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ウイーンの小児科医ハンス・アスペルガーが、男の子に圧倒的に多く起きた、ある一貫した能力と行動のパターンを見つけだしたのは、今から50年以上も前の事です。その中には共感性に欠ける、交友関係を作る能力が乏しい、一方通行の会話、特定の関心事に我を忘れる、動作がぎこちないなどが含まれていました。

ただ、この業績は1990年代になるまで国際的な認知を受けられませんでした。
アスペルガー症候群に関する関心がしだいに盛り上がりを見せてきたのは、この十年来の事です。そして今では、ほぼすべての学校に、この新たな症候群の子供たちはいると見られています。

アスペルガー症候群は、高機能自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と関係が深い発達障害ですが、一方ではノーベル賞受賞者を含めて人類への大きな文化的貢献を遂げた人々にも、この症候群の方が含まれているのです。また日本で学習障害と診断されている子供達の何割かは、アスペルガー症候群の特性を併せもっています。


アスペルガー症候群は自閉症連続体のうちで能力の高い方に位置する障害(高機能広汎性発達障害)の一つと考えられています。一般に自閉症というと、自分の殻に閉じこもっている暗いイメージがしますが、その中でもアスペルガー症候群、特にうちの颯太の場合は、他者に積極的に話しかけていく点でとても一般には自閉症であるとは思われません。

しかしその接し方が、まるで相手のことを考えていません。人と人とのコミュニケーションの仕方、基本的な社会的ルールの理解が大変難しいようです。繰り返し繰り返し注意してもなかなか理解してもらえません。

また環境が変わるとその対応もできにくいようです。大勢が集まっている体育館にいけば大声で「何してるー」と叫んだり、はじめて入る校長室ではソファーの上で飛び跳ねたり、寝たふりしたり、それはもう冷や汗ものです。他人の目を気にしない、というよりは逆に気を引こうとしてへんなことをします。

しかし、アスペルガー症候群の知的レベルは平均あるいは優秀であり、単純記憶には優れているということです。(うちの颯太の場合はちょっと遅れているようですが・・)だからなおさら一見「普通」に見られてしまいます。「親の躾けがなっていない」といわれてしまいます。

アスペルガー症候群自身の認知も低いようです。保健所や児童相談所、専門であるはずの精神科のクリニックでさえ分からなかったりします。(まだ小さかったから判断しづらかったのでしょうか・・)どこにいってもアスペルガーという言葉は一度も聞かれませんでした。あるコロニーでは全く普通だといわれてしまいました。

さんざん駆けずり回り、書籍を探しもとめ、分からぬまま何年かたってしまいました。そして別の専門医にかかって、ようやくこのアスペルガー症候群に辿り着きました。

私達はこの診断が下りた事でホッとしました。やっと今たたかっている相手が分かったからです。

ある論文の中でファン・クレフェルン氏の言葉が紹介されていました。
『低機能自閉症児は「自分だけの世界に生きている」が、高機能自閉症児は「われわれの世界に生きている。ただし自分流に」』。

自分流だけでは生きていけないのが現実の社会です。なんとか社会と折り合いを付けてやっていけれるようになってほしい。これが最大の望みです。


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