耕太郎と唯
耕太郎と唯 2
| スレ | 男装少女萌え【11】 |
| No | >>350〜>>353 |
| 日時 | 2013/04/16(火) 22:15:32 |
| 本文 | 「耕ちゃんは板担いで敏さんの手伝いしてたよ」 「あぁ円喜のぉ。耕太郎は荷運んだら滝へ行くとか言うてたで」 「耕太郎に会うんなら、これを持ってけ」 「兄ちゃんに貰って食べてる!」 江藤耕太郎は好かれやすい。 老若男女、犬猫などの畜生にも好かれる。 後々わかったが家のものにも好かれるようでこれは天性のものなのだろう。 私には無いもので羨ましくもあるが 気遣ってか輪の中に私を導く耕太郎に恩義こそ感じても恨みはしない。 と決めてはいるのだが 私のいない所で遊んでいたり、私以外と笑っていると なにやら臓腑がムカムカしたりする。 この様な不具合を起こしているようでは 母上は既にない今、作法そして儀式の修得はより一層難儀になって この先はどうなる事かと思案する。 しかしそれも耕太郎と会う事で霧消する。 そして今日は日曜日で一日中一緒にいる事ができる。 「…はずなのに、もぅ夕刻前。いったい耕太郎はどこに?」 朝から村の方々を回って耕太郎の足跡を追っていたが結局今まで見つからない。 別邸に戻る為に川岸を歩いていると橋の下に探していた耕太郎を見つけた。 「見つけた」 何故、村中の手伝い行脚をしていたのか。 何故、私に一言言ってくれない。 何故、私と一緒に居てくれない。 そう恨み言でも言ってやろうと耕太郎に近付いていく私の笑みが 耕太郎の姿を見て無くなった。 耕太郎はまた泣いている。 |
| そうだ、あの時だ。 3年生の時、耕太郎は父母が来るのを待っていた。 あの時の耕太郎の隠しきれない喜び様は忘れない。 うまく出来た泥団子を縁の下から持ってきて あれ程嫌がった靴下もしっかりと履いて待ってた。 私は耕太郎の嬉しさが嬉しくて我が事のように嬉しくて。 そして仕事の都合上来れなかった事を知っても 「父ちゃん、母ちゃん来れないってさ。急な仕事だって」 「え?」 「大人は大変だなぁ」 「耕太郎はそれでいいの?悔しくないの?」 「悔しくは…まぁ…ちゃんと…俺が…」 「耕太郎…」 「なんで、唯が泣いてるんだよ!」 「え?」 「ほら、ハンカチ!今日は持ってるんだ、ほら!」 「ハンカチまで…」 「せっかく婆ちゃんがアイロンかけてくれたんだ、使わないとな!」 「そうだね…」 「じゃあ!俺、行くところあるから!明日な!」 「耕太郎!」 あの後、耕太郎を探して、 そして、ここで蹲って泣いてる耕太郎を初めて見たんだ。 |
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| * 今日みたいな時はたまに来る、橋の下。 橋といっても小川の上にかかる小さな橋。 気付けば日も暮れかかっている。 顔をタオルで拭いて家に帰る為に腰を上げ橋の下から出る。 「やっと出てきた」 橋の上から声がする。 見ると欄干に座った着物姿が1人。 こんな姿なのは奴しかいない。 「唯か。どうした?」 「どうしたもないよっと」 すっと欄干から唯は俺の横に着地する。 毎度毎度ながらこの優男は何故にこうも音も無く動けるのやら。 「今日はいろんな所をほっつき歩いて」 「ほっつき歩くって…用があったんだよ、いろいろと」 この様子だと今日の場所を回ったと判ったのでそっぽを向く事にした。 「色男はいいですな!」 どうもそれが癪に障ったのか唯は扇子で鳩尾を思いっきり突きやがった。 「うっ…なにしやがる…」 「今日の私の手間賃です」 体ごと横を向いて腕組みつつむっとした顔で唯はそっぽを向いている。 「こっちは駄賃も貰ってないのに…」 腹を擦りながら言ってみる。まぁ今日の仕事は無報酬で構わないのだが。 「おっと。そんな貴方にお駄賃替わりに…はい」 何かに気付いて懐から唯が取り出して俺に差し向けた。 「きゅうり?」 「そ、きゅうり」 「なんで?」 「飯野さんが持ってけと」 「あぁそういう事ね」 飯野さんは10歳上のハウス農家の人。 ごっついけど良い人。ちなみに新婚さんで実果ちゃんが可愛い。 「また他の女に現抜かしてますなぁ」 「他の女って。実果ちゃん可愛いだろ?」 「まぁあんな年端もいかん娘子にもう毒牙を?」 扇子を開いて口もとを隠しながら目を見開いて言うな。 「8ヶ月の赤ん坊だぞ?冗談でも飯野さんに殺されるわ!」 「はっはっはっ。一度痛い目遭うといいですわ」 「実果ちゃんが男の子でも赤ん坊は可愛いけどな」 「ほう…男の子でも…」 なんで目を細める。 「女でも男でも耕太郎さんは見境なしですなぁ」 「人聞きの悪い事言うな」 「そうなら…」 唯は言うが早いか両の腕を俺の首に巻付かせて抱きついてきた。 「なんなら私が相手しましょうか?」 耳元で唯が囁く。 突然の事に驚くと共に唯のうなじから白粉のような匂いが鼻を擽る。 「…泣くなら胸も貸しますよ?」 |
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| * 耕太郎に私は抱き着いている。 この感触はすごく久し振り。 小学生の低学年ならまだしも来年は高校生になる歳。 恋人同士でもないとなかなかできない行為。 いっそ本当の事を言ってそんな関係になりたいがまだ時期尚早。 幸か不幸か耕太郎にはそんな女はいないし 周囲に好意は持っていても恋愛感情らしきものを持っている女はいないようだ。 私には耕太郎がいるように耕太郎には私がいればいいんだ。 そうすれば万事円くおさまる。 「唯…俺な…」 「なんです?」 もしかしてと淡い期待をしてしまう。 思わず抱きしめる力が増す。 「俺…苦しい…」 「え?」 耕太郎の首から離れて相対する。 「お前、絞め過ぎだ」 「あ、すみませんな。ちょいと思わず頚動脈を」 「落とす気か!クラクラしそうだったぞ」 違う意味で落としたいしクラクラさせたい気はありますが。 「高校では武道が体育であるらしいからその時にでも」 「お前と組手とかはしないようにしよう…まぁ出来ないが」 「必修だって」 来年の為に村から通える唯一の高校は下調べでは柔道、剣道、合気道の選択。 合気道なら一緒にやれるんだけど、耕太郎は乗り気じゃないようだ。 「ま、考えても仕方ないか」 「投げる時は痛くしないから」 「は。そうじゃねーよ。でも…」 「でも?」 「なんでもない」 「今から実地で投げようか?」 体で答えてもらう為、そっと位置取りをする。 どうやらそれに気付いた耕太郎は手を上げて降参のポーズをとった。 「わかった、わかった」 「素直は美徳ですよ」 「まぁ来年、学ランやセーラー服があってもお前はその恰好だな」 「あ、そういう…」 納得といった顔を作ったがセーラー服が着てみたかったり。 「いいんだよ。俺は俺だし。お前はお前だ」 「なんだかわかったような言い回しですね」 「俺も…少し大人になったってやつさ」 「あ、かっこつけてる」 指摘が図星か耕太郎の顔が少し赤くなった。 「きゅうりを温かくしちゃう奴に言われた〜」 「早く会えれば良かったんですよ」 「それに…」 耕太郎がきゅうりを鼻先に持っていって嗅ぐ。 「なんかこのきゅうり、匂う。お前の首んとこと同じで」 「!!」 怒りと恥ずかしさを糧に耕太郎を2度投げて帰りました。 耕太郎?次の日は首を固定して登校してきましたよ。 でも、本当はこの時に耕太郎の言いたかった事を聞いていれば 後々面倒な事にならなかったはずだと今でも後悔している。 |
| 解説 | 中学パート。 中学3年編は耕太郎が円喜家にお泊りしたり高校進学で悩んだり。 「耕太郎、大いに悩む」と題名付けようかと思ったぐらい。 |