耕太郎と唯

耕太郎と唯 1

スレ 男装少女萌え【11】
No >>348〜>>349
日時 2013/04/16(火) 22:04:17
本文
他と違っている事を嫌う。
変だと思われる事を嫌う。
差異の大小はあれど嫌う。

子供の俺にとってそれは大きな事だった。


6歳の時に両親の仕事の都合で祖父母に俺、江藤耕太郎は預けられた。
祖父母の住むここは山間の面積は広いが人は少ないよくある村。
そして春に村の唯一の学校に入学する事になった。
子供の数より大人の方が多かった小中併設校ではあったが
今年は俺も含めて6人の大人数の入学で
体育館に素晴らしく飾り立てをしたと後に聞いた。
そんな飾られた場所の前で俺は円喜唯と出会った。

体育館に入る前から俺はいい機嫌ではなかった。
中では在校生と教師や父母が待っている。
そこへ今から俺たち新入生は並んで入っていく、のだが…
「大…洋服、洋…洋服、南ちゃん…洋服、海ちゃん…洋服」
前を見るとみんな洋服。
そして自分の着ているのは七五三の衣装を寸を合わせた和服。
たまにみんなが振りかえってこっち見るし。
「なして婆ちゃん洋服じゃないん…」
涙は我慢したが凹む。
「はーい。みんな並んで入っていくからねぇ。
 大君と南ちゃん、洋君と海ちゃん、耕太郎君と唯君」
「?」
女の先生がなんか言った。
「俺と誰って?」
「私」
声がして横を見るといつの間にか誰かが立っていた。
俺と同じ和服を着たのが立ってこっちを見ていた。
誰かは知らない。見た事はない。
でも無性に俺の機嫌は良くなっていった。
「俺、江藤耕太郎!」
「私…私は円喜唯」
今思えば唯は紋付羽織すらしていた立派な正装で
俺のは着れる程度の恰好だったけど
その当時の俺にはそんな事もわからないし
なにより1人ではない事に上機嫌で笑って唯の手を握って歩いて行ったと思う。



他と違っている事を好む。
異だと思われる事を好む。
差異の大小はあれど好む。

子供の私にとってそれは大きな事だった。


円喜の家に生まれた私は物心つく前から儀式に係わり
小学校へ入る頃には家の作法を覚えるのに必死だった。
だから住まいが離れた村の別邸になっても
俗世の小学校に入る事になっても
何も変わる事無くやるべき事を淡々とこなすだけだった。
江藤耕太郎に会うまでは。

正装をしているはずだが、どうにも前から見られる。
少し前にいる男はさっきから落ちつきがない。
やはり俗世は理解できない。
「はーい。みんな並んで入っていくからねぇ。
 大君と南ちゃん、洋君と海ちゃん、耕太郎君と唯君」
やっと中に入るようだ。早く式を終わらせて家に戻りたい。
「俺と誰って?」
耕太郎と言われた男が不思議がっている。
少し後ろにいたから気付かなかったのか?
「私」
仕方ないので声をかけてやる。
何を呆けているのだ?
「俺、江藤耕太郎!」
なんだその笑顔は?さっきまでと違うではないか!
「私…私は円喜唯」
しまった、動揺したか。
「行こ!」
誰が手を繋ぐと!他の者はしてないではないか!
腕をそんなに振るな裾が傷む!
今思えば耕太郎は自分と同じ恰好をした私が嬉しかったのだと判る。
そして私は耕太郎という架け橋によって俗世に入って行けれたのだと思う。
それが良かった事かどうだかはわからない。
しかし、耕太郎と会える事での事象なら良かったと思う。







解説 ちんまいの江藤智の両親の話。
元々は智が武智を連れて実家へ行った時に聴かされた回想話(編)を
削って削って小学校パートだけをSSにした。
削り過ぎてとっても説明不足。
シチュエーションだけではいかんと反省。