素直クール

仮称)椿舞と武智 1

スレ 素直クールでエロパロPART14
No >>220〜
日時 2010/10/22(金) 03:19:47
本文 「武智。武智〜」
「はい?」
武智と呼ばれた男は呼んだ者のいる机の前に向う。
机の前に立つ男の名は武智公保(たけちきみやす)。
185cmぐらいある長身だが糸目で穏やかな風貌をしている。
性分もそれに反せず穏やかというかそんな感じである。
「今、暇か?」
呼んだ者は上目遣いで問うた。
呼んだ者は編集長と呼ばれる役職の者であり
黒いスーツを着て長い黒髪を後ろで軽く縛っている。
クールな印象を抱かせる美女である。
「暇、ではないですね。何かありましたか?」
暇ではないが融通の効く仕事なので武智は聞いてみた。
「あぁ。ちょっと出て欲しいのだが」
「何処へでしょう?」
「駅の南口。そこで1人拾ってきて欲しい」
「拾う?」
武智の眉が動く。
(人を拾ってこいとは犬猫みたいな例えだ)
「ち…いや、椿舞先生を知ってるよな?」
「ええ、御名前と作品なら」
「顔は?」
「知りません。確か写真は載せてないような気がしましたが」
覆面作家というわけではなかったような記憶はある。
(しかし女性だという話は聞いたことがあるな)
「そうか…確か、ここら辺に…ん、これだ」
編集長は了解して、引出しを探して一枚の写真を武智に差し出した。
「どうも。…んー?」
武智は出された写真を見て思った。
(これで表に出ないのは何の理由があるのだろう?)
武智の疑問ももっともである。
そこには結婚式かパーティーか解らないが
それっぽいドレスを着た女性がいる。
不機嫌なのかあまりいい表情はしていないが顔立ちは良い。
スタイルも腰つきや胸元の開きから推測するまでなく一見して良い。
「他の写真がいま手元にないからそれを基準で探してくれ」
「誰を…椿先生ですか?」
「それ以外にないだろう」
「ですよね。待ち合わせ場所と携帯の番号は?」
武智は懐からメモ帳を取り出した。
「待ち合わせ場所はくらげ。携帯は無い」
「そうですか。で、待ち合わせ時間は何時頃で?」
「もうそこに居るから拾ってきてくれ」
「え?もう居るんですか?」
「あぁここに来るつもりだったが案の定、道に迷ったらしい」
やれやれという感じで苦笑いをする編集長に武智も苦笑いする。
(解ってたのに先に手を打つ気もないと云う事は椿舞先生とは仲が良いようだ)
武智は懐にメモ帳を戻した。
「そうですか。じゃあ、行ってきます」
「よろしく頼むな」
出て行く武智に編集長は片手を上げて答えた。

武智が出てから編集長は机の端に残された物に気付いた。
「ん?あいつ写真忘れてるじゃないか」
携帯電話を取り出し、かけようと思ったが途中で止めた。
綺麗な指先でその写真を摘み、椅子の向きを180度回転させた。
背もたれに体重をかけて、ローライズのパンツで包まれた長い脚を組んで
写真を掲げる様に見る。
「しかし、この写真は我ながらよく出来てるな」
写真の中の人と違い、編集長は機嫌の良い笑みを浮かべた。
武智はくらげに着いた。
”くらげ”
お椀を逆さにしたような形から誰が言ったかそんな愛称のある
駅前南口に噴水の事である。
「さて、どこだろう?」
平日の昼前なのだが有名な待ち合わせ場所であるのでそこそこの人数の女性が確認できる。
御婦人と呼べそうな年齢の方々は違う、
時計を確認している若い女性は雰囲気が違う、
なんとなく雰囲気は似ていても年齢が若過ぎて違う、
武智は選別したら該当者が無しになってしまった。
(何処かへ行かれてしまったのだろうか?)
とにかくもう一度確認してからと懐に手を入れるが目当ての物が見つからない。
「あ、しまった。写真忘れた」
取りに行くとなるとまたそれはそれで時間がかかる。
武智は記憶を辿ってみた。
(編集長に似たクールな顔立ちだった…)
(あ、どこか幼い感じもしたから若いはずだよな…)
(でもキャリアは10年はあったような…)
「と、なると…外観だけではさっきと同じか」

「椿舞先生はいらっしゃいますか〜?」
周囲の視線が武智に集まる。
一人一人聞いても良かったがその都度不信がられるぐらいなら
と考えた武智は噴水の縁に立ち、周囲に聞こえるぐらいの声を出してみた。
衆目を得られたが名乗り出る人は見渡してもいない。
恥ずかしがって出てこないか本当に居ないのか。
すると脚をつつかれる感触。
足下を見ると一人の少女が武智を見上げている。
さっきからいた雰囲気の似ていた少女だと気付く。
「あ、うるさかったかい?ごめんね。おにぃさんは人を探してるんだ」
武智は縁から降りた。
「しかし先生は何処行ったんだろう?」
周囲を確認するがやはり嘲笑以外の反応無し。
「これこれ、若い編集部員君。何処を見ている?」
「ん?椿先生?!」
声に反応して武智は周囲を確認する。しかしその姿は見えない。
「おかしいなぁ、先生だと思ったんだけどなぁ」
「おかしいな、こんなに近くに居るのに何故気付かぬ?」
「何処?何処です、椿先生?」
「ここだ」
その声と共に武智の脛に一撃食らわされる。
「ぐっ!!」
思わず痛みにしゃがみ、脛を抑える。
「やっと気付いたな」
「気付いた…?…ま、まさか?!」
「あぁそのまさかのお探しの先生だよ、編集部員君」
腕を組みながらあの少女が言った。
幼さの残る顔立ち。
可愛いというより将来綺麗になるだろうなぁ、といった感じ。
そして
不機嫌なのかあまりいい表情はしていないがあの良い顔立ちがそこにはあった。

これが武智公保と椿舞の出会いの話である。







解説 某シリーズの関連作。
そろそろ主流を出したいので書いてみたら、あれが設定の都合上ストップしたので代作。
駅前イメージはJR広島駅。
くらげは本当にある。

このシリーズの仮タイトルは 「ちんまい」