いままでのあれやこれや
*
父の思い*


颯太が生まれた日、私は会社に出ていました。
ちょうど得意先廻りをしていた時、私の父親からポケベルで連絡をうけました。仕事が終わって、病院に駆け付けたのが午後7時近くだったと思います。初めてわが子を見た時、なんて小さいんだろう。そして本当に自分が父親になったんだとあらためて思いました。

颯太という名前、なかなかいいと思いませんか。
私は「風」が好きです。ときにはやさしく、ときには激しく、雲を流したり、種子をはこんだり・・。
この子には自分の人生を颯爽と歩んでほしい。
風をきって進んでほしい。
颯太という名前にはこんな願いが込められています。

颯太が普通とはちょっと違うことに気付いたのは、もちろん妻です。
親の方を振り向きもせず、どんどん歩いていってしまう。言葉だってまだ片言しか出てこない。数字に異常に興味を持つ。手のひらをなんだかひらひらさせている。テーブルを横から眺めている。もうへんな事だらけ。
もちろん他の子供とは遊びません。

ちょっと、いや、ずいぶん変わっている子供。
当然のことながら、1才児検診にひっかかりました。ここからはお決まりの療育、コロニー、精神科クリニック通いと進んで行きました。

こんなのはこの子の個性だよ。
私はずっとそう思ってました。

療育から、目の行き届く保育園にしてください、と進められました。それで送迎バスの来る幼稚園を諦めて、保育園にしました。そして妻が毎日、自転車で送り迎えをすることになりました。

雨の日、雪の日、妻には本当にすまなく思っています。私は仕事の都合のいいときしか颯太を送りませんでした。ごめんなさい。
そして妻の両親も離れているのにもかかわらず、
天気の悪い日などわざわざ朝早く駆けつけていただきました。
本当にありがとうございました。感謝しています。
本当に頼り無いだんなです。

保育園での発表会。
颯太は他の子をチラチラ気にしながら、なんとか無事できました。
なんだ、できるじゃん。これが私の感想です。

しかし担当の保母さんからは小学校の普通は無理ではないか、と指摘されました。颯太は保育園でも3本の指に入る問題児でした。
それにこのころにはもうアスペルガーという診断が下りていました。

そんなに無理なんだろうか。そんなに小学校ってむずかしいんだろうか。
こんな子供って昔はよくいたよねえ。
私にはとても受け入れる事ができませんでした。

私の住んでいるマンションは、すぐ目の前に小学校があります。ここには特殊学級がありません。しかしそんなことはどうでもいい。私としては颯太を普通学級にいれてやりたい。そのほうが颯太にとっても刺激があってプラスではないか。そう思っていましたが、妻は違ってました。

とにかく落ち着いていない。とても1時間いすに座っていられない。
と妻は言います。それはたしかに本当の事でした。

小学校の方はどうだろう、ひょっとしたら受け入れてくれるかも・・。
そんな甘い期待がありました。

入学前に健康診断が小学校であります。私たちは面談のとき、それはもうすぐに別室に呼ばれました。校長室でした。

校長先生に会いました。
ジッとしていない颯太を見て、やんわり特殊を進められました。正直言って、私たちは厄介もの扱いでした。受け入れなんてとんでもない、そんな印象でした。そしてそのとき初めて特殊を強く意識しました。

学区の小学校が受け入れてもらえないのだったら、特殊しかない。それから特殊のある学校を2校見てまわりました。当然自動車で通う事になるので、通学に楽な小学校の校長先生に会いに行きました。
とてもやさしい、そしてしっかりとした感じの校長先生でした。いつでもいらっしゃい、と言っていただけました。
ここなら安心して颯太を預けられる、そう思いました。

それでも私の心は揺れてました。
だって目の前の小学校に行けないなんて。

教育委員会の人が就学の事で訪ねてみえました。普通学級でも特殊でもどちらでもいい、とのことでした。さんざん迷ったあげくに、特殊に行かせる事にしました。どうしても学区の小学校のいやなイメージが離れなかったせいもあります。

いまでも特殊に行かせてよかったのかどうか私には分かりません。
妻はこれが一番颯太のためにはよかったといっていますが・・。

今年、颯太は2年生になります。
春になって新しい1年生が6人、入ってきました。

その〜、いまさらという気もしますが、私には子供を普通と特殊に分ける事がいいのかどうか、どうしてもわかりません。なぜ1つのクラスにいろんな子供がいてはいけないのでしょうか。
そんなに邪魔なのでしょうか。迷惑なのでしょうか。

特殊に行けば、個別の指導が本当になされるのなら分かります。
しかしそうでもなさそうです。私の思い違いならお許し下さい。しかし先生ですら初めて特殊を受け持つ方もみえます。私はてっきりその道の勉強をされた方ばかりが担当されると思っていましたから、このことはもう純粋に驚きでした。

最近になって一冊の本を読みました。障害児学級を担任されている先生の書かれた本です。先生方の大変な苦労をそのとき初めて思い知りました。
T小学校の先生方、颯太のこと、なにとぞよろしくお願い致します。
実の親でさえ疲れてしまう息子です。さぞかし大変なことと思います。

私は教育に携わっている一人ひとりの方々を信頼したいとおもいます。
そして颯太を見守っていきたいと思います。

うちの颯太には変てこな病名がついています。
普通の人なら一生知らずに過ごしてしまう病名です。
しかし颯太は颯太です。

ただこれは時々思う事ですが、本当はこれは障害でもなんでもなくて、この子の個性ではないかということです。見ず知らずの人にでも進んで話しかけていけるって素敵な才能だとは思いませんか。
この才能が受け取る相手に気持ちよく伝わるようにすることができるように願っています。

(1999.5.5 子供の日)