ちゃんの物語だったけど、こっちの『ツイン・シスターズ』(英題)は人間の双子のお話。幼い時に生き別れになるストーリィ展開は一緒。しかし虎と違って人間は、再会すればすぐ元通りの仲良しに戻れる、とは限らない。でも溝を越えられるのも人間なんだけどもね。
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このアンナとロッテ、顔が似てないのは二卵性だから? 若いロッテ役を演じる女優、テクラ・ルーテンの方はマイク・マイヤーズにそっくりだよ(笑)。

2004年12月号*

『恋文日和』/【GIRLS COMIC】/原作は別冊フレンドに掲載の少女漫画 手紙にまつわる4編のラヴストーリー

4つの物語の中でも「便せん日和」のキャスティングが凄い。中越典子はチョー可愛いが、中越が好きになる相手が大倉孝二なのだ。『ピンポン』のアクマ役の!『ジョゼと虎と魚たち』の雀荘の客役の!『天国の本屋〜恋火』のマル役の! あのルックスで恋愛もののカレシ役に抜擢されるなんて!必見!
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鑑賞後には是非ジョージ朝倉の原作漫画を読んでみて欲しい。「あたしをしらないキミへ」の弓削智久が漫画と激似であることを知るだろう。特に髪型ね

2004年11月号*

『ロード・トゥ・メンフィス』/【MEMPHIS】/B.B.キングを育んだ町、メンフィスのブルースは熱くて愉快で深くて魅力的

THE BLUES Movie Projectには共通のオープニングがある。その中で最も印象に残るのは「左肩から見返りながら、ぶんぶん尻を振る黒人女性」だろう。彼女が登場するのはこの映画だ。ボビー・ラッシュのステージで披露されるので見逃すな! こっそり教えると、あの尻は歌を歌っているんだよん♪
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メンフィスはブルースの聖地。B.B.キングを輩出し、ボビー・ラッシュが今も活動を続けるこんな土地に育ったら、だれでもブルースが好きになるって!

『ゴッドファーザー&サン』/【CHICAGO BLUES】/シカゴ・ブルースのアーティストらをご堪能あれ! 旅は、まだ終わらない

THE BLUES Movie ProjectもついにThe Third Journey。名門レーベル「チェス・レコード」のアーティストやヒップホッパーたちが幾人も紹介される中、一番迫力があるのは“セレブリティ”って店で歌う黒人女性ココ・テイラー。客席からステージへふらりと上がって歌い出すのがかっちょいー♪
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監督のマーク・レヴィンは『SLAM』でポエトリー・リーディングを映画にした。今回の映画にもヒップホップを導入してる。その方面に造詣が深いのね。

『ピエロの赤い鼻』/【PIERROT】/パパがピエロだったら、恥ずかしい? でも実はこぉんな過去があったのです

小学生の息子にとっては、人を笑わせているパパも笑われていると捉えちゃうんだよね。もしパパの古くからの友達が過去に起こったある出来事を教えてくれなかったら、ずっとパパを理解することはなかったかも。人を笑わせることがどんなに優しい心に基づいているかを、息子も、観客も、知るのだ。
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小学校教師であり、日曜日になるとピエロを演じるパパ役に扮するはジャック・ヴィユレ。『奇人たちの晩餐会』でも披露した剽軽さで笑わせてくれるよ。

『風音』/【OKINAWA】/風葬場に風が通る時、祀られた兵士の頭蓋骨が島中に不思議な音を響かせる

最近の、沖縄を舞台にした映画にしては珍しく、出てくるおじいは誰もサンシンを弾きません。『深呼吸の必要』では朗らかで温和なおばあ役を演じていた吉田妙子も芯の強さをあからさまにするよ。沖縄のハッピィな面ばっかり描いた映画とはひと味違うってことだ。子供たちは明るくて元気だけどね。
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時おり姿を見せ舞う蝶々はオオゴマダラ。映画の中に説明はないけど、実は沖縄では蝶は死んだ人の魂を意味するのです。そうと知って観ると、より深い。

2004年10月号*

『スクービー・ドゥー2 モンスター パニック』/【COMICAL】/ハンナ=バーベラのあの人気アニメが またまた実写になって事件を解決する話

テレビアニメとそっくりの外観の俳優たち+CGで描かれた犬、スクービー・ドゥーが今回戦う相手はアニメのシリーズに登場したモンスターたち。すごく特徴的でコミカルで、原作を知らなくても楽しめちゃう。タールお化けやカトラー船長なんて本当に独特。一番怖いのは1万ボルト・ゴーストかな。
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本編が終わりスタッフロールにエクゼクティヴ・プロデューサーの文字が見えたら要チェック。パフィーがエンディングの曲を歌っているよ。聴き逃すな!

『トルク』/【motorbike】/4輪なんかぢゃ味わえない、大迫力の本物のバイクの走りを堪能できるぞ!

クレイジィとはこーゆー時に言う言葉だよ。この映画に出ている奴らはみぃんなバイクが大好きだ。大好きなら大好き同士、仲良くすればいいものをいがみ合ってすぐに走り合い競い合う。圧巻は、走行中の列車の屋根に乗ったり客車の通路を走り抜けたりまでもするのだ。クレイジィにかっちょいいぜ!
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クライマックスで出てくるモンスターバイク“Y2K”はヘリコプタ用のエンジンを搭載した実在のマッシーン。エンジンをかけただけで周囲が吹っ飛ぶ!

2004年9月号*

『スクール・ウォーズ HERO』/【RUGBY】/熱血教師が荒れる不良たちを更正させ 高校ラグビー日本一に導くまでの実話

なにがすごいって、これは実際にあった実話なのだ。校内暴力で荒れまくる高校に赴任するなんて!そこで生徒にラグビーをやらせて更正させるなんて!考えただけで尻込みするよ。それをやってのけた教師と生徒の記録です。熱血で鉄拳で、でも人情で泣き虫の教師役を演じる照英は、とことん熱いぞ!
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84年にテレビドラマ化された『スクール★ウォーズ』と同じく、主題歌はもちろん『ヒーロー』だ! 今回は麻倉未稀ではなく大黒摩季が歌っています♪

『ホストタウン/エイブル2』/【SPECIAL OLIMPICS】/障碍のあるエイミーの家庭が描かれる明るくって心温まるドキュメンタリィ

アイルランド・ダブリン郊外の町ニューブリッジに住むダウン症の女の子、エイミーの生活が語られます。家族も、トレーニングセンターの先生も、エイミーを囲むすべての人が温かい。でもそれは障碍者だから特別に扱われるのではなく、普通の人にも普段から温かく接するべきだと気づかせてくれる。
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ニューブリッジは2003年の知的障碍者のオリンピック、スペシャルオリンピックスで日本選手のホストタウンとなった町。迎えてくれる町の人は皆優しい

2004年8月号*

『マインド・ゲーム』/【IMAGINATION】/ノンストップでメタモルフォーゼする アニメの武器を最大に活かしたアニメ

この夏、最高にわくわく昂奮できるアニメーションがこれ! 登場人物の心情の変化や状況の進展に応じて絵柄がくるくると目まぐるしく変わっちゃうのだ。十分にパワフルなロビン西の原作漫画を動かすにあたり、最も効果的な手法が選ばれている訳です。アニメって万能なんだと、驚嘆し感動するよ。
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原作の漫画の台詞はこってこての大阪弁。だから声優陣にも吉本興業のタレントが起用されてる。今田耕司、ぐっさん、島木譲二なんか顔出しもしてるよ

2004年7月号*

『トスカーナの休日』/【ITALIA】/旦那の浮気が原因で離婚して、傷心の旅行先のイタリアに居場所を見つける

未婚の身には実感が湧かないけど、離婚って大変みたい。結婚したいと望むまで好きになった人と別れるんだから、立ち直るのにみんな苦心するのね。それにしても、イタリア語も喋れないのにいきなりイタリアに家を買って引っ越しちゃうってのはすごい荒療治だ。作家って職業だからできる決断だぞ。
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ダイアン・レインがイタリアで恋に落ちる相手、ラウル・ボヴァは英語が拙いという設定。途中、姪と甥を言い間違えてるけど字幕の誤植ではありません。

『上海家族』/【MOTHER】/両親の喧嘩や離婚や再婚は、子供にも負担になり、心が傷つけられるんです

結婚した相手が横暴な男だったら、耐えていてもそれは治らないよ。ケチはケチなままだし、浮気者は浮気をやめません。あの人にはいいところもある、なぁんて我慢して生活を続けても子供が可哀想なだけ。だから女性が自立できる、夫に頼らなくても生きていける社会がどんなに大切か、よく解るぞ。
***
上海では今でも娘が出戻ると恥ずかしいって思うみたい。でもやっぱり娘の一番の理解者は母親だ。お婆ちゃん役のチェン・チェンヤオは厳しく暖かいよ。

『愛にかける橋』/【FOREIGNER】/おりしも激動の時代を迎える中国に、オーストリアから嫁いできた娘がいた

「言葉が通じない異国」+「馴染みのない風習」−「故郷の両親や親友」<「愛するあの人」っていう図式の、国籍を超えたラヴストーリィだよ。何よりすごいのはこれ、実在のモデルがいること。1930年代の中国に嫁いできたオーストリア娘は、日中戦争も文化大革命も、愛する人と乗
り越えるのだ!
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中国語でオーストリアは「奥地利」。中国・奥地利合作のこの映画、日本で公開される極東ヴァージョンではドイツ語はすべて英語に吹き替えられてます。

2004年6月号*

『メダリオン』/【JACKIE】/ジャッキー・チェン日本公開50作品目 聖典に記された伝説のメダルを護る!

4月7日に50歳になったジャッキー・チェンの日本公開50作品目がこれ。君は何本観た? 1作目は79年の『ドランクモンキー酔拳』でした。49作目『ツインズ・エフェクト』でバスの運転手だったジャッキーは、今回は香港警察の警部役。銃ではなくアクションで戦うスタンスは健在だよ。50なのに〜。
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メダルのおっきい奴がメダリオン。これを狙う蛇頭を追って舞台は香港からアジトのあるアイルランドへ、そして実はアジトの内部のロケ地はタイなのだ。

*2004年5月号*

『フォーチュン・クッキー』/【CHANGE】/おみくじクッキーの不思議な力で娘と母親の心と体が入れ替わっちゃった!

原題は「フリーキー・フライデー」。「おかしな金曜日」って意味だ。つまり母親と娘の心と体が入れ替わって騒動が起こる“1日”を描いた物語です。たった1日の出来事とは思えない、いろーんなイベントが用意されている。クライマックスの“娘の体でバンドコンテストに出ることになった母親”は必見♪
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「フォーチュン・クッキー」はおみくじ占いの入った瓦せんべい。おみくじは『ペイチェック 消された記憶』のアイテムの1つにもなってた、アレだよ!

『ワイルド・フラワーズ』/【WRESTLING】/弱小団体ガリンペイロ女子プロレスを救うのは二代目社長と2人の新人選手

痴漢に襲われているところを女子プロレスラーに助けられた女の子がプロレス団体の門を叩く。これが鈴木美妃。先輩たちはもちろん、タッグを組む相手の、やっぱり新人役の石川美津穂に到るまで、本物の女子プロレスラーとゆーキャスティングの中で、鈴木美妃の頑張りには思わずマジ応援しちゃう♪
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『下妻物語』ではロリータファッションのお店の社長を演じている岡田義徳が、本作では医者を辞めてまで女子プロレス団体を経営する。社長づいてるぅ。

『花嫁はギャングスター』/【GANGSTAR】/韓国版ヤクザの女親分がお姉ちゃんの最期の願いを聞き入れて結婚を決意!

生き別れになっててやっと再会できたお姉ちゃんは、末期ガンだった。その願いとあらば、いかに男にも恋愛にも結婚にも興味のない人生を歩んでいようと、スタンスを曲げて結婚するのだ! 韓国の暗黒街、鉄錘組のナンバー2である女親分は犠牲者を探し始める。目指すは究極の「愛のない結婚」だ。
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主役のシン・ウンギョンは徹頭徹尾仏頂面。目つきの悪い西原理恵子みたいな表情をずーっと崩さない。女性としての魅力を微塵も発動しない設定なのね。

*2004年4月号*

『アイ・ラヴ・ピース』/【HANDICAPPED】/聾者の忍足さんが義肢装具士となって アフガニスタンの女の子の義足を作る!

地雷で脚を失った人々に義足を造ってあげるため、聾者の忍足さんはアフガニスタンに行く。カブールでは、言葉が解らなくてもゼスチャーに近い手話で交流できるよ。この映画は全編善意に満ちています。手足を失ったすべての人と、忍足さんらも含めた出演者全員に、幸せになって欲しいってきっと思うぞ。
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日本での舞台は島根県。義肢装具会社のシーンは実在する中村ブレイスの作業場で撮影された。どーやって義肢が造られるのか、その工程も是非知ってね。

『ゴッド・ディーバ』/【SF】/フランス発のグラフィック・アートが映像となって人間と絡むよ!動くよ!

監督のエンキ・ビラルはフランスの漫画家だ。芸術的なその作風は緻密で美麗で、グラフィック・アートと呼ばれるのに相応しい。ビラル作品お馴染みのキャラ、人間の体に鷹の頭を持つ古代エジプトの神「ホルス」が、犬頭のアヌビス、猫頭のバステトともども実写の世界に降臨して動きます。ファンは必見!
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舞台は2095年のニューヨーク。臓器移植が当然の社会なので、異形の、コミック的造形の人物も不自然ぢゃない。これぞハードSFの世界観の完成度だ。

*2004年3月号*

『ふくろう』/【MURDER】/鯨幕のワンピースを着た大竹しのぶに招き入れられ、次々と殺される男たち

山奥に一軒だけ残った家に棲む37歳の母と17歳の娘が、貧困の末に、訪問した男たちを毒殺してはお金を巻き上げるコメディ。油断させるため、殺す前に男と寝るんだけど、どーせなら実年齢45歳(撮影時)の大竹しのぶより実年齢22歳の伊藤歩にお願いしたいぞ。いずれにしろ満足して死んでいくんだけどね。
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餌食となる男たちは柄本明、田口トモロヲ、六平直政、原田大二郎ほかというそうそうたる俳優陣。死に様の泡の吹き方や末期の言葉に到るまで個性的だ。

*2004年2月号*

『アドルフの画集』/【HITLER】/ヒットラーには独裁者として君臨する以外に、画家になる道があったのだ!

若きヒットラーは画家を目指していた。場合によっては…って思うよ。但し、当然ヒットラーの選択や生涯がヒーローとして描かれる視点なんてありえなくって、だから邦題は『アドルフの画集』だし原題もヒットラーの絵を認めてくれた画廊の主人、マックスの名がそのままタイトルになってるって訳。
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ヒットラー役のノア・テイラーは「観客が魅力を感じないように」選ばれた。群衆の心を掴む演説も、我々からみると狂気が支配していることがよく判る。

『ドラッグストア・ガール』/【MADONNA】/商店主の親父らも脚本の宮藤官九郎も ハイパー可愛い田中麗奈にめろめろ♪

新宿から2時間かかる田舎町にドラッグストアが開店した。営業を妨害しようとやってきた地元商店街の商店主たちは、しかしバイトの田中麗奈に恋をしちゃう。田中麗奈ファンの宮藤官九郎が最高に可愛く設定したのだ、親父5人のハートを掴むくらい容易い。冷やしたぬきを食べる姿すら、ラヴいよ!
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親父たちがまた曲者揃い。柄本明、三宅裕司、伊武雅刀、六平直政、そして「勉強しまっせ引っ越しのサカイ〜♪」の徳井優が個性フルスロットルで迫る!

*2004年1月号*

『ハリウッド的殺人事件』/【SIDE BUSINESS】/副業を持っているハリウッドの刑事は 捜査の片手間に不動産も売りまっせ!

なんたって舞台はハリウッドなんだから、殺人事件を描いても雰囲気はハッピィって感じ。だって刑事たちがサイドビジネスを営んでるくらいお気楽なのだ。犯罪捜査の合間にも副業に余念がないよ。聞き込み先も大切なお客様。カーチェイスの最中にだって顧客からかかってくる電話には出なくちゃね!
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不動産業を副業にしているのはハリソン・フォード。相棒のジョシュ・ハートネットは俳優志望で、ことあるごとに自分が出演する舞台の宣伝をしまくり!

『冬の日』/【BASHO】/35の才能が集って松尾芭蕉の連句を表現した、これが連句アニメーション
複数の読み手が合作の形で詠み上げるという文学「連句」を35名のアニメーターが合作でアニメにしたぞ。本編の後のメイキング『冬の日の詩人たち』では、それぞれの句の意味の解説やアニメの製作過程も見せてくれる。コンピュータあり、人形アニメあり。“動く絵”を作る楽しさが伝わってくる!
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本作のモチーフとなった『芭蕉七部集』の中のこの『冬の日』は、芭蕉が名古屋の連衆と巻いたもの。時代を超えて今ここ名古屋へ凱旋してきたとゆー訳。

『ニューオーリンズ・トライアル』/【TRIAL】/人心掌握術の達人が陪審員になった時 被告側か原告側か、どっちに与する?

法律のシロトに判決の判断を下させるなんて!と常々思っていた陪審員制度ですが、ついに、他の陪審員の意見を操ることのできる男が原告被告の双方にアクセスしてきました。「陪審員の評決を買いませんか」だそーだ。この売り込みによって、法廷の裏側を舞台に三つ巴のバトルが始まるのであーる!
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候補者の中から陪審員が選ばれるところから描いてるってのも新鮮。ジョン・キューザックの手腕がさっそく冴え渡るぞ。裁判って奥が深い頭脳ゲームだ。

*2003年12月号*

『東京ゴッドファーザーズ』/【HOMELESS】/愛い絵柄のアニメでは表現できない ドラマティックとリアリティのコラボ!

3人のホームレスがクリスマスの夜に赤ん坊を拾う物語。アニメでよかった、赤ん坊に演技がさせられるもの。実写に合成されたCGでは滑稽若しくは奇異にしか映らないデフォルメですら自然だ。そして「アニメにしては地味」とも思える絵柄は、今度は現実からの乖離を防ぐのに効果を発揮する。この物語を描くのに相応しい、最良の手法が採られている訳。
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元ドラァグ・クイーンのホームレス、ハナちゃんの声を当てているのは梅垣義明。観客の期待に違わず、劇中で『ろくでなし』を熱唱する。流石に鼻の穴から豆は飛ばさないけどね。

*2003年11月号*

『サンダーパンツ!』/【GAS】/夢は「宇宙飛行士になること」だけど 悩みは「オナラが止まらないこと」!

生まれる前から止まらず出続けるオナラを有効利用する驚異の発明「サンダーパンツ」を穿いた主人公パトリックはついに禁じられていた食べ物に手を伸ばす。ここに映画史上空前絶後の感動的な、“豆を喰うシーン”が出現するのだ! のちに改良が加えられる「サンダーパンツ2号機」そして「3号機」で宇宙へと歩みを進めゆく、これぞ伏線だったのである!
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サンダーパンツを発明したのは『ハリー・ポッター』のシリーズでハリーの親友ロン役を演じているルパート・グリント。あっちではちょっとドジなのに本作では天才少年なのだ♪

『ポロック 2人だけのアトリエ』/【PAINTER】/天才画家の制作現場を完全に再現だ 画風が確立されてゆくさまを見よ!
アメリカのモダン・アート界の天才画家、ポロックの生涯が語られるよ。天才は、やはり画商に見い出される。天才にだってスランプの時期があるし、そしてスランプの後には新しい表現法に目覚めるのだ。さすが天才! もちろん天才たり得るには才だけでなく、自分の絵を神聖なものと捉えるスタンスも必要だと教えてくれる。すべての表現者は見習おう!
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現代美術に関する本にはポロックの作品は必ず掲載されているぞ。是非書店で見てみよう! ポロック本人の写真も必見。エド・ハリスそっくりで驚くよ。…って逆なんだけどね。

『ロイヤル・セブンティーン』/【GIRLIE】/母一人娘一人で幸せに育ったダフネが逢いに行った父親はなんと!上流階級

シンデレラストーリィとはちと違う。実の父親がそもそもイギリスの名門出身なのだ。17歳になるまでNYで愛情いっぱいに育ったサラブレッドが社交界を引っ掻き回しにやってくるよ! 多少の逆境もスパイス代わり。よい子が主人公なのだもの、何かやらかすたびに周囲は幸せになってゆく。あとは本人の幸せだけ! 憧れの“父と娘のダンス”は踊れるか!?
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敵キャラ役のアナ・チャンセラーもクリスティーナ・コールも、コンジョ悪に徹している。観客全員「こんな奴不幸になっちゃえ!」って思うことウケアイ。安心して嫌いになろう!

*2003年10月号*

『NOVO/ノボ』/【MEMORY】/5分間しか記憶が残らない男を好きになってしまったら、どんな恋をする?

短期記憶を長期記憶に移す機能に不備を生じる「前向性健忘」の男を描いた映画『メメント』では、主人公は怒りと憎しみに突き動かされていた。この『NOVO/ノボ』で語られるのは、同じ症状だけど恋愛物語。ベッドをともにしてもすぐ忘れるから、いつでも初めてだから、惰性なんてない恋愛が可能だ。でも自分を憶えていてもくれない。悲しいぞ。
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「NOVO」とはこの映画の造語で「新しい人間」の意味。記憶を維持することが出来なくても“大人として立派”な行動がとれる人、を指す言葉です。貴方はNOVOでいられる?

『死ぬまでにしたい10のこと』/【LIFE】/この世界から自分だけがいなくなる その仕度を、悔いなく万端にしよう

このタイトルは暗喩なんかではない。主人公のアンは23歳にしてあと2カ月の命と宣告されるのだ。で、「したいこと」をノートに10項目書き出す。自分がいなくなった後の娘たちを思い、生き続けていたら出来たであろう可能性を思い、残された時間をそれに費やす。これは普通の、しかし人生の最後を自分で制御した女性の、生きざまを描いた物語です。
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原題を“my life without me”っていうとおり、映画のラストでは主人公だけがいない、いつも通りの生活が、世界が描かれるよ。それは余りにも普通の風景で、余りにも切ない。


*2003年9月号*

『青春ばかちん料理塾』/【MORNING MUSUME。】/後藤真希とメル友になるなんて、武田鉄矢羨ましすぎ!!

ごっちんの初主演映画にはゲストがいっぱい。グッチ裕三が歌い踊り、谷啓はガチョーンを披露する。モー娘。を卒業した保田圭も元太陽とシスコムーンの稲葉貴子も登場するよ。ゲスト各自が持ちネタで笑かしながらラストは感動させて大団円。これって日本人ならみんな大好き「吉本新喜劇」のパタンだ。万人に受け入れられる所以だ。
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併映は石川梨華・藤本美貴ダブル主演の『17才 旅立ちのふたり』。映画出演三作目の石川梨華が里親に預けられながらもまっすぐ素直に育った女子高生を好演してるぞ!


『フリーダ』/【EYEBROW】/つながり眉毛のヒロインの人生にあなたの目は釘づけとなる
本映画のヒロイン、フリーダがスクリィンのどこに映り込んでも、貴方の目を捉えて放すまい。なんと、眉毛がつながってて一文字なのだ! このインパクトは『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』のほくろ男を超える。史実ぢゃなかったらとっても卑怯な技だよね(笑)。感動的なストーリィを空前絶後の映像でお送りするぞ。
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実在したメキシコの女流画家、フリーダ・カーロの波乱万丈な生涯が描かれる。人生上の事件が、色濃く作品に影を落としているよ。観終わるとフリーダの絵が見たくなる。


*2003年8月号*

『テハンノで売春していてバラバラ殺人にあった女子高生、まだテハンノにいる』/【INDIES】/このタイトルの超絶さたるや、必ず映画史に残る!

チョー長い、このタイトルでドキュメンタリィ映画だったらすごく怖い(笑)けれど、大丈夫! 英題は“TeenageHooker Became Killing Machine in DaeHakRoh”っていうのだ。「バラバラ殺人に遭った後で縫い合わせてもらってサイボーグとなり、殺人マッシーンとして復活し復讐する話」だって判るでしょう? 安心して観よう!
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デジタルビデオカメラで撮られた60分のこの韓国映画は、エロスとヴァイオレンスを縦糸に、超絶展開と超絶アイテムが織り込まれた、まさに王道のインディーズ映画だ!


*2003年7月号*

『ニューヨーク 最後の日々』/【WORKAHOLIC】/業界人の忙しい日常 憔悴しきってても働くぞ!

原題は“People I Know”で、意訳すると『人脈』って感じかな。企画したパーティを成功させるために、今までの仕事で培ってきた人脈を駆使して、著名人に出席してくれるよう電話をかけまくる。トラブルを解決してあげる。ひとつのイヴェントを成功させるためにこんなにも精力的に働いてちゃ体がもたないよ! 業界人って大変だ。
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榊原郁恵も歌っていた美男子の代名詞、アル・パチーノが老いてなお精力的、でもくたびれ果てている業界人を演じます。若い女性とラヴくならなかったのはリアリズムだ。


*2003年6月号*

『セプテンバー11』/【FACT】/エンタテインメントな映画を観て、あの事件を忘れない

たまたま面白い映画を観に行ったら、よく知っている「9月11日に世界貿易センタビルに飛行機が突っ込んだ」あの事件が出てきた、とゆうノリで楽しむのが正しい鑑賞法です。問題意識だのポリシィだのなんて必要ない。11人の監督たちは、9月11日を人の記憶に留めるために、何回でも観返したくなるような面白い映画を作ったんだから。
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これは映画監督のカタログだ。同じ9月11日をモチーフに11分9秒の短編フィルムを作っても監督によってこんなに違う。貴方好みの切り口が、きっとこの中にある。


*2003年5月号*

『エニグマ』/【PUZZLE】/ナチスの暗号はこーやって解こう!

エニグマっていうのはナチスドイツの暗号作成マシーンの名前。『U-571』ではアメリカ軍とドイツの潜水艦がこれを取り合っていたけど、たとえ機械が手に入ってもダイアル設定が判らないと暗号は解けません。そこでイギリスの「対ナチス暗号解読センター」の出番だ! チョー頭のいい数学者と、当時のコンピュータ“ボンブ”を駆使して、解くべし!!
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女性の失踪事件の蔭には上層部が隠したがるある秘密が! 今(!)も昔も、戦争の裏側ってこんなもんなんだよね…。暗号解読が純粋に知恵比べならどんなに幸せだったか。


*2003年4月号*

『リベリオン』/【FUTURE】/これが未来の管理社会を生きる道!

『マイノリティ・リポート』が気に入った人に、今度はこんな未来予想図はどう? 舞台は第三次世界大戦後の世界、人民は感情を持つことを禁じられている。心を打つ文学作品も絵画も、みんな燃やされちゃう。ぎゃー。ペットも飼ってはいけないなんて、どうする?アイフル〜♪ 火刑を覚悟で隠し持つか、一切の感情を捨てて生きるか、君はどっち?
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主人公が操るのは究極の武術「銃の形=ガンカタ」! 拳銃を持った6人に取り囲まれても、素手で闘って勝っちゃうのだ。とっても日本テイストで、かっちょぶーだよ♪

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