素直クール
仮称)椿舞と武智 10
スレ | 素直クールでエロパロPART14 |
No | >>479〜>>481 |
日時 | 2010/12/28(火) 02:43:22 |
本文 | 12月になってから とある雑居ビルの最上階に住む椿智こと江藤智は作業で大忙し。 それは生業としている執筆作業ではなく 今月下旬にある中東生まれの誰かさんの生誕祭の準備。 別に智が敬虔な教徒なわけではなく 単にクリスマスの名を借りたお祭りがしたいだけである。 そう、したいだけである。 |
「これで後は飾り付けだけかな…」 智はリストを取り出し見ながら考える。 そのリストは何度も折り曲げたりしている為かへたっており 紙面には料理、装飾、贈物、他の項目から詳細が書かれており そこに日付とかが書きこまれている。 「料理は…配達物は届いたな…ケーキもさっき来たし… 煮込みとかは味確認もしたし…後は盛りつけぐらいか」 炊事場の場所にはいろいろな料理が所狭しと準備されており 食器の横には紙箱に入れられたケーキが鎮座している。 「アルコール類はあれだけで充分だろう。一応酒以外も用意はしてあるしな」 冷蔵庫の横には何人呼ぶ気なのか分らない量のボトル等が置いてある。 「あ、衣装、衣装」 気付いてとてとてと智は衣装室兼荷物部屋に向かう。 そこには茶色いトナカイの着ぐるみ等が掛けてある。 それを触りながら智は呟く。 「仮縫いが手間取ったが…なんとか完成できて良かった…」 計画から布などの素材入手から仮縫いまでは早く出来たのだがいろいろあって遅れに遅れた。 そこから徹夜を重ねて完成にこぎつけたので感慨深い。 「これも時間がかかったな…」 智は足下のダンボール箱を持ち上げて運び出す。 中にあるのは大量の折り紙で出来た鎖。 まるで子供のクリスマス会をやるような物を智は愛おしいように抱えていた。 部屋の壁に計画通り折り紙の鎖は飾り付けられた。 智は脚立に座りながらその出来を確認する。 「ふむ、こんなバランスかな。我ながら上出来。あの時は上手く出来なかったな…成長するものだ」 夜、寝る前に少しずつ作っていた鎖。 その度に昔を思い出す。 頑張って作った物を頑張って飾った幼い時の自分。 ケーキを置いて待っていた自分。 「…」 智は脚立を降りてテーブルからジェルジェムセット(ガラスに付けれる装飾品)を取り それを窓ガラスに貼り始める。 絵柄はツリー、スノーマン、トナカイとソリ、そしてサンタ。 「…いい子にはサンタさんが来る。 トナカイがいればサンタは乗ってくれる…」 乗るのはソリ。 |
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目が覚めるともう夜だった。 作業完了で少し横になったつもりだったがしっかりと寝てしまったようだ。 横には飾り付けたLEDが点滅するツリー。 急いで買ってきたクラッカーがテーブルの上に置いてある。 時間を見るとそろそろ来てもいい時間。 携帯電話を確認したが幸い来た様子はない。 「風呂に入って着替えておくか」 もし入浴中に来たらそれはそれで…と思いながら智は浴室に向った。 日は沈み夜の帳も落ちた頃。 念入りな入浴から身支度まで済ましてから智は長くソファーに座っている。 トナカイの着ぐるみの着心地は悪くない出来だった。 しかしそれはクリスマスを祝う為であって寝巻きではない。 先程から何度も確認しているがメールも電話もない。 部屋の灯りは消してあるので 外からの光以外は電化製品のそれとツリーの電飾と変化のない携帯電話のディスプレーしかない。 暗がりの中、智は思う。 来ないかもしれない。 いい子ではない自分にはサンタも誰も来ない。 今も昔も変わらないクリスマス。 武智くんは編集者の職務を全うしているだけ… 何を思い上がったか、こんな準備までして… 「ふ。独りで過してきたのにな、なにをいまさら…なにを…」 下を見ている智の眼鏡に水滴が溜まる。 智は眼鏡を拭いてから立ち上がる。 「…片付けよう」 ピンポーン 「!!」 江藤智、初めてのクリスマス会の始まりである。 |
解説 | タイトルは「クリスマスの罠 -T」 椿視点。 椿の両親まで出来あがったのでせっかくだから作った。 でも気が緩んだのかシーズン内に続きをアップできず… |