Lagoon 妄想SS

<石板探索>

僕の名はナセル。
光の勇者として生まれ、修行している14歳。
近頃レイクリーランドの水が穢れた原因をつきとめるためアトランドの村から、このボロウの村に来た。
ボロウの村に住むのは金の髪で耳の尖ったエルフの人達。
村長さんが言うには近くのフィリップス城に魔物が徘徊する様になり
村人で帰ってこない人もいるそうだ。
フィリップス城に助けに行きたいが扉は堅く閉じられ
それを開けるには3つの石板を揃えなくてはいけない。
「1つは草原、1つは城、そして1つは誰かが…」
村の人々に聞いて回るが石板を持っている人はいなかった。
「村の外に出ちゃったのかな…」
他に聞き忘れないかきょろきょろしていると目が合った。
その人は村の人々と同じ金の髪で魔導師のような出で立ち。
そして、その瞳は赤と青だった。

 *

退屈な城を抜け出して同じ髪の色のエルフの村に来てぷらぷらしていたら茶色い髪の人間を見かけた。
俺より頭1つ小さいけど腰の物からして剣士か。
あ、目が合った。
「なっ!!」
なんという屈託ない笑顔!
ジジイとカタブツと能面とババア他にはない表情だぞ!
「こんにちは」
「お、おう」
「僕はナセルって言います」
ナセル、いい名前だな。
「ここら辺で石板をもっている人はいませんでしたか?」
「石板?」
懐を探って拾った石板を出す。
「あ」
どうやらビンゴのようだ。
これをあげればナセルは喜ぶだろう…が、それまでになる。
「あ、あのですね」
「ん?」
「この石板を3つ揃えないと村の人々を助けに行けないので…」
「3つ?今、いくつ見つかったんだ?」
「それで1つ目です」
何か力を持ってるとは思っていたがこれは部分か。
見ず知らずの者の前で喋り過ぎじゃないか、ナセル?
しかし、それはナイスだ。
「じゃ、これはやるよ」
「あ、ありがとうございます!」
受取るとまたあの笑顔。2度目でも効くな、これ。
「俺も暇だから探すの手伝ってやるよ」
「え?」
「俺、ソアって言うんだ」
「僕はナセルって言います」
「さっき聞いた」
「そうでした、ははは」
「俺達いい友達になれそうだな」

 *

「あった!あったよ、ソア!」
フィリップス城の外で3つ目の石板をナセルは見つけた。
これでナセルとの楽しいプチ旅行は終わる。
2つ目は探索の魔法でわかっていたが伸ばしに伸ばして2日近くたってから草原で俺が見つけた。
本当はもっと伸ばしたかったがナセルが不安そうになってきたので仕方なく。
楽しかったなぁ。
一緒に探して、一緒にご飯を食べ、一緒に寝た。
もう終わりかと思うと悲しさと共にふつふつと湧きあがる深い所の感情とあれが。
そしてボロウに着いた。旅行はここまでだ。
「よかったな、ナセル! 俺は用があるからこれまでだ、じゃあな」
石板の呪文を得たナセルに言って俺は去っていく。
「ソア!」
「ん?」
立ち止まり振り向く。
「またね!」
手を上げて笑顔でナセルが言う。
俺もそれに負けない様に
「おう!」
と答えた。
その後、村から離れた場所に転移した俺の前に大きな戦士が現れる。
「ソア様」
「バトラー…」
「城からいなくなるだけではなく隠遁し続け ぶわっお!!」
マックスまで湧きあがった怒りを込めて杖でバトラーをふっ飛ばした。
こいつが日に日に近付いてきたからナセルとの旅行を打ち上げる事になった。
こいつさえこなければもっとナセルと…
「何をするんですか、ソア様! ぐはぁぁ!!」
「死んどけ!!」
<ソアのペンダント探索>

「ない?!」
セネガルで休んでいてペンダントがない事に気付いた。
またナセルと会う為にボロウへ向ったが会えず失意のまま
ここまで来たが追い討ちの様な事が起こるなんて。
探索の魔法では引っ掛かりにくい物だから見つかる可能性は低い。
あのペンダントは無くしてはいけない気がして肌身離さず持っていたのに…
「一体、何処で…」
「ソア?」
「ナセル?」
「やっぱりソアだ。また会ったね!」
「ナセル…」
「どうしたのソア?」
俺はナセルにペンダントを無くした事を話した。
「と言うことはボロウかもしれないね」
「しかし道中かも…」
「とりあえずボロウまで行ってみるよ!」
「今からか?ナセルは何かする為にここに来たのだろ?」
「うん。ドワーフの洞窟を通りたいんだけど、岩があって入る事も出来ないんだ」
あの洞窟はババアがいたような…
「ボロウへ戻れば何か策があるかもしれないし。だからソアはここで探して待ってて!」
「あ、ナセル!」
言うがはやいかナセルは再びボロウへ向って行った。
「見つからないかもしれないのに…」
ナセルの心遣いが嬉しくもあり悲しくもあった。

 *

「見つけた!」
「え?」
「これでしょ、ペンダント」
ナセルがにっこりと渡してくれたペンダントはまさしくそれだった。
「何処でこれを…?」
「ボロウで拾ってくれてた人がいてさ あわぁあ?!」
思わず俺はナセルに抱きついた。
感謝をあらわす為に、流れた涙を隠す為に。
「ありがとう。ありがとうナセル」
「前に石板を一緒に探してくれたじゃないか」
ぽんぽんと背を優しく叩きながらナセルが言う。
やっぱりナセルは良い奴だ。
もう、いっそこのまま…

 *

「え、別にいいよ」
「ナセルはちゃんと見つけてくれた。礼として受取ってくれ」
ナセルは困った顔で手を振っている。
「そうか、では違う物で…例えば俺とか…」
「いいよ、いいよ!」
「そこまで断られると傷つくぞ?」
「ははは」
困った笑顔で笑うナセル。本気なんだけどな?
「この力の鏡は…あーしてこーして使うと岩をも吹き飛ばす力を秘めている」
「岩を?」
やっぱり食いついた。
ドワーフの洞窟の岩を退かすにはこれが必要だからな。
「じゃあそれを…」
「要らなかった」
「うっ…」
「じゃあ、1つ約束をしてくれ」
「何を?」
「また会ってくれ」
「いいよ」
「男の約束だぞ?」
「うん」
そして指切りをした。
この約束は守られることになる嬉しくない形で。
<ジークフリード城での再会>

「ナセルが光の勇者?俺が邪魔?俺の敵?」
「ソアが闇の皇子?僕の敵?」
「さぁこれでわかったでしょう、ソア様。あやつは敵なのです ぶわっお!!」
「なぁ、ナセル。俺が闇のミコならお前は、光の勇者は俺を殺すのか?」
「ソア…」
「答えてくれよ、ナセル」
「ソア様が出るまでもなくこの私がぁ!! ぐはぁぁ!!」
「答えろよ、ナセル!」
「ソア、僕は…」
「くっ!」
俺はもうそこに、ナセルの近くにいられなくて走り去った。
<最終決戦>


能面みたいに無表情だけど気のきく、デュマ

けばくてヒス気味だけど話し相手だった、エラ

融通効かない堅物だった、バトラー

利用する為とはいえ育ててくれた、ゼラー

みんな死んだ

殺したのは目の前のあいつ

どうして俺の物にならぬ

どうして友達の俺と戦う

どうして俺に剣を向ける



どうしてだ!ナセル!!



 *


「ソア!ソア!」
「…ナ、セ、ル」
呼ばれて目をあけるとナセルがいた。
「ソア!」
「俺は…」
「もう戻ったよ!いつものソアだよ!」
「そうか、じゃあ、もう終わりだな」
「なんで?!」
「それが…宿命…」
光の勇者に闇のミコが討たれるのがいい。
俺にナセルは討てない。
あとは消えて無くなるだけ。
ナセルが無事なら思い残す事は、ない。
「!」
「はっ?!」
ナセルの顔つきも厳しくなる。
邪神の奴、また復活し始めやがった。
ナセルはあいつを倒さなくてはいけない。
「ソア!体が!」
そろそろか…だがまだ俺は消えれない。
ナセルを無事、家に帰すためにも。
邪神以上にしつこいんだ、俺は。
だから、俺をナセルの力に!
「ソア!」

『あなたの中に見える光の力は闇を求めています』

『光と闇は本来離れてはならないもの』

なら、叶えろ!精霊でも神でも誰でもいいから!


 *

『奇跡が起こったんだよ』
「そういうものなの?」
『あぁそうしとこう、今は』
「そうだね」
『じゃあ、ぶっ倒しにいこうぜ』
「うん」
『俺とお前なら楽勝だぜ』
「うん!」
<この世に平和は戻った>

邪神をムーンブレイドで貫いてから気付けば僕はラグーン城を見上げていた。
『やったな、ナセル!』
胸元にかかるペンダントから声がする。
「うん」
『これで平和が戻ったな…』
「そうだね、ソア」
ソアは消滅間際、聖域の力かなにかを使ってペンダントに入った。
不思議な感じだけどソアは平然としてる。さすが、ソア。
『これからどうする?』
「アトランドへ戻るよ」
『それじゃあ、その後…』
「勇者様!」
後ろから声をかけられた。振り向くとそこにはフェリシア王女がいた。
「王女様」
『…』
「邪神をとうとう倒したのですね、勇者様!わたし心配で胸も裂けんばかりでした」
「そうですか、それは心配をおかけしました」
やっぱり王女様は高貴過ぎてか苦手だ。
「邪神復活を目論んだゼラーや闇の皇子も消えて、これでレイクリーランドも平和になりますわ!」
『…』
ちらっとペンダントを見るとプルプル震えている。
ソア、我慢。我慢だよ、ソア。いるのがわかるといろいろ困るからね。
「じゃあ、僕はこれで」
「お待ちになって、勇者様」
王女様が腕を掴んでとめた。
「なんですか?」
「勇者様が行く所はあそこですわ」
王女様が指差す方向にはラグーン城。
もうお城に用はないんだけどなぁ?
「父と母が待っております、さ、はやく行きましょう」
「ちょ、ちょっと待ってください!何故僕がお城に行くんですか?」
「それは決まってますわ。勇者様は次期国王なのですから!」
「なんで?!」
『・・・?!』
「それは…」
王女様は頬に手を当ててくねくねしはじめた。
「救国の勇者様と王族の私が結ばれれば国も安泰。そしていずれ、わたしは王妃で勇者様が王に」
「いや、あの、その…」
「さ、行きましょう!」
『…離れろ』
「?なにか言いまして?」
あぁソアが何故かとうとう耐えられなくなった!
『離れろ、馬鹿女』
「…勇者様の声じゃないですわね?」
「ええっとですね…」
『ここだ、馬鹿女』
「きゃ?!ペンダント?」
『そうだよ、馬鹿女』
「なんですの、勇者様これは?」
「ソアです」
もう言い逃れが出来ないから正直に言った。
「ソア?・・・ソアとはあの闇の皇子の?」
「そうです」
「闇の皇子は勇者様が討ち倒したのでは?」
「そうですが、いろいろあって…」
『お前には関係ない』
ソア、ざっくりし過ぎ。
「そんな不吉な物、勇者様壊すべきです!」
『何言いやがる、このアマ?!』
「ソア、言い過ぎ。でも、王女様、これは壊せません」
「何故です?闇の皇子ですよ?悪しき物ですよ?」
「ソアは悪くありません。ただ闇の皇子なだけです、こんな形ですが」
『ナセル…』
「勇者様は魅入られているのです!そのような物に未来を奪われてはいけません!」
「別に不自由しない様ですが?」
「いいえ、それは勇者様を不幸にします!」
凛とした威厳のある雰囲気で王女様が言う。
勢いだけで負けて納得してしまいそうになる。
「わたしなら勇者様と共に歩んで行けます」
『俺だって一緒に行けるぞ』
「悲しみも喜びも分かち合え、そして勇者様の子を生せます!」
『…ぐっ』
まだ子供とかはわからないが、なんでソアが悔しがる?仕方ない事は流そうよ。
「さぁ、闇の皇子、あなたも勇者様を思うならここは引き下がりなさい」
王女様が胸元のペンダントに向って微笑む。なんか怖い。
『…』
「城に戻ったら、あなたには安らかな眠りを約束しますわ」
『できるか…』
「何を言いまして?」
『そんなことできるか』
「ご安心なさい、宮廷魔導師たちならうまくやってくれますわ」
『そんなことできるかーーーーー!!』
ソアの大声が森に響いた。
そして、ペンダントから光が溢れて、
光の中から金の髪、白い肌、青い右の瞳、赤い左の瞳のソアが僕の前に現れた。
「な、な、な!」
王女様が腰を抜かして、仁王立ちのソアを見てぱくぱくとしている。
「ソ、ソア!」
「お、ナセル。…ん?」
ソラはきょろきょろしたり手や足を確認した。
「ソア、はい!」
僕はマントを外してソアに差し出した。
「あ、すまね」
ソアは受取るとマントを羽織った。
「ソア、どうやって?」
「奇跡が起こったんだよ」
僕の質問ににかっとソアは笑って言った。
「でも…女の…」
そう、裸で現れたソアは女の人の体だったのだ。
「元から俺は女だぞ?」
「えーーーーーー?!」
僕の驚愕にソアはむっとして近寄ってきた。
「ちょっと待て、今まで俺をなんだと思っていたんだ?」
「だって、俺って言ってるし、闇の皇子だし…」
言葉遣いとか、荒っぽさとか…
「それだ」
ぴしっと指を僕に指すソア。
「何?」
「闇の”皇子”って、俺は闇の”巫女”だぞ?」
「ゑ?」
「俺が男だと、俺もジジイ達も言ってないぞ?」
そう言えば…
「見てくれがこれだから間違えられるのも仕方がないと思うけどよ」
頭をかきながらソアが言う。
「ソアはかっこ…綺麗だよ!美剣士って言われてたぐらいじゃないか!」
「杖持ってるし、美剣士は男への褒め言葉じゃね?」
あぁいじけてしまった。ここは褒めなきゃ!
「綺麗だよ、ソアは!仕草や言葉遣いが男っぽいだけで!」
「あ、う…」
「あ、あれ〜?」
ソアは何故かへたり込んでしまった。
「あのぅ…」
恐る恐る王女様が話しかけてきた。
「はい?」
「わ、わたしは…」
「てめぇ!まだいやがったか!!」
ソア、見えてる見えてる!
「ひぃ!!」
あぁ王女様がもう恐怖で酷い顔に。それ以上に怖いソアの顔もあるけど。
「王女様、もう王様の所へお戻り下さい。僕達は村へ帰りますので」
王女様はなにか言いかけたが後ろのソアを見て黙ってかくかくと肯くだけだった。
お供の人が向うにいるからたぶん大丈夫だろう。
「それでは。王女様、お元気で」
ぺこりと挨拶をしてこれまた何かを言いた気なソアを引っ張ってその場から離れた。
 
 *

王女様と別れてから数時間。
僕はソアと歩いている。
ソアは服をどこからともなく取り寄せて今はいつもの姿になっている。
けど…
「ソア、歩き辛いよ」
「ナセルは我侭だなぁ」
身長差があるので腕組みは拒んだら手を繋ぐ事になったのだけど
ソアが機嫌良く腕を振るので僕は振り回されていたのだ。
「じゃあ、お姉ちゃんがおんぶしてあげようか?」
「いいよ」
さっきまでどっちが兄か姉かとソア独りで盛りあがっていたので今はソアが姉さんになってるようだ。
「じゃあ、お兄ちゃん、おんぶ!」
「えぇ〜」
僕より大きいソアを背に乗せるのは、と正直に思った。
「お兄ちゃん酷〜い。そんなことしてるとお嫁さんに愛想尽かされるよ?」
背後から覆い被さりながらソアが言う。
「うん、お嫁さんには優しくするようにするよ」
「じゃあ、優しくする為におんぶ」
「妹はお嫁さんじゃないし。妹はお嫁さんになれないよ?」
「え?お姉さんは?」
素早く前に移動して真剣な顔で聞いてくる。そんなに重要?
「お姉さんも」
「なんで?!」
「兄弟は結婚できないの」
追々ソアには社会常識を教えていかないといけないなぁ
「じゃあ、ナセルと俺は兄弟じゃない、夫婦だ!これで決定!」
「あっさり戻ったね」
「ああ俺はナセルと一緒にいれればいいだけだからな!」
にかっと笑ったソアにつられて僕も笑った。