耕太郎と唯

耕太郎と唯 3

スレ 男装少女萌え【11】
No >>360〜>>362
日時 2013/05/06(月) 13:55:54
本文
「じゃあ、唯君も進学という事でっと」
冬がそろそろやってくる時期。
私は職員室で三者面談という名の二者面談を受けている。
本来なら父が来るべきところだが
さして大した事をするわけではないので言ってもいない。
目の前で進学就職問診票に記入している
入学した時から担任の栄先生も慣れているので指摘もなかった。
「みんな進学だから卒業式はやっぱり学生服かしら」
「去年もそうでしたね」
豊松小学校、豊松中学校は制服がない為なのか
ほとんどが進学する事になる水木高校の制服を着て卒業式に出る。
「唯君は…そのまま?」
「式服に相応しい物を着る予定です」
栄先生の言わんとする事はわかる。
入学以来着物(和装)で通している私。
普段着ですら洋装をした事はない。
セーラー服を着て出ても支障は無いが…騒然とするだろうな。
「少し残念。見てみたかったなぁ、唯君の制服姿」
「御期待に沿えずすみません。替わりは耕太郎達ので」
「そうねぇ、耕太郎君はどんなの着るか楽しみねぇ。ブレザーかな?」
にこにこと票をまとめながら栄先生は気になる事を言った。
ブレザー?水高は詰襟の学生服とセーラー服のはず。
「先生」
「な〜に〜?」
「耕太郎がブレザーというのはどういう事ですか?」
「え?」
栄先生の笑顔が固まった。おかしい。
「耕太郎は水高じゃないんですか?」
「え…っと…」
「耕太郎は何処へ行くんですか?」
「そ、それは…」
手に持っていた票を後ろに隠そうとする先生。やはり何かある!
「耕太郎の行き先を教えてくれませんか?」
「えっとね、唯君、落ちついてね。目怖いよ?」
「落ちついてますよ。先生こそ何を焦ってらっしゃるのです?」
「ひぇー」


「10年か…」
もうそろそろこの豊松村に来て10年になる。
小学校の時から通い慣れた薄暗いこの路を1人で歩いている。
いつもなら一緒にいる奴は三者面談で今日はいない。
だから少し感傷的になってるのかもしれない。
「言わなきゃな…」
「何をです?」
声がした方を見る。
街路灯の下からこっちに向ってくる着物姿。
「唯か、びっくりさせるなよ」
「それはこちらの台詞です」
いつもの微笑顔ではなく、怒っている顔だ。
どちらにせよ綺麗な顔立ちなのは変わらない。腹立たしい。
「何が?」
「栄先生に聞きました。高校に行かないと」
栄ちゃん、あれ程黙っててと言ったのに何でばらしちゃうかなぁ
「いや、高校は行くよ?」
「え?そうなんですか?」
きょっとんとした顔になってるぞ、唯。珍しいな。
「水高には行かないけど」
「それじゃあ何処へ行くんですか!!」
怖い怖い。
「俺、あっちに行くんだ」
「あっちって?」
「親のところ」
「どうして?!」
「春から爺さんが入院するだろ?」
唯が肯く。
爺さんは肺を患っていて暖かくなる春に手術をする事になっている。
本当は今年の夏にする予定だったのだが諸事情で延期したのだ。
因みにその諸事情に唯も絡んでたりする。
「そうすると、だ。婆さんは爺さんの世話をするから町に行く。
 俺はここから学校に通う。
 1人でなんとかするって言ったんだが信用されてないのか
 婆さんは町とここを往復すると言って譲らない」
「耕太郎は生活能力ないもんね」
「悪かったな。で、うちの親が出てくる。こっちに戻ってこいと」
「耕太郎の御両親の仕事は?」
「継続中」
「じゃあ耕太郎の世話はできないんじゃあ?」
「寮か下宿に入れるらしい。とことん放任な親らしくて堪らないよ、ほんと」
昔ならともかく、今は親と一緒じゃなくても寂しくもなんともない。ほんとだぞ。
少し考えてから、ぽんと唯は手を打つ。
「私の家から通えば良い!そうしよう!」
「さすがに厄介になれないぞ。前みたいに泊まるとは違うし」
「気にする事はない。耕太郎は家のものも歓迎するぞ」
「俺が気にする」
「私は気にしない!」
唯が俺の両腕を異常に強い力で掴む。
それに比例するように見つめる瞳も強い。
「唯…もう決めたんだ…」
「…私を捨てるのか」
掴んだまま頭を垂れた唯が言う。
「捨てるって…仕方ないだろう、俺だってここに居たいけど…」
「なら居ろよ!居てくれよ!そうしろよ!」
唯は涙を流しながらも強い瞳を向ける。
それに俺は見つめる事だけしかできない。
返事がないのを返事と取った唯は両の手で胸を押して離れた。
「私は…私は、行かせないからな!」
俺はそう言って走り去っていく唯の後姿にも声をかけれなかった。



気が付けば家の門の前にいた。
「唯様、お帰りなさいませ」
「ああ」
家人の雀が出迎えてくれたがぞんざいな返事をする。
それをどう察したのか背後から続けて言ってくる。
「御当主が来ております」
「父上が…」
ふと頭に案が閃いた。
それと同時に父のいる奥間へ向う。
いつもなら挨拶程度で話をする事はない。
しかし今日は違う。
私は諦めない。
耕太郎がいなくならない為ならなんでもする。
どのような手段を使い、どのような対価を払おうとも。

「父上、お話があります」


<つづく>







解説 中学パート。
高校入学前編の前編。
特にこの前後編はSSにする時にいろいろ変更した。
唯の父の登場は削除。
円喜の家人とか円喜関係も
耕太郎のお泊まりの話も出せれば少しは良かったかもしれないが長いしなぁ。