10月の末の寒い夜、雪子の息子の大介が、ひっそりと富良野を去っていった。同じ夜、螢の勤める病院にみずえが急患で運ばれてきた。医者が螢に癌が肝臓までまわっていると話してきた。待合室で中畑和夫は、螢にすみえ達の新居を急がせていると話した。ある日の夜、新吉は五郎に遺言を書くように勧め、山下という元先生を紹介した。五郎は、遺言を書いて山下を訪ねた。山下は、五郎が造っている廃棄物の家を一緒に造りたいから弟子にしてくれるように頼んできた。
ある日、現場に結の義父トドが現れた。そうとは知らない五郎は、地元の人と勘違いし作業を手伝わせてしまった。トドは、五郎のやっていることに感銘を受けた。五郎は、その夜トドを自分の家に泊めた。トドは、五郎と酒を酌み交わしながら、それとなく五郎に家族の事情を聞いた。
純が、朝目覚を覚ますと携帯が鳴った。出ると結からだったが義父に変わり、明日の朝海に出るから5時に迎えに行くと一方的に話して切れた。翌朝、純はトドに連れられ初めて冬の海に出た。トドは、純に五郎を羅臼に流氷を見せに呼ぶように言った。それから、純は富良野の五郎に手紙と片道の旅費を送った。
夜、五郎がすみえの新居で作業をしていると和夫が現れ、みずえが春までは持たないからすみえの結婚式を来週中にやろうと思うと言い、式には誰も呼ばずに行うと話した。五郎は、あと一週間で何とか形にするから家のことは自分たちに任せ、少しでもみずえについているようにと言った。天井でその話を聞いていたシンジュクも涙した。五郎は、この冬羅臼に行くと純に手紙を書いた。
突然、結の夫の弘が羅臼の酒場に現れた。翌朝、港で作業している結のもとに弘が姿を見せた。弘は、純と話をつけると結にいきがって見せた。結は純に電話を入れ、弘に気を付けるように伝えた。仕事を終えて番屋へ戻ると弘達が中から出てきた。純は、無抵抗に4人にボコボコに痛めつけられた。そこへ、弘の父トドが現れた。弘は、トドに殴られ黙ってその場から立ち去った。トドは、純にもっと戦うように言って帰っていった。夜、結が番屋にやってきた。純は結と二人で弘の元へ話をつけに車を走らせた。純は、弘に結との結婚を許してほしいと土下座して頼んだ。結は、純の後ろで鉄砲の銃口を弘に向けて黙って立っていた。
翌朝、番屋の前から海鳴りの音が消えていた。そして羅臼に流氷が来た。流氷が翌日から港を覆い、羅臼の海は一変した。二月のしばれる夕方、五郎が羅臼にやってきた。その晩、久しぶりに親子みずいらずの夕食をした。純は、結のことを五郎に話をした。五郎は、結が人妻だと聞き、反対した。純は、1時間かけて五郎に事情を説明した。五郎はやっと理解したが、目に涙をため、黙っていた。
翌朝、五郎が番屋の外へ出ると、結が番屋に向かって走ってきた。五郎は、慌てて番屋に入った。結は、トドが昨日から五郎に食べさせるトドを打ちに出かけたきり帰ってこないと話した。仲間達は、遭難した船の目印に流木で迎え火を焚きだした。夜の8時頃、ニュースを聞いた凉子先生がやってきた。純は、五郎が来ていることを話し、先生を番屋へ連れて行き、五郎の相手を頼みで迎え火の場所へ戻った。弘が一人迎え火の番をしていた。弘は、結を譲ると言って純に酒をついだ。
翌朝、ふと目が覚めると港一杯に流氷が入っていた。純が迎え火の番をしていると心配して五郎が駆けつけてきた。結つくったブタ汁を食べていた弘が突然器を落とし、沖を見つめた。トドとジイヤンが流氷の上を歩いて戻ってきた。そして、二人は漁船に乗り込み港へと帰ってきた。その夜は、高村の家で祝いの席がもうけられた。カラオケバーでみんなが盛り上がっているとき、純の携帯が鳴った。それは、みずえが死んだとの連絡だった。純は、二年ぶりに富良野に戻った。麓郷は、全く変わっていなかったが、また一人世話になった人が居なくなってしまったと思った。中畑の家では葬儀の準備の真っ最中だった。純は、話したいことがあるから今晩泊めてもらえないかと螢に頼んだ。五郎は、山下から五郎の遺言の文章には死という実感が欠けていると話した。夜、雪子の家で純が話していると五郎が中畑和夫を捜しに入ってきた。外へ出ると、和夫はすみえたちの新居で一人泣いていた。
その日、純は螢のアパートに泊まった。純は、結婚して身を固め、富良野に戻ってくる決心をしたことを螢に話した。五郎は、山下から言われた自分の死んだ後の世界を想像して遺言を書いてみなさいと言われたことを考えながら筆を進めていた。翌朝、純は牧場の跡地へ行った。その後、草太の墓に寄り、墓前でたばこに火を付けて雪に差した。その足で、三沢のじいさんの家を訪ねた。じいさんは、ベッドに横たわったまま純を迎え入れた。じいさんは、自分のことで純が富良野に戻って来られないのではないかと病んでいたと言った。純は、三沢のじいさんの家から帰る途中、町で結の姿を見つけ、その後をゆっくり車を走らせた。結は、町をいろいろ歩き、最後に神社へ寄た。
螢が、快を連れてアパートへ戻ると正吉から手紙が届いていた。螢は、快を連れて五郎のもとに車をとばした。その夜は、久しぶりの家族の団らんだった。夜中に純が目を覚ますと螢が立っていた。螢は、正吉の元に行きたいと五郎に話し出した。翌朝、羅臼のトドからたくさんの海産物が届けられた。3月25日、螢と快が富良野を発った。それから、純と結と五郎の三人で石の家で暮らし始めた。純は、五郎の仕事を手伝いながら三沢のじいさんの家に毎日通っている。五郎は、今年もまた炭を焼いている。 |
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