第7話

 12月も半ばを過ぎ、純も蛍も雪はねの毎日であった。雪子が東京へ帰ってからは、五郎が山仕事に行っている間、中畑和夫の家に世話になっていた。純は、そこにある電話が気になりだしていた。ある日、中畑の家で一人になったとき、東京の令子のところへ電話をかけ、令子の声を聞くが、何もしゃべらずに切ってしまった。

 山仕事が終わり、中畑木材の広間で慰労会が行われた。純は密かに部屋を出て、事務所の電話で東京の令子へ電話をかけ、次は蛍にも話をさせようと考えた。クリスマスの準備で中畑家にいるとき、純は蛍と二人っきりになった時を見計らって、令子のところへ電話をかけ、蛍を電話口に出すが蛍は令子の声を聞くと切ってしまう。そのときから、蛍は口をあまり聞かなくなった。終業式の日、五郎は凉子先生から蛍が学校から東京の令子のところへ電話をかけていたことを知らされ驚く。

 その夜、純と蛍はクリスマスを中畑の家で過ごそうとするが、中畑のおじさんは、純と蛍に家に帰るように言う。純は不満だったが、クリスマスは各自が家でやるものだと言われ、しぶしぶ車で家まで送ってもらう。車を降りた純に、中畑のおじさんが純の日頃の態度について叱責する。家にはいると五郎はおらず、壁に靴下を履いた二組のスキーが立て掛けてあった。それは、五郎からのクリスマスプレゼントだった。

 その晩、ストーブの側で三人枕を並べて寝るが、突然蛍が学校から令子へ電話したことを五郎に告白したので、純は驚く。自分も言おうと思ったが言うタイミングを逸してしまう。純は、その夜夢を見た。それは、賛美歌の行列が森の中から現れ、先頭には五郎と令子と蛍がおり、必死に叫んでも気がつかず、森の中へ消えていってしまう夢だった。純の寝顔には、一筋の涙が流れていた。

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